今回ピティナ・ピアノフェスティバルにお迎えするロバート・レヴィン先生は、「研究者・理論家」と「演奏家」の2つの顔を持つ、現代においてもっとも活躍する鍵盤楽器奏者のひとりです。レヴィン先生の活動の一端をご紹介します。
レヴィン先生の名前を知らしめているのが、モーツァルト作品の研究。ザルツブルク・モーツァルテウム研究所所員でもあり、「レクイエム」「ハ短調ミサ」「4つの管楽器のための協奏交響曲」など、モーツァルトの未完作品の補筆では唯一無二の存在です。
ピリオド楽器を自由に操ることができ、チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノ、オルガンなど、あらゆる鍵盤楽器でのコンサートと録音を行っています。今回のフェスティバルでも、ピリオド楽器を3種用意し、レヴィン先生に演奏していただく予定です。
もちろん、現代ピアノの奏者としても引っ張りだこで、通常のソロや協奏曲のほか、世界的ヴィオラ奏者キム・カシュカシアンの伴奏者、現代音楽の優れた解釈者としても知られています。
現在は、アメリカの名門、ハーヴァード大学に拠点を置き、演奏と研究の両立に多忙な日々を送っていらっしゃいます。
平均律全曲を、各曲の性格に応じて、オルガン、クラヴィコード、チェンバロで弾き分けたレヴィンならではの企画。各楽曲が、その楽器のために書かれたかのように説得力を持って鳴る。
古楽器の第一人者、チェロのアンナー・ビルスマと共演した、レヴィンの数少ないハイドン録音。
かつて分売されていたモーツァルトの協奏曲が、まとまった形で入手可能。ピリオド界の巨匠クリストファー・ホグウッドの指揮で、第1~4番はチェンバロ、それ以外はフォルテピアノを用いている。即興カデンツァに、レヴィンの天才を確認することができる。
新たにリリースが開始されたモーツァルトの鍵盤ソナタ集。ソナタ1・2・3番を収録するほか、レヴィンがモーツァルトの初期のソナタや楽器について語った特典DVDも見ごたえがある。
レヴィンの代表盤で、名匠ジョン・エリオット・ガーディナー率いるオルケストル・レボリュショネル・エ・ロマンティクとの共演。ここでもフォルテピアノを用い、渋く温かみのある音色でベートーヴェンの真実に迫る。世界初録音となる協奏曲第4番の室内楽編成版の透明感は凄まじく美しい。
ヴィオラの名手キム・カシュカシアンとは、長年にわたる信頼関係を築いており、録音も数多い。代表盤は、ブラームスのヴィオラソナタ。カシュカシアンの美音に、レヴィンが現代ピアノで俊敏に反応している。
1987年に国際バッハ・アカデミーからレヴィンに対し、1991年の没後200年演奏会に向けての新しい版が依頼されたことを受けて、発表された。「この作品の200年の長い歴史を尊重しながら、ジュスマイヤー版における楽器法上、規則上、構造上の問題に目を向けようとしたものである」と語っており、現在、多くの演奏機会に用いられる。
長くモーツァルトの真作であるか議論のあった作品に対し、レヴィンはコンピュータを用いて作曲手法を分析し、真作であるとの強力な学説を提示した。さらに、失われたフルートのパートの「あるべき姿」を作り上げ、かつオーケストラ・パートを改造して短くし、モーツァルトが1778年にパリで書いた時の姿に最も近いだろう形の協奏交響曲を復元した。
ここでは、「演奏への助言」を執筆しており、レヴィン自身によるモーツァルト演奏法の解説は非常に興味深い。