Vol.06-1 ピアノ教育の未来を考える(3)佐々木かをり氏(イー・ウーマン)
多忙を極める現代の子ども達。ピアノの練習時間やレッスン時間がとれないまま、次第に学習意欲が薄れ、自ずとレッスンを中断...というケースが少なくない。どうすれば多忙な子どものレッスン継続を導くことができるのか、時間管理術の著書、講演でも人気の佐々木かをりさんにお話を伺った。
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株式会社イー・ウーマンおよび株式会社ユニカルインターナショナルという2社の社長。ピアノ歴もある2児の母であり、オピニオンリーダーとして国内外で活躍中。超多忙な日々を送る佐々木さんご自身が実践されている「時間管理術」、考案された「アクション・プランナー(行動計画手帳)」は、仕事をもつ女性たちのスタンダードになっている。【ブログ】 |
時間管理をする目的は、ハッピーになるため。「○○ができたらいいな」とか「○○のようになっていたらいいな」と感じていることを、きちんと日々の計画に落とし込んで、一つ一つ実践することによって、達成感のある毎日を過ごすことができるのです。時間管理というのは、つまり、行動計画。だからこの手帳も「アクション・プランナー」といっています。
手帳に「人との約束」の時刻を書き込むのはごく普通のことですが、「行動計画帳」は、時間を30分単位の面でとらえ、自分の夢を行動計画に変身させ、「自分との約束」を守りながら、その夢を実現させる手帳なのです。「自分の人生の脚本を書くための行動計画帳」というイメージにひろげて使っていただきたいのです。
最近私は、「主役力」という言葉を使っています。自分の人生の主役は自分ですが、実は、その主役をハッピーにさせるのも自分の役割で、「主役がハッピーになる脚本を書く」脚本家でもあるのです。その脚本を書くという意味で、行動計画帳を使いましょうとお話しています。
人生脚本なので、行動計画帳は1冊にすることが重要です。脚本が2つも3つあったら、どんな俳優だっていい演技はできませんよね。私の手帳には、2社の株主総会や営業会議も入っていれば、子どもの学校の面談や運動会や遠足のお迎えやというのも、すべてが私自身の行動に関係するので、この1冊に書いてあるわけです。1冊にすることによって、難しいと思っていた予定が、まったく不可能ではなかったりすることが見えてくるのです。例えば、「なんかその日は役員会があったから学校の面談は難しいかしら」というマインドになりがちですが、1冊にしておくことで、可能であることが一目瞭然です。ピアノの先生方も、レッスン用、プライベート用、携帯用と別々にせず、1冊の手帳で行動計画を立てられると、急な時間変更や待ち時間も、うまくパズルを合わせるようにして、時間を有効に使うことができるのではないかと思います。
佐々木かをり(著)
自分で考える子どももしたい、自ら行動する子どもにしたい。そのために、今、何より身につけさせたいのが「計画する力」。著者が家庭で実践している子どものための時間管理術。 |
毎年夏に、小学生や中学生の子どもを対象に、「時間管理術」のセミナーを実施してきました。とても人気で、遠方からも親子でいらっしゃる方がいらっしゃいます。子ども達なので、授業を長くは聞いてくれないと思って、大人に2時間かけて行う授業を45分でしているのです。ところが、びっくりするほど子ども達の理解力があって、見た目はわかっていないような感じで座っているんですけれども、終わった後のアンケートに、私はいつも感激するんです。例えば、「時間管理って何でもできるようにするためのものだということがわかった」とか、「時間を管理すると、勉強も遊びも両方できることがわかった」とか、みんな的を得ているんですよ。なんかすばらしい!大人でもなかなかそこに行き着かない人がいるのに、と。
