第28回 マズルカ第29番(4つのマズルカ Op.41より 第4曲 変イ長調)
〔A〕a 1~16小節・・・・・・・オベレク
b 17~32小節 ・・・・・・クーヤヴィアク
〔B〕33~52小節 ・・・・・・オベレク(ハ短調)
〔A〕a 53~61小節
b 62~75小節
Op.41の終曲は、ワルツを思わせるように始まるおしゃれなマズルカです。また「変イ長調」は、ミツキェヴィッチの詩「オンディーヌ(水の精)」をヒントに書かれたと言われる『バラード 第3番』に代表される魅力的な調性ですが、この作品も女性的なしなやかさと神秘に満ちた部分をあわせ持っています。
出だしはAllegretto(やや速く)と表記され、民謡風の旋律が優しく歌われます。しかし、リズムには元来テンポが速く力強さが特徴のオベレクが使われており、洗練されたムードの中にも郷土色を失わない、ショパンの愛国心と工夫が見られます。〔A〕の前半では、2小節ごとにアクセントが置かれたこの8回の旋律を、ハーモニーと共にそのニュアンスの変化にこだわって演奏したいものです。〔A〕後半の旋律は4小節フレーズのなだらかな順次進行となり、伴奏部と親密なアンサンブルをしながら、昔を懐かしむようにゆったりと歌われます。ハ短調へとノスタルジックな転調を遂げると、連打の和音伴奏が特徴の〔B〕へ。焦燥感に駆られてか、かかとを踏み鳴らすような元来の男性的なオベレクはここで登場します。しかしショパンは、瞬く間にハ長調の夢想の世界へと我々を誘い(『バラード 第4番』や『ピアノ協奏曲 第2番』にも見られる、無色透明な別世界の響き)、再びワルツ風オベレクが登場するときには、フォルテでさらに楽しませてくれます。
このような小品にこそ、音楽的な波動(うねり)を大いに感じて演奏を楽しみたい、と心から思います。
ショパン:その他の「変イ長調」の作品。エレガントなものばかりです。
♪ 練習曲 Op.10-10、Op.25-1、3つの新練習曲 No.3
♪ 前奏曲 Op.28-17
♪ 即興曲 No.1
♪ マズルカ Op.17-3、Op.24-3
♪ ワルツ Op.34-1、Op.42、Op.64-3 など。
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。