17 音楽学校の誕生―ライプツィヒ音楽院の誕生の意味 その2
17 ライプツィヒ音楽院と総合的音楽教育の理想 その2
ライプツィヒ音楽院(音楽大学)でのピアノ教育 1843年にメンデルスゾーンによって創設されたこの音楽院は、音楽に対するまったく異なったコンセプトに基づいていました。19世紀の音楽学校は、特定の専攻教育を旨とするものが一般的でした。たとえばピアノ教育を専門とする学校や、ピアノと声楽のみの専攻教育の学校などです。19世紀で高い名声を誇ったベルリン音楽院は、当初はピアノ音楽学校で、ピアノ専攻生が1000名在籍していたとされています。 8-9時 プライディ(ピアノ) 9-11時 ハウプトマン(音楽理論) 11-12時 モシェレス(ピアノ) 14-16時 リヒター(オルガン) 16-18時 オーケストラ、作曲 火曜日 7-9時 リヒター(オルガン) 9-10時 ハウプトマン(音楽理論) 10-11時 リヒター(音楽理論) 14-17時 プライディとモシェレス(ピアノ) 17-18時 ヴァイオリン 作曲 水曜日 7-8時 ハウプトマン(音楽理論) 8-9時 リヒター(音楽理論) 9-12時 ゲヴァントハウスプローベ 14-15時 プライディ(ピアノ) 15-17時 モシェレス(ピアノ) 17-18時 モシェレス(ピアノ) 18-19時 ヴァイオリン 作曲 木曜日 7-8時 ハウプトマン(音楽理論) 8-9時 リヒター(音楽理論) 9-10時 モシェレス(音楽理論) 10-12時 プライディ(ピアノ) 14-15時 プライディ(ピアノ) 15-17時 リヒター(オルガン) 17-18時 ヴァイオリン 作曲 金曜日 7-8時 ハウプトマン(音楽理論) 8-9時 リヒター(音楽理論) 9-10時 モシェレスとプライディ(ピアノ) 10-11時 リヒター(オルガン) 11-12時 ヴァイオリン 14-15時 リーツ(オーケストレーション) 15-18時 リーツ 土曜日 7-8時 ハウプトマン(音楽理論) 8-9時 リヒター(音楽理論) 9-11時 リヒター(オルガン) 11-12時 リヒター(オルガン) 14-15時 ヴァイオリン 15-18時 モシェレスとプライディ (下線はホルネマンによるものです。これが本来のレッスンと思われます) ホルネマンはおそらく作曲とピアノの二つを専攻としていた学生と思われます。しかし、今日とは異なり、学生が二つの専攻をもつことは珍しいことではなく、ヴァイオリンとクラリネットを専攻楽器とする学生の例もいました。ハンス・フォン・ビュローが常任指揮者を務めたマイニンゲン宮廷オーケストラの主席クラリネット奏者のミュールフェルトは、ヴァイオリン奏者として入団しています。ミュールフェルトはブラームスにクラリネット五重奏曲などのクラリネットの名作の作曲に霊感を与えた19世紀後期の名クラリネット奏者です。 《その3》へ続く
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山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期退学。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18,19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「聖なるイメージの音楽」(以上、音楽之友社)、「ピアノの誕生」(講談社)、「楽聖ベートーヴェンの誕生」(平凡社)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」(講談社)、「音楽史ほんとうの話」、「ブラームス」(音楽の友社)などの著書のほかに、共著・共編で「ベートーヴェン事典」(東京書籍)、翻訳で「魔笛とウィーン」(平凡社)、監訳・共訳で「ルル」、「金色のソナタ」(以上、音楽の友社)「オペラ事典」、「ベートーヴェン事典」(以上、平凡社)などがある。