Vol.04-2 教育の未来を考える(2)小正 和彦先生
| |
⇒学校外からの視点を持って学校運営を進めることがいちばんの効果 ⇒様々なフィールドの専門家との出会いが、子どもたちの夢や将来の進路を広げる ⇒「放課後」「休日」の環境整備で子どもと社会との接点をデザイン |
横浜市立つつじが丘小学校長。1962年生まれ。44歳。教育関連会社取締役、国際交流関連NPO理事長を経て、2005年4月横浜市立小学校で初めての民間人校長としてつつじが丘小学校(青葉区)に着任。子どもを中心にした学校教育、放課後、休日を通した学び環境のグランドデザインに取り組んでいる。休日は家族(妻、娘)との時間を大切にしています。以前は良く家族でキャンプに行っていたが、最近はちょっとご無沙汰してます。小学校6年生の娘がいつまで一緒に遊ぶか、それが最近の一番の関心事、とのこと。
|
今回は、校長自らが民間出身であり、地域に開かれた学校教育づくりに積極的な、つつじが丘小学校の小正和彦校長にお話を伺った。
学校外からの視点を持って学校運営を進めることがいちばんの効果
─ 小正先生は、民間出身の校長先生と伺いました。横浜市立の小学校では初、全国的にもまだ100人あまりしかいらっしゃらないそうですね。校長職は、いかがですか?
小正:「民間人といっても、これまでの20年間はずっと教育関連業界で、海外駐在員 子弟(いわゆる海外生・帰国生)への教育サービスに携わってきましたから、校長職に就いても、子どもや保護者との関係はわりとスムーズにできました。また、海外の高校生の日本理解、日本語理解支援や日本の青少年との交流支援のためのNPO活動も行ってきましたので、こういったこれまでのチャンネルを学校経営にもフルに活用しています。」
─ 先ほども廊下で、「あ~、校長先生だ~!!」と、子どもたちが小正先生を囲んでとても嬉しそうにしている姿が印象的でした。
小正:学校経営を進める上での一番のポイントは、教職員との信頼関係だと思いますが、子どもや保護者からの評価、支持を得られたことが大きな説得力になったように思います。
─ 様々なジャンルからの民間出身者が、それぞれの経験や技術をもって学校教育に関わることは、学校教育もいろいろ多様化していきそうですね。
小正:「開かれた学校作り」は多くの学校現場で取り組みが進められて来ていますが、これは単に、"施設の開放"や"外部との人的交流"といった物理的な面だけではなく、学校業務や組織のあり方、考え方まで含んだ取り組みにならなくては意味がありません。 その点で、これまでの民間でのフィールドや経験等から、学校外からの視点を持って学校経営を進められることが、いちばんの効果だと思います。
様々なフィールドの専門家との出会いが、子どもたちの夢や将来の進路を広げる
クラスコンサート
|
─ 午前中の音楽の授業では、ピティナで地元の若手演奏家を派遣させていただき、ピアノとチェロによるクラスコンサートを5年生の全3クラス実施いたしました。これも、「開かれた学校作り」の一環ですね。
小正:はい、今回のクラスコンサートは、「音楽」の素晴らしさを体験させていただいたことはもちろんのこと、同時に、「演奏家」「楽器」「人を気持ちよくさせる仕事」等々、多くの出会いがあったのではないでしょうか。
自分の夢や将来の進路等について、具体的な職業でなくても、世の中にはいろいろな仕事があって、自分の将来もいろいろな選択肢があり、楽しみに思える、そんなポジティブに捉えていられる子どもたちでいて欲しい。それが、毎日の学習や生活のモチベーションになると思うのです。そのためにも、「文化体験」に限らず、様々なフィールドの専門性を持った大人との出会い、関わりは、子どもたちにとって大変貴重な機会だと思います。
様々なフィールドの専門家との出会いが、子どもたちの夢や将来の進路を広げる
放課後プラン
|
─ "地域の教育力"を再生しようと、地域住民の大人の協力を集め、放課後や週末に、子どもたちが様々な体験活動、交流活動ができる居場所づくりが、全国の小学校で展開されつつあると伺いました。
小正:はい。本校では、「放課後キッズクラブ」(横浜市の委託事業)が設置されており、教育支援協会というNPO法人がその運営にあたっています。また、土曜日には「土曜学校」(横浜市教育委員会の委託事業)を開設しており、同協会が運営にあたっています。
NPO法人吉田博彦さん
放課後からの教育改革をめざし、NPO法人教育支援協会代表理事・吉田博彦さんは「文化を子どものものにするために、学校から発信できることはないか」とさまざまな活動を進めている。
|
子どもにとって多くのオプションが用意されている環境が望ましいと考えています。それが、それぞれの子どもにとって、興味関心の場、居場所、いろいろな大人との関わりの場となり、子どもと社会との接点となると思います。共通部分である「学校教育」に、「放課後」、「休日」のオプション部分としてのプログラムを合わせて、子どもたちの環境をトータルで捉え、整えることができればと思っています。当然、地域性もあり、全てをここで担うということではなく、民間の教育機関、スポーツ施設や音楽教室、クラブ・サークル等もオプションのひとつとして位置づけて、全体をデザインしていくことだと考えますし、これらの連携によって、全体のデザインが機能しつつあり、今後が大変楽しみです。
─ ありがとうございました。
Vol.4 INDEX
2007年6月30日発行 |
<天才>を育てた母親の4つの理念 一緒に練習することが楽しくなるように、子どもに話をしてあげる 五嶋 節さん |
教育の未来を考える(2) 専門家との出会いが子どもたちの夢や進路を拡げる 小正 和彦先生 |
|
ピアノの誌上レクチャー(1) ピアノはどこで音が鳴っている? 武内 順一さん |
|
音楽の仕事風景(1) 東京音楽大学(事務助手)加藤 千晶さん フィリアホール(企画制作)保科 隆之さん |
|
「私のちいさなピアニスト」映画評論 寺脇 研さん |
|
ピアノ教養クイズ(2) 「名画と同時代の音楽様式」編 |