今月、この曲

08
ミュージックトレード社『Musician』2011年4月号 掲載コラム

 日本のみなさん、こんにちは。寒さの厳しい冬から待ちに待った春がやってきましたね。イタリアでも桜の花を見かけるようになりました。こちらでは春の足音といっしょに、「カルネバーレ(カーニバル)」の仮装行列も楽しそうにやってきます。それが通り過ぎると今度は「パスクワ(イースター)/復活祭」の話題でもちきりです。
 「パスクワ」のシンボルである卵の形をしたお菓子や、鳩の形をしたスポンジケーキ「コロンバ」がスーパーやお菓子屋さんのショーケースにところ狭しと並びます。学校も会社もその期間はお休みになって、ステキなお菓子がテーブルを飾り、家族そろってお祝いをするんです。
 2か月前、ミラノでブルグミュラーが書いた3冊の練習曲集をCD&DVDボックスのために録音しました。この記事をみなさんが読んでくださるころ、ミラノ発のブルグミュラーのボックスが日本に届くと思います。今日は出来あがったばかりの私のCD&DVDボックスから、春らしいお勧め曲としてブルグミュラーのベストヒット曲『アラベスク』を挙げてみました!
 ピアノを習っていて、新学期、ブルグミュラーに進むお子さんも少なくないのでは。今はあまり楽器にさわる時間がない方でも、ブルグミュラーの曲集にはきっと大切な思い出がたくさん詰まっているはず。かく言うわたし自身はいわゆるベビーブーム世代。教育ブームやピアノブームを走りぬけてきた世代です。幼い頃目にした大阪の景色、昭和40~50年代の新興住宅地や公園の風景と「アラベスク」の音楽が重なります。レコード会社の方ともCDボックスについてミーティングをしながら、ブルグミュラーこそ私たち世代のノスタルジーだね、なんて盛り上がってしまいました。
 ピアノを習っているお子さんばかりでなく、子供のころピアノに親しんでいた社会人のみなさんにも大切なおもちゃ箱のような存在。それがブルグミュラーの魅力。曲の美しさは、今弾いてもまったく色あせていません。だからわたしは、愛すべきアンコールピースとして、ブルグミュラーと末永く付き合ってゆくつもり。みなさんも色んなシチュエーションを「アラベスク」でノスタルジックに演出されてはいかがでしょう?

【GoogleAdsense】
ホーム > 読み物・連載 > 今月、この曲 > 第08回 ブルグミュラー25の練習曲より 「アラベスク」