ピアノステージ

Vol.03-5 調査レポート(1)

2007/03/31

 大人顔負けの忙しい生活を送る今時の中高生たち。試験時や受験勉強に追われ、学校行事も盛りだくさん。友達とだって遊びたい!・・・・そんな中高生たちが、「時間がない」という理由で、ずっと続けてきたピアのを辞めていってしまうのは、とても残念なことです。
 本レポートでは、241人の現役中高生ステップ参加者とその指導者への調査(★)から浮かびあがってきた、「継続」と「両立」のための条件を5つにまとめました。中高生のピアノ学習者、そして親のみなさんにも、参考にしていただきたいヒントをご紹介します。

★このアンケートは、過去2年間でピティナのステージに10回以上参加された
中学1年生~高校3年生の方700名とその指導者60名を対象に実施されました。
1.フレキシブルなレッスン形態2.練習時間の確保と効率化
3.曲の魅力を知る4.具体的な目標設定
5.新しいタイプの刺激をエピソード集 私がピアノを続ける理由:ステップ編
ピアノの継続が難しいと思う理由
ピアノの継続が難しいと思っている実に7割近くの中高生が、「両立」理由にあげている。
ピアノの継続が難しいと思う理由
ピアノを通じての変化
「時間管理能力」や「練習の効率」がピアノを始める前と後で「変わらない」と答える人が多いのが印象的。
忙しい日常の中で。効率よく練習が出来ている人は意外にも少ないようだ。
ピアノを通じての変化

1.フレキシブルなレッスン形態

どうしてピアノを続けるの?その原動力とは
どうしてピアノを続けるの?その原動力とは 「周りが応援してくれて嬉しい」「学校で有名になれた」などの「対人間」原動力と、「音楽が大好き」「好きな曲を弾くのが楽しい」などの「対音楽」原動力が過半数を占めた。「勉強や人間関係に疲れた時、ピアノを弾くと癒される」という風に、ピアノに逃げ道やストレス解消を求める人が多かったのも、悩み多きこの年代ならではの特徴なのかもしれない。

 毎日の練習どころか、毎週決まった時間にレッスンに通うのも難しい、という中学・高校生の方々も多いのでは。でも、学校生活を優先出来るように定期テスト前後はお休みにしてもらう、学校行事に重ならないようにレッスンを組んでもらう、毎回のレッスン時間をその都度先生と相談しあいながら決める...など、レッスンを不定期かつフレキシブルに続けている人は沢山います。中には、年間回数でチケット制レッスンを行なったり、レッスンの長さを選択制にしている教室も。自分のペースでピアノを続けられるように、一度先生とレッスン形態について相談してみては。


2.練習時間の確保と効率化

中高生アンケート
進路別の平均練習時間/有効回答数211名
全体 練習時間
平日平均時間 72分(最低10分、最高240分)
休日平均時間 103分(最低0分、最高660分)
進路:音楽系 練習時間
平日平均時間 106分
休日平均時間 173分
進路:検討中 練習時間
平日平均時間 68分
休日平均時間 106分
進路:音楽系以外 練習時間
平日平均時間 43分
休日平均時間 59分

 レッスンに通うのと同じぐらい難しいのが、練習時間の確保。でも、時間は「あるもの」ではなく「作るもの」。まずは一日のうち手が空いている「隙間」時間にこまめに練習してみるのもひとつの手でしょう。
 そして、中高生の指導経験豊富な先生方が皆、口を揃えて言う一番大事なこと。それは「ただ弾くだけ」の練習を卒業することです。練習の効率と充実は、その量以上に効果を発揮するもの。曲の中で「練習すべきところ」と「そうでもないところ」を見極め、必要なところのみ最善の方法で効率よく練習することで、短い練習時間で成果を上げることは充分可能なのです。


3.曲の魅力を知る

選曲に迷った時の、
お役立ちサイトはこちら

ピアノ曲事典
ピアノ曲事典
http://www.piano.or.jp/enc/


ナクソス
naxos(ナクソス)
http://www.naxos.co.jp/

 どんなに時間がなくて、どんなに練習が大変でも、結局好きなら続けていこうと思えるもの。「新曲と出会っていくのが本当に楽しみ」(高2・長野)、「『ピアノをやめる』ということが考えられない。弾きたい曲が弾けなくなってしまうから・・・」(中3・茨城)などの意見は、自分の好き嫌いがはっきりしてくる中学生・高校生の間でとても多く見られました。
 曲を楽しんで弾くには、様々な曲の魅力に触れることが一番の近道。とにかく色々なジャンル・スタイルの曲を沢山聴いてみるところから始めてみましょう。長くピアノを続けていても、意外と自分が弾いたことがある曲しか知らなかったりするもの。演奏会に行ったり、CDを聴いたり、身近なポップスをレパートリーに取り入れたりして、演奏の可能性をもっともっと広げてみてください!

