今月、この曲

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平吉毅州「四月の風は花の匂いをはこんでくる」 ミュージックトレード社『Musician』2017年4月号 掲載コラム

 明るい陽射し、爽やかな風を感じ始めると春、何か前向きな気持ちになり、新たな事にもチャレンジしたくなります。優しく、きらきらした季節です。さくら、菜の花、チューリップ、何処からともなく良い香り、今年も春がやって来ました。公園にも庭にも色とりどりのお花が咲き始め、生徒さんたちは入園、入学、進級と輝いています。

 そんな皆が待ち焦がれている春にふさわしい曲、平吉毅州作曲「四月の風は花の匂いをはこんでくる」はデュオのピアノ曲です。情景が目に浮かぶ何と素敵な曲名なのでしょう。まず曲名に日本語の美しさ、共感を呼ぶ情景が感じられ、気持ちが惹かれます。春の優しさ、奥ゆかしさ、そして優しい風を感じ、お花の香り、春の陽の香りまでもが漂ってくるようです。そしてその空気で幸せな気持ちでいっぱいになります。

 セコンドピアノの優しい風のようなメロディに誘われてプリモピアノがユニゾンで加わり、まるで春の景色に囲まれているようです。「皆さん、春、春ですよ」と誇らしそうに歌うお花を、風がそっと包み運んでくれます。やわらかな香り、主張しているような甘い香り、爽やかな香り、葉の香りがプリモ、セコンドのハーモニーの中に色とりどりに飛んでいるようにも感じられます。

 中間部は風とお花のおしゃべりでしょうか? お互いに冬の間の出来事を話しているのかもしれませんね。バスの響き、その音の上に乗る多彩な音、そしてプリモの揺れるような音の動きが淡い雰囲気をだしています。

 園庭や校庭に咲くお花、通学路で見かける可愛いお花、自分で植えたお花の事と生徒さんのお話は尽きません。生徒さんと情景を想像し、話し合いながら練習していける曲でもあります。

 プリモは手の移動がなく初心者でも無理なく弾けます。題名からのイメージを感じて、相手の響きを聴きながら自分の音を乗せていく、デュオならではの喜びも楽しめると思います。皆様のもとに春の香りが運ばれますように。

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