はじめに
20歳で祖国ポーランドを離れたショパンが、生涯にわたって作曲した民族舞踊の音楽、マズルカ。この度、その全58曲を演奏録音するという貴重な機会をいただくことになりました。
音による思想の表現
人間の無限の言葉、それは音である。
音による人間の感情の表現。
音楽の無限の言葉。
音によって表現する芸術を音楽という。
音によって思想を表現する芸術。
音を操作する芸術。
音によって表現された思想。
(佐藤允彦著「ショパンとピアノと作品と」より)
ショパンの未完のピアノ入門書「メトード・ド・メトード」に書かれた一節だそうです。作品になろうとする音に静かに耳を傾けるショパン。音楽への思いを言葉にし、揺るぎないものにしようとする姿が目に浮かびます。
各曲に凝縮されたショパンの音楽への情熱、祖国に対する誇り、音に込められた喜び、憂い・・・演奏者としてそれらを受け止め、音にできる瞬間が少しでも多く持てるよう願いながら、彼のエッセイとも呼べるマズルカに時間をかけて向き合っていきたいと思います。
マズルカについて
「マズルカ(仏語、ポーランド語ではマズレク)」はワルシャワの真北、ポイエーシェ・マズルスキという美しい湖沼地帯で農民により踊り継がれてきた3拍
子の舞踊。2拍目、3拍目にアクセントが移動するおもしろさが特徴です。一般的に以下のような3種類に分けられると言われています。
ショパンのマズルカはこれらを織り交ぜて作曲されています。彼は、地に根付いた庶民の踊りを珠玉の芸術作品へと変身させたのです!
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。