Vol.05-3 音楽の仕事風景(2)南部 靖之氏(パソナ社長)
2007/11/30
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私は大学を出る22、23歳の頃、家庭に入った主婦や就職難の女性に就職の道を作りたいという強い想いを持っていました。というのは私の就職活動も大変だったけれど、まわりを見たら私以上に大変な人がいた。それは女子大生。就職率が16パーセント。親のコネが無いとダメ。ところがその女子大生よりももっと大変な人がいた。それは難関突破して入った女性全員。男性は誰でも年月が経つと係長・課長に上がって行くのに、女性はいわゆる昇格昇給が無い。ところが、その女性社員よりももっと大変な人たちがいたんですね。いったん家庭に入った女性で再就職しようと思っている人たち。そこで、就職で一番大変な思いをしている人たちを支援したい、と思い切って自分で会社を興しました。
人生で一番大切なことは夢を持つことだと思うんです。音楽でも全く同じだと思いますが、まずは夢を持つところから始まるでしょう。内容はどんどん変わっても、大切なのは想い、情熱。言い換えれば、希望、人生の目標。これを持つか持たないかでは結果は全然違ってくると思います。 そしてもう一つ大切なことは、出会いではないでしょうか。私の秘書は音大卒業生でした。よくよくみるとパソナには音大卒の人がたくさんいる。そのなかに東京芸大出身の尺八の演奏者とお琴の演奏者がいて、あるときこの2人が海外からいらした私のお客様を、お琴と尺八の演奏で迎えてくれたんです。これは誰にもできない最大のもてなし。それを新入社員に近い若いひとたちがやってくれた、素晴らしいでしょう。ほかにも去年入社した社員の1人は和太鼓ができます。いまはその社員を先生に私は和太鼓の練習を始めました。 こうして感じることは、音楽家の役割はたくさんある、活躍できる場面もあちこちにあるんじゃないかな、ということです。自分の経験からみても、ニューヨークにはブロードウェイなどのミュージカルがいっぱいあって音楽家の活躍の場が多いなと思う。その考えをもっと企業という場所に入れこんでいったら、音楽家の活躍の場がさらに広がるんじゃないかなと考えたんですね。 音楽家を目指す人たちはレッスンなど一つのことに打ち込んできた経験があるので、非常に芯が強く、諦めない気持ちを持っています。私の娘をみても、自分で企画して営業してチケットも売って、今度サントリーホールで西本智実さん指揮の日本フィルハーモニー交響楽団と演奏する。音楽家は創業者と同じではないかという気がするんですよ。音大生のこういう能力を経営者たちが分かってくれば、一般企業でも音大卒業生をどんどん採用してくれると思います。
現在、音楽業界では自分自身をプロデュースできる人材、つまり「ビジネス感覚」を持った演奏家が成功しています。そして、そうした二つの才能を持った人が社内にどれだけいるかによって会社の成長も決まると思っています。これまでは会社のために命を捧げるという企業精神が尊重されてきたけれども、これからは、もし聞き入れてくれなければ私は飛び出して音楽で生きる!というくらいの強い信念や自信がある人が必要とされるのではないか。ここで問題になるのは、音大生自身が、卒業後も音楽活動と並行して企業の中で自分を活かしていこうと決断するかどうかですね。 音大生の皆さんはぜひ、音楽以外に、もう一つのキャリアをもったインディペンデント・ミュージシャン(自立した音楽家)、ダブルキャリアを目指してほしいと私は考えます。ダブルキャリア、これがこれからの時代のキーワードかもしれません。
※この記事は、2007年10月13日倶楽部PASONA-表参道-にて行われたトークセッション『ビジネスと音楽「ダブルキャリア」のススメ』をもとにまとまました。
南部靖之
1952年兵庫県神戸市出身。1976年関西大学工学部卒業の1か月前に、「家庭の主婦の再就職を応援したい」と起業、人材派遣システムをスタートさせる。現在、株式会社パソナ代表取締役グループ代表兼社長。ピアノ好きの奥様、演奏家を目指す二人のお嬢さん、美術に進みながらもクラリネットを吹く息子さんという音楽ファミリーの影響で、4年前からタップダンス、昨年からは和太鼓に魅せられ、今では月に2回は音楽会に通う。
株式会社パソナ●職支援、アウトソーシングなど総合人材サービスを展開。2006年10月より、音楽活動に携わりながら企業でも働ける雇用機会の創造を目指した「ミュージックメイト」事業を開始。東京都千代田区大手町2-1-1 大手町野村ビル
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Vol.5 INDEX
2007年11月30日発行 |
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ピティナ編集部
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