ピアノステージ

Vol.01-4 ステージが育てる不思議な力(1)江崎 光世先生

2006/07/31
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ステージは親も一緒に成長する場

 私は生徒さんたちに、「自分の姿を鏡に映してきなさいね」といって、コンペティションやステップのステージに送り出します。たくさんの子どもたちと共有するステージは、みんなの中でご自分の子どもがどう映るのか、第三者的に見ることができる絶好の機会だからです。演奏前の緊張の場面でみんなはどういう表情をされるのか、うまく弾けたとき、弾けなかったとき、どんな反応で親の元に帰っていくのか・・・。
 そしてステージは、親自身も、いろいろな人の演奏を通して、一生懸命に親子で取り組んできた曲を聞き分ける能力が育つチャンスでもあります。聴く耳が成長すると、『いつもり良く弾けたかどうか』だけではなく、去年とくらべてこんなに演奏が違うんだ、と子どもの成長を実感することもできれば、他人の演奏から、こんなふうに弾けるんだ、とか、どういう演奏が気持ちのいい演奏なのか、と学ぶこともあるでしょう。早く伸びる人、遅く伸びる人がいることを悟るかもしれません。  親の子どもを見る<視野>が広がり音楽を聴く<耳>が育つことで、ピアノを学ぶ子どもの理解がより深まり,共感の幅も広がります。ステージは親も一緒に成長する場です。子どもを育てようと思う気持ちとともに、自分も育とうという気持ちをもって、『ステージ』と関わっていただけたら・・・と願います。


親の感動こそが最高の言葉掛け

 ステージから戻ってきた子どもたちに、まずどんな言葉掛けをしていますか?
 親の最初の言葉ひとつで、子どもたちを前向きにさせるか後退させるか、決まってしまいます。特に小学校までは、先生よりも親のひと言が強い影響を与えるものです。
 よいところを見つけるために、よくよくステージでの姿を観察し、注意深く聴いてあげてください。改善したいところは、落ち着いたところで、ゆっくりと。それほどお母様のひと言を、子どもたちは楽しみにしているのです。
 「今日は娘がいちばん輝いて見えました」というお母様がいました。こういう感動は、子どもたちにもきっと伝わるものです。今日の演奏はよかったよ、という評価よりも、お母様の心からの喜びは、子どもたちがいちばん望んでいる反応かもしれません。親が感動しないと、子どもは感動しないのです。
 子どもたち一人一人、何か光るものをもっている宝石です。自分の子どもはどんな宝石なのか、これをどう磨いたら光りだすのか、よく考えて言葉掛けをしていただけばと思います。
 お父様お母様方が、子どもたちに叱咤激励し見守ってきた練習の日々。ステージは、お父様お母様方の作品として映し出す鏡であるのです。その支えなしには、このステージは、
ないのですから。この積み重ねこそが子供たちの心の糧となり、ひいては未来に向って力強く歩み続けていかれる財産にもなるのです。


江崎光世先生
江崎光世先生 えさき みつよ

国立音楽大学卒業。社団法人全日本ピアノ指導者協会理事、ピティナ・ピアノコンペティション課題曲選定委員長。1996年最多指導者賞、1999年トヨタ指導者賞・トヨタ指導者特別賞を受賞。また、ピアノデュオ・室内楽・コンチェルトなどアンサンブル指導の普及にも取り組む。横浜アンサンブルアソシエステーション代表。

Vol.1 INDEX


2006年7月31日発行
Stage+人(すてーじん)(1)
クラシックとポップス
コツをつかんで、表現力倍増!!
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ピアノのある生活(1)
『相手に思いを伝えること』
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<ピアノが好きな子>を育てる3つの秘訣
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ステージが育てる不思議な力(1)
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