みー子さんのピアノアレコレ

第06回 「アナリーゼってなに?音楽に分析は必要なの?!」

2009/10/02
うん・・・やっぱそうだな・・・ここの展開は属調のト長調に転調してるわけだから、この装飾音の動機はやっぱり・・・ブツブツブツ・・・
おっはよー、まさお!あれ、楽譜見てなに一人でブツクサいってんの?
あ、みー子。オレいま、来年のニャパン・コンクールの課題曲、見てるとこなんだよね。
見てる?楽譜見てても、つまんなくない?ピアノで弾かなくちゃさ。
弾くのは当然だけど・・・え、おまえ、もしかして、自分の弾く曲、ちゃんとアナリーゼやんないわけ?
ア、	アナ、アナリーゼ?なにそれ。新発売?
ぶっ!!マジかよ、おまえ、アナリーゼ知らないわけ?!やばいぜ、それ!
え、・・・べつに、やばくないもん。みー子、こまったことないもん。
やれやれ、まいったね。アナリーゼっていうのは分析だよ、分析。曲をちゃんと分析して、構造をつかんだ上で演奏しないと意味ないって、オレの先生が言ってたぜ。
分析?えー、理科の実験でもないのに、分析?そんなのおかしいよ。だってピアノは音楽じゃん。音楽は感情こめて弾けばそれでいいじゃん。分析って、何を分析すんの?そっちこそ何か意味あんの?
何って、ここはハ長調だけど、ここからト長調に変わったとか、そういうのをわかって弾くのとわからないで弾くのとじゃ、ぜんぜん違うんだぜ!
違う?へーどこか?なにが?どうして?ちゃんと説明してみせてよ。
説明って・・・とにかく大事なんだよ、アナリーゼは!
そんなことわかってなくたって、ちゃんと弾けるんだから!
ならそれでいいだろ。わかんないやつには教える価値ないや!
ふん。なによ、エラそうに。「教える価値もない!」なんて。でも、なんで大事なんだろう。みー子だって、それわかったら、もっと上手くなれるのかな・・・
・・・
ただいまぁキーマン先生!ちょっとお尋ねしまっす!
おかえりみー子さん、はりきって、どうしたの?
あのね、曲を分析するのって大事?何調とか、そういうの。
ああ、アナリーゼのことだね。たしかに大切だよ。
今日学校でまさおに「調がわかって弾くのとわからないで弾くとだと、全然違う!」なんてエラそうに言われちゃったんだけど、一体なにが違うの?
曲のしくみや調を知るためのアナリーゼっていうのは、みー子さんが「自分で自分の音楽を表現する」ために必要な作業なんだ。
うーむ。まださっぱりわかりません。
もちろん、曲をわざわざ分析しなくたって、なんとなく感じたままに弾くことはできるよね。
うん、みー子はいつもそんな感じ。でも別にそれでいいんじゃないの?
感性や感覚も、もちろん大事だよ。でも、勝手気ままにデタラメやっちゃうのは違う。感覚だけにたよっていると、そうなってしまうかもしれないよ。
あらま、音楽が、デタラメに?(それはいけませんわ)
うん。つまりね、言葉を話すときにも言葉使いのルールがあるよね。好き勝手に声を出したり、ただ単語をつなぐだけじゃ、相手に気持ちまで伝わらない。音楽も一緒で、音楽のルールやパターンがあるんだよ。
へぇ!じゃ、そのルールを使ったほうが、人にも伝わる音楽になるのね。
お。わかってきたじゃない。例えば、和音。ドミソから、ドファラに行くと、よく「広がり」が感じられると言われているんだ。だからその上に付くメロディーも、「広がり」を持たせるように弾くといいよね。
すこし明るい雰囲気でひいたりとか?
そう。基本のルールがわかれば、工夫はいろいろ自分で考えられる。例えば、短いメロディーが2回繰り返されるっていうパターンもよくあるよね。
あるある。みー子が大好きな「トルコ行進曲」とかも!
そんなパターンのときには、2回目には少し変化をつければ、聴いてる人があきないよね。2回目を「やまびこ」みたいに小さく弾くとか。
そっか。ただ繰り返すだけなら、退屈だもんね。
そういう工夫は、みー子さんが自分で「ここは2回でてくる」とか、「あとで繰り返されるところ」とか、ちゃんとわかっていないとできないよね。そのために、前もってやっておくといいのがアナリーゼ=分析なんだよ。
パターンとかを見抜いておくってことかしら。
そう。和音の動きとか、リズムやメロディーのパターンが、どこにどんな風に出て来るのかな、ってね。そんなふうに分析をしておけば、変化をつけたり、自分でこうしてみよう、って決められるようになるんだ。
だから知ってるのと知ってないのとじゃ、「ぜんぜん違う」ってことになるのかぁ!
そうだよ。ただ何調で何の和音でっていう文責結果を記号にして並べるだけで終っていたら意味がないんだよ。アナリーゼは文責のための文責じゃない。
弾くために分析はあるんだ!
よく誤解をして、分析は理屈っぽい作業なんじゃないかと思いがちだよね。
うん、そうかも。みー子は、感情と反対なのが分析かなって思ったよ。だから、つまらないものかと思ってた。
そうじゃないんだ。たとえば曲を弾いていて、「不思議な雰囲気だな」とか「悲しい感じの音がする」とか感じることがあるよね。分析すれば、それが「どうしてか」がわかっちゃう。
えっ、そうなの?
分析してみたら、「不思議」に感じるところは調がとつぜん変わっているとか、「悲しく」感じるところはリズムがおだやかになっているというのが見えてくる。だから、感じたことを分析が説明してくれるんだね。
すごーい!分析って、べんりだね!みー子、これから少しずつ分析もできるようになりたいな。キーマン先生、手伝って!
オッケイ。さっそく今弾いている曲から、アナリーゼやってみよう!
今回の隠れキーマン先生
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取材・絵と文:飯田有抄

プロフィール:音楽ライター、翻訳家。1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科修士課程修了。マッコーリー大学院翻訳通訳修了。ピティナ「みんなのブルグミュラー」連載中。

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