第05回 マズルカ第5番(5つのマズルカ Op.7より 第1曲 変ロ長調)
** 5つのマズルカ Op.7 **
1830~32年作曲、1832年に出版。ラ・ヌーヴェル・オルレアンのジョーンズ氏に献呈。同じ時期に作曲されたOp.6と同じく、シンプルな構成の中に舞曲の魅力が際立つ楽しい作品です。
楽譜売り場に行くと、「エリーゼのために」「トルコ行進曲」「子犬のワルツ」といったピアノの名曲ばかりを集めた曲集をたくさん目にします。Op.5-1もそこに選抜されることの多い作品です。その理由としては、次の点が挙げられると思います。
- (1)
- シンプルな構成であること。生気あふれる冒頭の12小節間(a)、ヘ長調の8小節間(b)、空虚5度の上でエキゾチックな旋法が漂う8小節間(c)の3部分の組み合わせで作曲されている。
- (2)
- 右手の旋律は音階をなぞるような順次進行が基本。上行下行に伴って強弱も自然に書かれている。
- (3)
- 左手が受け持つ和声は基本の3種類。V度とI度の和音が繰り返される間に、IV度が強調するように置かれ(a部分の3小節目)フレーズ自体もスイングするので、リズムに乗りやすい。
簡潔に見える2ページですが、前打音、点のスタッカートとくさび型のスタッカート、スラーのかかり方、アクセント、強弱、ルバートなど、各小節に書かれたショパン流の細かなディテールを見逃してはなりません。a部分では、3小節間をマズールのリズムを持った音階が勢いよく駆け上がると、そこから急に弱音になって「戯れるように(scherzando)」ハラハラと舞い降りてくるような軽やかなステップとなります。b部分では一転、弱音でアウフタクトを持つレガートのマズールになります。後半は伴奏がスタッカートのヘミオラとなり、同じ旋律でも飽きさせません。空虚5度のc部分もマズールのリズムを持ちますが、ピアニッシモでクーヤヴィアク風にやわらいだ感じも受けます。突如目の前の景色がぼやけ意識が遠のいたような、とても印象的な瞬間です。シンプルなものほど奥が深い!。
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。