ピアノから考える大学受験

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2017/10/05
ピアノから考える大学受験

ピアノの習い事を「受験の時にやめてしまいました」というお話をよくうかがいます。ピアノは学校の科目に当てはめるなら「音楽」になりますし、「音楽」という科目で受験をできるのは、現状音楽大学だけなので、受験科目に絞って勉強するというのは今までは効率的な選択肢だったかもしれません。

しかし、2017年7月に文部科学省より「高大接続改革の実施方針等の策定について」の方針が示され、2020年度より大学入学者選抜実施要項が大きく変化することになりました。新しい大学入試選抜試験の内容を踏まえ、ピアノを続けることでの入試上のメリットを考えてみましょう。

2020年度からの大学入試改革

現在すすめている教育改革の大きな目的は、「学力の3要素」を養っていくことにあります。

【学力の3要素】
  1. 知識・技能の確実な習得
  2. 思考力、判断力、表現力
  3. 主体性をもって多様な人々と共同して学ぶ態度

意外とピアノ教育で目指していることと似ている、と思う方も多いのではないでしょうか。
大学入試も「学力の3要素」を多面的・総合的に評価する内容に変わります!

変更点その1:入試区分が変わります!
  • 変更前
  • 変更後
  • 一般入試
  • 一般選抜
  • AO入試
  • 総合型選抜
  • 推薦入試
  • 学校推薦型選抜

上記区分の変更に伴い、下記の通り試験内容が見直されます

<AO入試、推薦入試>

調査書等の出願書類だけでなく、各大学が実施する評価方法等(※)又は「大学入学共通テスト」のうち、少なくともいずれか一つの活用が必須になります。

  • 例えば、自らの考えに基づき論を立てて記述させる評価方法(小論文等)、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績など
<一般入試>

筆記試験に加え、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料等(※)の積極的な活用を促す。 ・・・他

AO入試・推薦入試で必須となる「各大学が実施する評価方法」にもしかしたら「ピアノコンクールの入賞歴」等が含まれる可能性もありますので、志望大学の入試方法を要注目です!
また、一般入試においても「主体性をもって学ぶこと」をより一層評価対象とするために、調査書に記載された課外活動が入試に及ぼす影響が今までよりも大きくなることが予想されます。
変更点その2:調査書の記載方針が変わります!

生徒の特長や個性、多様な学習や活動の履歴についてより適切に評価することができるよう、現行の調査書の「指導上参考となる諸事項」の欄を拡充し、以下の①~⑥の項目ごとに記載する欄を分割して、より多様で具体的な内容が記載されるようになります。

  • ① 各教科・科目及び総合的な学習の時間の学習における特徴等
  • ② 行動の特徴、特技等
  • ③ 部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等
  • ④ 取得資格・検定等
  • ⑤ 表彰・顕彰等の記録(※)
  • ⑥ その他
各学年ごとにコンクールの入賞歴を記載できるようになります。また裏面、または別紙に課外活動等について多く記述できるようになります。コンクールの受賞歴、表彰歴は必ず学校に報告しましょう!
変更点その3:試験内容が変わります!

現在の大学センター入試が「大学入試共通テスト」と名称を変更し試験内容も変わります。

  • 国語・数学では一部問題に記述式が採用されます
  • 英語では「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を適切に評価するため、現に民間事業者等により広く実施されている資格・検定試験を活用します。
英語については資格・検定試験の実施日にあわせた早めの入試準備が可能となり、高3の年度末にかかる負担が軽減されるため、課外活動を続けやすくなります!
◎大学入試改革のスケジュール
◎調査書とあわせて下記の資料などもご活用ください
  • 継続表彰証明書
  • コンペティション
    合格証書、各種賞状
  • ステップ
    合格証書、参加証書
大学入試の現状

この15年間で、AO入試・推薦入試での入学者が33.1%⇒43.5%と大幅に増加しています。 2016年度では東京大学が推薦入試を開始したことが話題となり、この流れはますます進んでいくことが予測されます。

