ピアノステージ

Vol.07-3 フランスのバロック音楽~クラヴサン曲

2008/06/30
ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)
ジャン=フィリップ・ラモー
(1683-1764)
フランソワ・クープラン(1668-1773)
フランソワ・クープラン
(1685-1757)
ルイ=クロード・ダカン(1694-1772)
ルイ=クロード・ダカン
(1694-1772)

 フランスのバロック音楽は、宮廷音楽の環境から、ロココ調の性格を持ち、和声法に支えられた旋律と伴奏による古典派のスタイルに近いともいえます。
 当時は、作曲家自信が演奏することが多く、現代のジャズプレイヤーがアドリブを入れるように、今日はここに飾りを入れようかな、と即興を楽しむこともあったでしょう。
 チェンバロは鍵盤が浅くて軽く、現代ピアノの半分くらいの力で音が出ます。弦をはじくので、すぐに音は消えていきますから、長いトリルで音を続け、大切な音には装飾をつけたのでしょう。飾りの音では皆さん苦労なさるでしょうが、指先の軽い動きと離鍵の速さを工夫して、主旋律を生かすように入れてください。
 さまざまな装飾の基本は、はじめの音を他声部頭とそろえることです。記譜上、小さい音符が大きい音符の横に付きますが、はじめの音で拍をとります。軽くコツンと当てて、長い音で脱力するとずれても弾けます。トリルでは、書かれた音の一音上の音から他声部の頭に合わせて弾きます。長いトリルもあります。書かれた音を他声部の拍に合わせて、一音下の音を付けてすばやく弾きます。
 初心者にとって、装飾のルールは難しいので、奏音符付きの楽譜を使って慣れていくことをお勧めします。慣れてくると、服に付いたレースや刺繍やビーズのように、装飾の表情を楽しむことができます。バロックの魅力のひとつですね。
 フランスの宮廷作曲家によるクラヴサン曲の多くは、情景をありありと呼び覚ますような「標題」のついた音楽が特徴です。代表的なレパートリーである、ラモーの「タンブーラン」クープランの「恋のうぐいす」ダカンの「かっこう」を見ていきましょう。

ラモー ラモー/タンブーラン
~クラヴサン曲集より

(出版:Musikverlag Doblinger 出典楽譜:Meister Melodies15)
タンブーランは、胴長の太鼓と想像してください。たたくと皮の近くに張った弦がビヨヨーンと鳴る感じです。(民族楽器で、オペラにも登場しました)下声部のミが繰り返し響く中、2拍子の踊りのリズムやヴァイオリンのメロディーがきこえてきます。
タンブーラン 3回のテーマ(譜例A/B/C)に続くエピソードは次第に長くなり、自由な変動で終ります。踊り&メロディーの奏法を変えるとよいでしょう。
ラモーは、パリのノートルダム大聖堂のオルガニスト。彼の著書「和声法」は、古典派機能和声の礎になりました。
A 1~5小節
A 1~5小節
B 29~33小節
B 29~33小節 C 59~62小節
C 59~62小節
クープラン F.クープラン/恋のうぐいす
~クラヴサン曲集より

(出版:音楽の友社 出典楽譜:クラヴサン曲集(安川加壽子編))
ゆったりと感情をこめて、でもテンポ感をもって。優雅なフランス曲の雰囲気が求められます。(譜例A)1拍と3拍に装飾音。両手の頭を合わせ2小節フレーズの流れを作ります。弱拍でもたれないように。(譜例B)ヨーロッパの5月、ナイチンゲールのルルルルリールリル・・と歌う恋の歌は、ソプラノ歌手のよう。ここのファミファミ・・の繰り返しは、はじめは静かに、次第に興奮するように大きく細かく。最後はトリルのようにつながるところは、小鳥の鳴き声にそっくりで、春の喜びを表現しています。
クープランは、25歳からヴェルサイユ宮殿でルイ14世に仕え、230曲の小品を発表。著書「クラヴサン奏法論」はJ.S.バッハにも大きな影響を与えました。
A 1~8小節
A 1~8小節
B 18~22小節
B 18~22小節
ダカン ダカン/かっこう
~クラヴサン曲集第一巻より
(出版:Musikverlag Doblinger 出典楽譜:Meister Melodies15)
右手の16分音符の動きの中に、左手の「かっこう」の音型が聞こえてくるテーマ。ホ短調(譜例A)→ト長調(譜例B)→左右逆転(譜例C)→音型逆転→ロ短調で繰り返されるロンド形式です。鍵盤が浅く軽かったクラヴサンとはちがい、ピアノで弾く場合は指先のコントロールが求められます。テンポが狂いやすいことに気をつけ、各部をつなぐメロディックなカデンツで転調を感じましょう。
※ダカンは、クープランやラモーに続くフランスの作曲家で、宮廷や大聖堂のオルガニストとして活躍。絵画的描写な作品を残しました。
A 1~4小節
A 1~4小節
B 32~36小節
B 32~36小節 C 66~69小節
C 66~69小節

Vol.7 INDEX


2008年6月30日発行
特集 現代ピアノで探るバロック音楽の世界
イタリアのバロック音楽~二部形式ソナタ
フランスのバロック音楽~クラヴサン曲
ドイツのバロック音楽~ポリフォニー
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ピティナ編集部
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