子ども達がワクワクと自分の時間をデザインしていくことができるようになって、自分の行動は自分でプランできるんだということを知ると、楽しくなるんですね。たとえば、夏休み。子ども達は、宿題が山ほどあるという感覚なんですね。だからまず、どのくらいの時間の量なのかを整理させるんです。宿題のプリントは3枚なのか、30枚なのか、1枚が1時間かかるのか、5分でできるものなのか。初めは、1日に宿題もしなくてはいけない、遊びもしたい、「宿題 遊び=1 1」のように見えるんだけれど、宿題30分の残り時間が5時間あるならば、「宿題 遊び=1 10」いうのが、計画帳のマスでひと目でわかる。すると子どもは、「なんだ。それっぽっちのことならば、宿題もいいね。遊びってこんなにできるんだー」と。やっぱり目で見ることの面白さがあると思うんですね。
セミナー後、「佐々木先生の教えていただいた通りに夏休みにやったら、宿題がとても早く終わって、行きたい所も全部行けて、本当に楽しかったです。ありがとうございました」と、夏休みが終わったところで、ハガキをいただいたりしました。
「子どものための時間管理術」セミナー 実際に、自分の課題となっている夏休みの宿題、復習の時間、遊びの計画、見たいテレビなどを子どもたちが書き出し、自分の力で行動するための計画の立て方などを実習形式で学んだ。 今年も夏に開催予定 http://www.ewoman.co.jp/univ/ |
セミナーでも、同席されている保護者の方々に申し上げるのですが、「いちばん大切なことは、自分の人生は自分の計画次第で動かせるんだ、ということを知ってもらうこと。ですから、その計画通りにいかないことを怒らないでください」と。つい子どものことだと、「あなた、3時から勉強って言ったのに、何でしてないの!」とか、「4時にピアノの練習って書いてあるでしょ!」みたいに言いそうなんですけれど、私たち大人だって、「毎日夜10分本を読もう」なんていって、その10分が本読めなかったりしているのですから。むしろ、計画したことをまず誉めてあげるとか、全部できなくても一個実行したら「よかったね。3時から4時に計画通りできたね。気持ちいいね」と、そこに注目してあげてください。「計画」と聞いただけで「嫌だ!」ということになると本末転倒です。本人が「また計画してみようかな」と思うところに結び付くように、楽しく導いてあげてもらいたいと思うのです。
ただ計画力は、学年やその子の理解度に大きく関係するので、「自由に書きなさい」というのは本来難しくて、一緒に隣に座ってあげて、「そうだね。じゃあ、それは3回に分けられるから、何日にしようか」とか、「月曜から日曜まで続けてやるのは大変だから、土日は休もうか」とか会話をしながら、うまくいくように保護者が仕組んであげることがとても大事ですね。
アクション・プランナー 佐々木かをり(著) 佐々木かをり「時間管理術」に基づいてつくられた手帳で、フランス製の見開き1週間、パーチカルタイプの火付け役となった。(http://www.ewoman.co.jp/ap/) |
佐々木かをりの手帳術 佐々木かをり(著) 「海外旅行に行きたい」「英会話の勉強がしたい」「資格がとりたい」そんな「やりたいこと」ができていますか?アクションプラン時間管理術で人生がハッピーになる!著者が実践する時間と手帳の効果的な使い方を紹介する。 |
主役力には、主役の行動管理をするという意味での「時間管理」が一つ柱としてとても重要ですが、もう一本重要な柱があって、それが「健康管理」だというふうに考えています。さらに、健康管理は三つ柱があって、頭脳(思考・考え方)が健康であるか、心が健康であるか、体が健康であるか。いつも安定した健康を作るということが重要で、基本はよく食べる、よく寝る、よく動く、そして、よく笑う、というところだと思うんですね。結局いい仕事ができている人って、みんな元気です。頭脳、心、体の健康は、ハッピーな主役を演じる土台なのです。
Vol.6 INDEX
2008年3月31日発行 |
ピアノ教育の未来を考える(3) 自分の行動を自分でプランする 佐々木かをり(イー・ウーマン) |
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ピアノ教室からのMessage(1) 「ひとり学び」の種をまく ~親は「ひとり学び」の仕掛け人~ 石黒加須美(かすみピアノスクール主宰) |
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