好きな作曲家ランキング
ピアノの詩、ショパンが圧倒的人気を誇る。また、好きな曲を自由に挙げてもらったところ、ショパン「幻想即興曲」や、モーツァルト「トルコ行進曲」など、スタンダードな名曲が根強い支持を受けた。

4.具体的な目標設定

何事も、目的意識とモチベーション維持なくしては続けられません。「なんとなく」ピアノを続けるのではなく、明確な目標作りをしていきましょう。
 練習時間の表を作って短期目標の達成をその都度確認したり、発表会やステップ、コンクール出演などの長期的目標を設定することも効果的です。特定の期日と目的に向けての準備は大変ですが、「ステージ後に得た達成感や喜び、成長の実感が継続意識につながった!」という意見が中高生アンケートでも多数寄せられました。「今何を目指しているのか」を、常に振り返ってみましょう。


5.新しいタイプの刺激を

コンサートやコンクールの場が華やかな反面、ピアノの練習ってとても孤独。毎日コツコツと練習を続けることは、かなりの精神力と根気強さを要します。
 それでもピアノを長く続けている人の多くは、ピアノだけに目を向けているわけではありません。例えば演奏会に定期的に通って刺激を受けたり、家族や友人とのアンサンブルを楽しむ、他楽器の演奏活動でピアノの魅力を再発見、といったケースも。また、いざという時励ましたり、上手く行った時喜び合える「教室友達」は、一生の財産。こういった「ピアノだけじゃない楽しみ」を見つけることが、実はピアノを続ける一番の秘訣なのかもしれません。


エピソード集 私がピアノを続ける理由:ステップ編

ステップの重要なキーワード、「継続」。ステージ演奏といった明確な目標を持てることはもちろん、それ以外にも沢山寄せられたピアノ継続に繋がったエピソードをここで一部紹介。
見ず知らずの人と... 「高2の時、ステップの演奏を終えて客席に戻ると、見ず知らずのおばさんが笑顔で近づいてきて、『感動しました。本当にありがとう。』といって手紙を渡してくれ、私の手を温かく握ってくれた。そのとき、これからは自分のためだけじゃなく、人のために演奏できるような人間になりたいなと思った。」(高3・三重)
素敵な講評がもらえた! 「ステップでベートーヴェン・ソナタを弾いた時、『あなたはドイツものが弾ける人ですね』と講評を頂いたとき、うれしかった。」(中2・茨城)
「以前、コンクール課題曲レッスンをして頂いた先生にステップでお会いして覚えていて下さり、講評もどの位良くなったかを書いて下さったので大変嬉しかったです。」(中2・埼玉)
先生との絆が深まった! 「ステップでの演奏が終わったあと、先生がすぐに私のところにやって来て『良かったよ!!』と手を差し出してくれたことが、今でも印象に残っています。その次の日にも先生から、『昨日のスケルツォは本当に震えましたねぇ!』と書いたメールが入っていました。それからもう二年が経ちますが、私はそのときの感動を忘れられません。これからも『震え上がる』演奏をしていきたいと思います。」(中3・岡山)
色々な人にパワーをもらえた! 「中1の時、継続表彰コンサートに出演。特に95歳のおばあちゃんの演奏が今もずっと心に残っています。おばあちゃんを見て、音楽に年令は関係ないということを学び、パワーをもらいました。このコンサートで日本中にこんなにたくさんピアノを愛している人がいることを知り、これからもずっとピアノを続けていきたいと思いました。」(中3・沖縄)
自作の曲を誉めてもらえた! 「フリーステップで、作詞作曲の曲を弾き語りで演じる「自作自演」をやらせてもらいました。『私が勝手に作った素人の曲、皆に理解してもらえるかな』と不安でしたが、演奏後、あたたかい拍手をしてもらい、審査員の方々にも『スゴイね』と言ってもらい、メッセージも嬉しくなる事ばかり書いてもらえて、おまけに一般の方々からもお手紙をもらい、『もう、この後の人生、これ以上嬉しい事はないんじゃないか』と思うくらい嬉しかったです。」(中3・和歌山)

Vol.3 INDEX


2007年3月31日発行
教育の未来を考える(1)
今は子どもがどんどん自分でやりたいことを設定していく時代
寺脇研さん
ピアノのある生活(3)
竹馬の友によるデュオ 「団塊の世代の人達に、励みにしてもらいたい」
林智雄さん&古澤洽一さん
<ピアニスト>が育つ家庭の3つの視点
何も禁止されなかったからこそ、自然と道が開けた
根津昭義さん、栄子さん、理恵子さん
ステージが育てる不思議な力(3)
親はどう対応?~3つの心構えとは~
渡部由記子先生
調査レポート(1)
どうすればピアノを続けられる?
~中高生の「継続」と「両立」に必要な5つのキーワード~
ステージえとせとら(2)
ピティナ40周年記念コンサート ほか

ピティナ編集部
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