特にAO入試では課外活動の成績による自己推薦により試験を受けることのできる大学も多くあります。下記にピアノの成績を提出できる入試方法の例をまとめました。他にもまだまだありまりますので、ピアノ学習者は自分の志望大学の受験制度を一度ご確認ください。

大学名 学部 入試方法 方式 ピアノ関連の受験資格
慶応義塾大学 法学部 FIT入試(AO入試) A 方式 文化・芸術・技芸・運動等の分野において優れた成績や成果を残したことが証明できる者。
理工学部 AO入試   課外活動(文化系・運動系を問わない)で世界的・全国的なレベルでの高い評価を得た者。
SFC AO入試 A方式 学術・文化・芸術・スポーツなどさまざまな分野において,研究,創作発表,コンクール,競技などの活動を通し,社会的に評価 を得ている
看護医療学部 AO入試   学術・文化・芸術・スポーツなどさまざまな分野において、研究、創作発表、コンクール、競技などの活動を通し、社会的に評価を得ている
早稲田大学 教育学部 自己推薦入試   ①〈学芸系〉高等学校または中等教育学校後期課程のクラブ活動、またはその他の課外活動を通じ、個人もしくは集団の一員として、学芸系の領域で優れた成績を挙げた者。
社会科学部 全国自己推薦入試   学芸系もしくはスポーツ系クラブに所属し、都道府県以上の大会・コンクール・展覧会等において優秀な 成績を収めた者。
立教大学 経営学部 自由選抜入試 資格II 文化・芸術の分野における全国または国際レベルの大会において、上位に入賞し、かつ、その活動団体において指導的役割を果たしたもの。
理学部 自由選抜入試 文化・芸術の分野における都道府県レベル以上の大会・コンクールなどで上位に入賞した者
法学部 自由選抜入試 学術・文化・芸術の分野で高い評価を得たもの(音楽、演劇、美術、文学、書道、弁論などにおける都道府県レベル以上の大会・コンクールで入賞した者)
コミュニティ福祉学部 自由選抜入試 資格II 文化・芸術の分野における都道府県レベル以上の大会・コンクールなどで上位に入賞した者
中央大学 法学部 自己推薦入試 高校時代に課外の活動(国内におけるボランティア活動、地域活動、学術・文化・芸術活動等)に積極的に参加し、他の模範となる成果を収めるなど、広い視野と行動力を身につけた者
法政大学 キャリアデザイン学部 キャリア体験特別入試 文化・芸術活動(個人、クラブ、地域での実績)、英検・TOEFL®・TOEIC®、簿記等の諸資格、スポーツ活動(競技者やマネージャーとしての実績等)、地域での NPO やボランティア活動の実績等、客観的に証明できるものを有すること
同志社大学 文化情報学部 AO入試 自己アピールできるものを持ち、それを第三者に説明し、説得できる能力を有している者。(語学能力、文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動等)
生命医科学部 AO入試 自己アピールできるものを持ち、それを第三者に説明し、説得できる能力を有している者。(語学能力、文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動等)
立命館大学 全学部 文化・芸術活動に優れた者の特別選抜入学試験 各分野における高等学校レベルの全国規模の大会、フェスティバルに入賞・参加するなど顕著な成績をおさめた者
関西学院大学 社会学部 AO入試 文化・芸術活動において大会やコンクールで入賞するなど高い評価を受けた者
法学部 AO入試 高等学校入学後に、文化・芸術・学術・スポーツ活動において大会やコンクールで入賞するなどの高い評価を得た者
経済学部 AO入試 高等学校入学後に、文化・芸術活動において大会やコンクールで入賞するなどの高い評価を得た者(学内活動、学外活動どちらでも可)
商学部 AO入試 文化・芸術活動等で高い評価を得た者
人間福祉学部 AO入試 実績評価(文化・芸術活動、社会貢献活動
高橋 茜さん (広島大学教育学部 生涯活動教育系 音楽文化系コース1年/ピティナ・ピアノコンペティションD級決勝進出、E級本選奨励賞/継続表彰20回)
広島大学を志望した理由を教えてください
ピアノの演奏についてもっと勉強し、磨いていきたいという気持ちと同時に、将来音楽を通じて子供たちと関わる立場になったとき、教育に関してきちんと学んでおきたいと思いました。そして歴史や宗教など、他のさまざまな学問と音楽との深い結びを考え、幅広く教養を身に着けるために総合大学を志望しました。
AO入試で入学したとうかがいました。入試に向けて、どのような準備をしましたか。また、ピティナの実績は使えましたでしょうか
楽典、コールユーブンゲン、演奏実技の練習はもちろんですが、高校3年になってからはAO入試の過去の問題に取り組み、音楽史や音楽教育に関する本を読んだり、自分の考えをまとめたりしていきました。論文は英語と日本語と2種類出題されるので(解答は日本語)、学校の先生に添削していただき、家では毎日面接の練習をしました。センター試験の勉強と並行してやらなければならないので大変でした。大学への提出書類に、高校3年間のピアノコンクールでの受賞歴と賞状のコピーを提出しました。
ピアノを続けてきてよかった、と思うことがありましたら教えてください
美しい音楽を聴いて感動する喜びを味わう時や、憧れていた曲が弾けるようになった時、自分の演奏がよくなっていると感じられるときなどは本当にピアノをやってきてよかったと思います。また、ピアノを通じて先生方や友人との素晴らしい出会いもありました。
将来の夢、希望を教えてください
どのような形になるかわかりませんが、演奏活動ができるようになりたいと思っています。また、大学院に進学して音楽や音楽教育についてもっと深く学びたいです。
音楽大学の改革

