今月、この曲
最近、全音楽譜出版社より香月 修先生の「ツグミの森の物語」というピアノ曲集が出版されました。そのなかに私にとって大変思い出深い一曲があります。それは『妖精のメヌエット』という曲です。元々この曲は、私の母が2000年に大阪府と上海市友好締結20周年の折に、その記念として日中友好学生ピアノコンクールを作り、邦人課題曲として小学生の部の委嘱作品として作って頂いた曲でした。
その後、16年前のお話になりますが、私がサンクトペテルブルクにおいて『ロシア・日本音楽芸術祭イン・サンクトペテルブルク2001』に出演することになり、プログラムに武満 徹作品をはじめとする邦人作品を数曲予定しておりましたが、恩師である香月先生に「何か曲はありませんか?」とお尋ねしたところ、ヴァイオリンとピアノのデュオとして、この妖精のメヌエットの編曲版を作って下さいました。
本番はエルミタージュ美術館の隣にあるカぺラホールにて行われ、私の友人でチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団でご活躍中の石橋幸子さんと演奏し、大変好評を頂いたことが忘れられない思い出となっております。
この作品は、私たちがイメージする妖精のいたずら好きで無邪気なキャラクターとして描かれることが多いのですが、香月先生がこの曲の中でイメージされる妖精は優雅で気品があり、そして時にはセンチメンタルな表情も見せる少し大人っぽい妖精と言っておられ、特に中間部のホ短調に転調したアンニュイな雰囲気から、ハ長調に転調する瞬間の悦びと微妙に変化していく過程のハーモニーの美しさを感じ取りながら演奏すると、より味わいのある曲に仕上がると思います。
そして、私がピアノ指導者となった現在、これから生徒さんにラヴェルなどのフランス音楽を勉強させる前に、子どもの頃からフランス音楽へのアプローチの中で取り入れていきたい一曲が『妖精のメヌエット』です。