Vol.05-2 Stage+人(4)田村 響さん
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何回も経験を積んでステージには慣れたでしょうと言われることもありますが、演奏会での緊張は、常に人生最大の緊張です。慣れた演奏というのは、練習どおりに演奏するような、既にでき上がっているものを"なぞる"だけの演奏になるのではないかと思います。出来たものを上げる様な先が見えて演奏していると、大体どのような演奏をするのか、予想がついてしまいます。 留学する直前、リサイタルや受験などいろいろなことが重なって、切羽詰まったというか、自分で消化しきれていなかった部分がありました。何をすれば良いのか自分でもわからなくなっていたんです。でもそれから数ヶ月経って、何かが見え、自分の中で意識が変わった時、同時に周りの反応も自分の満足感もすべてが変わってきたように感じました。ピアニストではクラウディオ・アラウが好きなんですが、アラウの演奏を聴くようになってから、考えが変わっていったのかもしれません。その時期が僕にとっての1つの壁だったと思います。そして今年に入ってからの大きな心の変化も、今になってみると、とても必要な経験だったと思っています。想像するのではなく心の底から何かの変化が起こった時、違う世界が見えてきて、そこで学び、意思次第で人として変われるものなのだと実感しました。
ピアノを弾いているとずっと座っているので、下半身が鈍くなりがちですよね。ふだんはジョギングをしたり、K1選手のダイジェストを見ながらトレーニングをして鍛えています。ピアノのためだけではなく、まずは男として(笑)。人生でも、人として生きて、そのことが延長線上でピアノに影響していくというようになればいいな、と思っています。ロン・ティボー国際コンクールで優勝した後、今はたくさんの人がワッと来るけれど流されないようにしようと、母と電話で話しました。母は、僕のために何かを祈っているというような、常に精神的な部分で応援してくれています。 田村 響 Hibiki Tamura
1986年愛知県安城市生まれ。3歳よりピアノを始め、愛知県立明和高等学校音楽科卒業後、現在ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学に在学中。これまでに、深谷直仁、清水皇樹、クラウディオ・ソアレス、クリストフ・リースケの各氏に師事。ピティナ・ピアノコンペティションC,E,G級金賞、2001年全日本学生音楽コンクール名古屋大会中学校の部第1位、2002年エトリンゲン青少年国際ピアノ・コンクールB部門第2位及びハイドン賞、第26回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、第18回園田高弘賞ピアノコンクール園田高弘賞第1位を受賞。2003年度<アリオン賞>受賞。第14回大幸財団丹羽奨励生。(財)江副育英会奨学生。2004年「田村響デビューアルバム」CDをリリース。 2006年第16回出光音楽賞受賞。 これまでに、ザルツブルク、ワルシャワ、ブラジル、オランダ、パリ、ロシアなど国内外で演奏、大阪シンフォニカー、日本フィル、東京交響楽団、名古屋フィル、関西フィル、アンサンブル金沢、神奈川フィル、大阪フィル、東京シティフィル、東京フィル等と共演。2007年10月ロン・ティボー国際コンクールピアノ部門で優勝(第1位)。 |
Vol.5 INDEX
2007年11月30日発行 |
Stage+人(3) 聴くものを心地よい安らぎの世界へ誘う 情感豊かな倉本ワールド 倉本 裕基さん |
Stage+人(4) ロン・ティボー国際コンクール優勝! 「過去の再現ではなく 現在(いま)を創造したい」 田村 響さん |
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音楽の仕事風景(2) [音楽]×[ビジネス] 音楽で培った感性は、企業の中でも活きる 南部 靖之氏(パソナ社長) | |
ピアノのある生活(4) 医学界とピアノ教育界で生涯現役の原動力を探る 日野原 重明先生(96) 藤沢 克江先生(90) |
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ステージあらかると 「トークコンサート祭」 |
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グランミューズ通信 コンペ選曲ランキングほか |