個人のレッスンを学びの中心に据えてきた音楽大学の教育も、大きな転機を迎えています。2017年度、東京音楽大学では音楽の単科大学でありながら、「リベラルアーツ」(人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野を横断的に教育する科目群・教育プログラム)を主専攻とするコースをスタートさせました。 また他の様々な音楽大学において、音楽技術の追求のみならず、音楽と社会や他学問のつながりを重視し、多岐にわたった知識・人脈を身に着けられる人材の育成に注目が集まっています。

日本の音楽大学初となる「音楽・英語・教養」融合型カリキュラム! 専門的な実技教育を柱としながら、英語教育と教養教育を強化したところに特色があり、入学後の実技教育は既存の専攻とほぼ同様に行われます。このような複合的なカリキュラムのもとで、プロフェッショナル音楽家の道を邁進しようとする者から、音楽を教養の核として実業の世界に飛び込もうとする者まで、学生はそれぞれ希望する進路に適した時間割を組むことができます。

岡田敦子先生 (正会員/東京音楽大学教授)
岡田敦子先生
これからの時代の新しい音楽家を育てる 高い語学力で教養を話せる音楽家の育成
東京音楽大学のミュージックリベラルアーツ専攻では、1年次には英語スキルを重点的に学び、2年次からはリベラルアーツ科目を英語で学んでいきます。音楽系の科目は、従来の器楽コースの学生とほぼ同じで、とくにピアノを専門実技とする場合は、個人レッスンの時間やレベルも変わりません。音楽課目にプラスして、語学と教養科目が強化されているわけです。
これから音楽家として活動するには、語学能力だけでなく、話す内容も鍛える必要があると考え、教養科目も「リベラルアーツ科目」として内容を一新しました。
このコースでは、授業もレッスンもすべて英語で受けることも可能なため、早速、ロシアとタイから留学生も入学してきました。
音楽を学んだ人は語学能力が高い
現在、英語科目の中でコミュニケーション能力養成のためにチュートリアル イングリッシュ(英語ネイティブ教員1人タイ学生4人)を導入しています。このシステムは早稲田大学と提携しており、先生方も早稲田大学からお呼びしているのですが、この半年での東京音大生の上達度合いに皆さんびっくりしていらっしゃいます。早稲田大学の学生を凌ぐとおっしゃる先生もいるほどです。音大生は耳が良く、なにより真面目で一生懸命に取り組みますので、語学能力の習得には適性があるのでしょう。
また、提携大学の上智大学からも英語ネイティブの先生を何人かお呼びしていて、積極的なアクティブラーニング方式の授業が行われています。そこで自ら発言したり提案したりする力が鍛えられるにつれ、演奏も積極性的になって表現力が増したとレッスンで褒められたと、嬉しそうに報告してきた学生もいます。
リベラルアーツ科目については、各界の優秀な先生方を客員教授としてお迎えしていることに加え、単位互換制度によって上智大学の授業も履修できます。
音楽大学の新しい形を目指して
これまでの音楽大学は個人レッスンや実技科目に大きな比重を置き、語学や教養科目はなるべく負担が少なくなるよう配慮されてきたのが一般的だと思います。しかし、大学入学前まで、音楽と学業を両立してきた人は少なくなく、とくにピアノの学生にはその能力に優れた人が多くいます。これからの音楽大学の在るべき形のひとつとして、そうした能力を尊重し、音楽家の道をきわめるにせよ、たとえば音楽以外の道を選ぶにせよ、どのような分野に進んでも優れた人材となる人を輩出していくことができると確信しています。

