Vol.04-3 ピアノの誌上レクチャー(1)武内 順一さん
調律師・松尾楽器商会店長 武内順一さん |
そもそも音はどうして鳴るの?
ピアノの中を見る前に、音はどうして鳴るのか、簡単な実験をしてみましょう。
ワイングラスに水を入れ縁を指でこすって音を出す「グラスハーモニカ」または「グラスハープ」をご存じですか?モーツァルトも作品をつくったという楽器ですが、こうやって音を鳴らすと、水の表面にさざ波が立つのが見えますね。これが物の振動の音を耳で聴き、目で見ることの出来る簡単な実験の一つです。
ではピアノでは、どこが振動して音が鳴るのでしょうか?
ごく簡単にいってしまうと、ピアノのすべての部分は「鳴るもの」と「鳴らすもの」に分けられます。「鳴らすもの」とは鍵盤やその先にあるハンマーなどのアクション関係で実際に演奏する部分、「鳴るもの」とは、弦や響板、いってみればその他の全てになります。
弦の振動が響板に伝わりピアノの音になりますが、もちろん、ピアノ本体の外側も蓋も全て一体となっているのでそれぞれ振動して音が鳴ります。脚だって振動して鳴るし、キャスターをとおして床にも振動は伝わります。コンサート・ホールの床も響いているんですよ。皆さんのご自宅のピアノでも、床やキャスターに敷くインシュレーター(丸台)の材料が変われば、音色も変わってきます。
振動をよく伝えるものとして「木」が挙げられます。楽器が木で作られることが多いのはそのためです。ヴァイオリンなどは木製ですし、ピアノもほとんどの部分は木で作られているんですよ。なかでも特に音の伝播速度に優れているのがスプルース(松材の一種)で、ピアノの場合響板材にはほとんどスプルースが使われます。
では、ここにあるピアノを使って「鳴るもの」と「鳴らすもの」をもう少し詳しく見てみましょう。
鳴るもの | |||
弦
最初に鳴るのがこの弦だ。始めにこの弦が鳴って、各部に伝わり拡がっていく。弦は、低音部の胴巻線と中、高音部の鋼鉄弦とがあり、高音にいくほど細く、短くなっている。 |
棚板
演奏者が弾く鍵盤アクションの土台が棚板。鍵盤アクション~Keyアクションが載る場所なので、キーベッドともいう。
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響板
音の伝播速度の速い、スプルースの柾目板を貼り合わせて大きな1枚板にしている。響板は文字通り響く板。弦の振動を増幅して大きな音で鳴らし、ピアノの音になる。
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側板
大きく曲線を描く側板。出来上がったピアノはどのピアノの同じように見えるが、メーカーによって方法が違う。使用する木もカエデやマホガニー、ウオールナットや松など様々だ。
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色々なもので音を作ってみよう!
このように振動することで音が鳴る、ということがわかったら、身近にある物で簡単な楽器を作ることもできます。楽器とまではいかなくても、小さいお子さんでもできる工作で、振動を体験する、振動を見る、という簡単な実験ならできるでしょう。音に対する興味がわいてきて、ピアノの魅力を改めて感じられるかもしれません。 |
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調律師による「ピアノと音の理科教室」 ~音の実験を通してピアノの構造を知ろう!~
案内役:武内順一
会場:東京・北とぴあつつじホール 第2研修室(7階)
日時:8月8日(水)14:15~/17:30~18:00/8月9日(木)12:30~13:00/16:00~16:30
Vol.4 INDEX
2007年6月30日発行 |
<天才>を育てた母親の4つの理念 一緒に練習することが楽しくなるように、子どもに話をしてあげる 五嶋 節さん |
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ピアノの誌上レクチャー(1) ピアノはどこで音が鳴っている? 武内 順一さん |
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