ピアノステージ

Vol.01-2 ピアノのある生活(1)金子 一朗さん

2006/07/31
ピアノのある生活(1)
金子一朗さん
(早稲田大学中学高等学校・数学教諭)

 金子一朗さんは、早稲田大学中学高等学校の数学の先生。学校ではピアノを弾いていることを公言していないが、2005年のピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞し、全国的にその名前を知られるようになった。生徒からも評判の<面倒見がいい>金子先生に『時間』と『人生』について語っていただいた。



 今も朝晩の通勤時間は読譜にあて、週末はピアノのために時間を割いていますが、グランプリ受賞以降は演奏の機会が多く、こなす作品数が去年よりも増えているので、とにかく練習しなきゃならない。なのに、教員の仕事もますます忙しくなってきて時間がない。限られた時間の中でどうやりくりするか、必要に迫られています。
 ところが不思議なことに、作品習得までの時間は短縮できているんですよ。 昔に比べて、効率的にピアノ作品の構造を理解できるようになってきたので、ピアノのある生活1 丸暗記法ではなく頭に入ってくるんです。仕事で必要な新しいソフトを覚えるのには時間がかかるのに(笑)。僕は今43歳ですが、肉体的な衰えとは違って、ピアノはこの年齢でも上達・向上の余地があると感じています。  ただ《音楽の質を高める》作業には時間がかかります。プロのピアニストでも何十年も曲を寝かせると聞くし、時間がかかって当たり前なんですね。僕はワインが好きなので、熟成させたワインのような魅力ある音楽作りを目指したです。



第29回のピティナ・ピアノコンペティションで日本フィル賞を受賞。4月23日のサンデー・コンサートでラヴェル「ピアノ協奏曲」を日本フィルハーモニー交響楽団と共演喝采を浴びた。

 今の仕事は楽しいし,やりがいがあります。授業することは、ピアノを演奏することと似ているんですよ。「相手に自分の思いを伝えたい」という気持ちは同じですし、違うのは<使うアイテム>と<お客さんの前でやるか生徒の前でやるか>だけです。生活上は、ピアノと仕事の区別はあまりありません。
 よく「受験のためにピアノをやめるという話を聞きますが、本当にもったいない!人間の能力は『1+1=2』ではないから、例えば数学を勉強することで物理学の能力もあがる、国語を勉強するうちに社会科の学力があがる、というふうに相互作用があるものなんです。今教えている生徒を見てもそう思いますね。幅広く勉強することで、能力が中途半端になるという考えは大間違い。受験勉強もピアノも大切ならば両方やったほうがいいです。
 僕が教えている生徒の中に、すごい数学の才能のある子がいるんです。数学もピアノも、才能のある子は若いうちから非常に高いレベルまで到達できるものなんですね。そんな若い才能と交流すると、独特の視点や考え方に刺激を受けます。


Vol.1 INDEX


2006年7月31日発行
Stage+人(すてーじん)(1)
クラシックとポップス
コツをつかんで、表現力倍増!!
小原 孝さん
ピアノのある生活(1)
『相手に思いを伝えること』
それがピアノと授業の共通点
金子 一朗さん
<ピアノが好きな子>を育てる3つの秘訣
今日は、どんなやり方で練習する?
角野 美智子先生
ステージが育てる不思議な力(1)
ステージは子供を写し出す鏡なのです
江崎 光世先生
Enjoy Stage!!
弓削田優子先生&祐貴くん親子
根津昭義先生&栄子先生夫妻
ステージえとえとら
学校コンサート/丸ビルコンサート
目指せ、ステージの達人(1)
ピアノを弾くまでの自然な動きとは?
林 苑子さん

ピティナ編集部
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