今月、この曲

51
伊福部昭『ピアノ組曲』 ミュージックトレード社『Musician』2014年12月号 掲載コラム

 ♪ドシラ、ドシラ、ドシラソラシドシラ─大ヒットした映画「ゴジラ」のテーマ曲です。今年も残り少なくなりましたが、2014年は「ゴジラ」60歳、そして「ゴジラ」のメロディーを生んだ作曲家、伊福部昭の生誕100年の年です。伊福部昭は、映画音楽の作曲家として有名ですが、一方で民俗的な音楽に造詣が深く、その土地ごとに異なる文化を持つことを理解し、独自な音楽の世界を作り上げました。
 例えば、東日本大震災の時、「チャラン、チャラン」というチャイムが全国中に鳴り渡り、このチャイムに多くの人が助けられました。実はこのフレーズは、伊福部昭の甥の達さんが、伊福部昭が長い年月をかけて完成させた『シンフォニア・タプカーラ』の三楽章の冒頭から「急げ、でも慌てるな」というメッセージ性を感じて、そのフレーズを使いアレンジをして生まれたものなのです。
 さらに、このチャイムを聞いた犬や猫はすばやく逃げ出し、鳥かごのトリも逃げようとしたとNHKが報じましたが、伊福部昭の音楽は人間にだけではなく、動物の脳の深部に訴える普遍的な何かも内に秘めてるのです。
 さて、この度紹介しますのは伊福部昭作曲の『ピアノ組曲』。スペインで活動していたピアニスト、ジョージ・コープランドというアメリカ人から高い評価を得て、外国で初演されました。

第一曲「盆踊」 笛と太鼓が聞こえてきそうです。
第二曲「七夕」 どこかで聞いたことがあるような懐かしいメロディ。美しい響きに心が震えます。
第三曲「演伶」 日本のスケルツォの雰囲気です。
第四曲「佞武多」 ねぶた祭り、狂熱的な行進曲。

 日本書紀や古事記によれば、伊福部昭の家系は、因幡を中心として広く勢力を伸ばした豪族であり、初代は大国主命から始まり2000年もの長い歴史があります。
 そんな太古からの歴史を感じさせる重厚でありながら素朴な日本的な響きを、味わってみてはいかがでしょうか?

【GoogleAdsense】
ホーム > 読み物・連載 > 今月、この曲 > 第51回 伊福部昭『ピアノ組曲』