今月、この曲

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武満 徹『小さな空』ミュージックトレード社『Musician』2017年10月号 掲載コラム

 秋晴れのすがすがしい毎日が続きます。日々の忙しい生活で空を見上げる余裕などない私たちですが、空も高くなり美しいうろこ雲が流れて行きます。

 今回ご紹介いたしますのは、『小さな空』です。世界で高い評価をされた日本を代表する現代作曲家、武満 徹の混声合唱のための曲です。この『小さな空』は混声合唱曲の「うた」のなかの1曲です。他に「見えないこども」「○と△の歌」「死んだ男の残したものは」等、合唱愛好人に親しまれる作品が納められています。

 武満 徹は1967年、「ノヴェンバー・ステップス」の発表で、その名前を世界にとどろかせました。その後も世界中の名門オーケストラから作品の委嘱を受け、20世紀の現代音楽の分野で最先端を走り続けましたが1996年惜しまれながら死去されています。

 私がこの曲と出会ったのは25年前の事です。高校の創立記念として日本を代表する合唱団の一つ、東京混声合唱団による『うた』でした。"タケミツ・トーン"とよばれる協和音と不協和音の微妙な絡み合いは多くの作品で聴かれるものです。1980年代に入って、今回紹介するような親しみやすい合唱曲を数多く発表しています。この『小さな空』は難しい作為が全くなくシンプルで美しく、究極のハーモニーを作り上げている音は複雑に絡み合い独自の世界が展開されています。"♪いたずらが過ぎて~"のリフレインでは懐かしさがこみ上げて胸が一杯になります。

 今でも当時の想い出がよみがえり、何故か涙がこぼれます。心の奥に届く『うた』、温かい気持ちになれる『うた』。人の親となり人生の半分を過ぎても、幼い頃母に叱られて泣いた日々を懐かしく想い出します。もう母は遠く、高い所から私を見ていますが、この歌を聴くと母と過ごした遠い昔の事が走馬燈のように駆けめぐります。

 ぜひ、皆さまも日々の疲れを癒すためにお聴きください。きっと昔を懐かしく想い返せる事でしょう。

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