総合大学ならではの学び、就活サポートで、一流企業への就職も可能。「副専攻(実践ビジネス英語)プログラム」のスタートで、さらに就職の幅が広がります。

馬塲マサヨ先生 (正会員)
馬塲マサヨ先生
総合大学の文学部に所属している音楽芸術学科の特色
ピアノ指導者・音楽教員・演奏家等の進路を意識して、ピアノレッスン実習、ヤマハグレード取得講座、合唱指導法、管楽器指導法、ピアニストのための脱力法、演奏家のための身体感覚レッスン、等のユニークな科目を設置しています。本学科が文学部に所属しているという特色を生かし、ヨーロッパの文化や歴史、音楽以外の芸術を学ぶ科目も数多く用意しています。定期演奏会はもちろんですが、セントラル愛知交響楽団と提携したピアノ協奏曲や室内楽のコンサートなど研鑽の成果を発表する機会が多いことも本学の特徴です。
ピアノから広がる多様な将来への選択肢
ピアノを専門に続けたいという学生は更なる研鑽の場を求め、海外の大学院で学んでおります。また、ピアノ指導者として活躍する卒業生は年々増えています。教員になる学生も数多く、小学校から高校までの現場で生き生きと活躍しています。大学で教鞭を取る卒業生も多く輩出しています。また、本学が一般大学であることから一般就職への門戸も広く開かれており、一流企業に就職をする学生も数多くいます。ピアノをやめるのではなく、結婚出産を機に退職した後でピアノ講師になっているケースも大変多いです。
ピアノを続けてきた学生ならではの強みとは
ピアノに打ち込むということは、人前で演奏するときに緊張感に打ち勝つ精神的な強さ、ダメ出しをもらっても自分を良い方向にもっていくまで頑張れる粘り強さ、目上の人に対する礼儀正しさを身に付けることです。だからでしょうか、就職支援の職員の方のお話では、本学科の学生は就職活動にも熱心に取り組み、他大学と比べても一般企業への就職で高い実績を誇っています。
いままでピアノを学んできた学生たちに、社会で期待する役割
音楽芸術を深く理解するということはその人の感性を磨くこと、繊細な感覚を育てることに他なりません。どのような進路に進んでも、感性と感覚を磨き続けていくことを期待しています。教えることを職業とする学生が多くいますが、音楽の素晴らしさを子供たちに伝える教師になってもらいたいと思います。また、日本ではクラシック音楽が多くの人にまだまだ理解されていませんので、演奏活動に携わる学生には、その素晴らしさを伝えることのできる演奏家をめざしてほしいと思います。

音楽で新しいコミュニケーションのカタチをつくる。ちょっと抽象的でしょうか? たとえば、テレビやインターネットでよくみるアイドル。彼らの活躍の陰には、多様なイベントを企画しプロモーションする仕掛け人の存在が欠かせません。 音楽で人と社会をつなぐ仕掛け人=「ミュージックコミュニケーションのプロ」を育てることがこの専攻の狙いです。

◎「音大紹介」の紹介

音大の「今」を紹介しております。
音大へのインタビュー記事やオープンキャンパスの情報を一括して紹介しておりますので、ぜひご活用ください。


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