新型コロナウイルス感染症拡大による2月下旬からの混乱の影響で遅れておりましたが、2019年度指導者賞・新人指導者賞受賞者を発表しました。合計580名の先生方が指導者賞を、44名の先生方が新人指導者賞を受賞されました。おめでとうございます。
ピティナ指導者賞は、2つの基準で(年2回)、集計が行われます。
- 夏基準:
- 当年度のコンペティション指導実績による指導者賞
- 春基準:
- 当年度の生徒のステージ参加と指導者自身の自己研鑽による指導者賞
右下図のとおり、どちらの基準に照らしても受賞される方、どちらかの基準で受賞される方、様々ですが、ご覧のとおり、春基準で受賞される方のほうが少なく、そのぶん稀少なものとなっています。
春基準の指導者賞・新人指導者賞 受賞者253名を見る(50音順)
2019年度 指導者賞・新人指導者賞受賞者(夏・春基準合わせて)総覧
ピティナでは、ステージを通して生徒とともに学び、自らも研鑽を重ね、一生を賭けて人間教育に携わることのできる「ピアノ指導者」という仕事の素晴らしさを、春の基準として表現しています。特に今年は、不測の事態によりコンペティションの多くの部門が中止となり、「課題曲チャレンジ」や「オンラインステップ」などの新しい試みも活用しながら、生徒さんと自分の学びを止めずに歩み続けるかが問われ、春基準の意義を再確認する年となっています。
生徒さんのステージを見守り、成長を支え、自らの指導力を磨き続けてきた「春基準」での4名の受賞者の先生方に、お話を伺いました。
何かを一人で頑張る力を生徒一人一人に身につけさせるために、そして自立心や自信を育てるために、年間を通してステージの活用をレッスンの中に取り入れています。コンクールなどのステージを生徒に勧める際は必ず参加することの目的や効果を伝えるようにしています。そうすることによって「出ない...」という生徒はおらず、みんな喜んで参加しています。コンペでもステップでも生徒を沢山出せば出すほど、生徒の演奏に対する評価や講評を通じて、自分自身の指導の傾向、弱いところ、足りないところの発見につながっています。また、審査員やアドバイザーの聴き方について知る機会にもなっています。楽譜の読み取り方、アナリーゼなど、そういう聴き方もあるのかという勉強になります。
普段から「聴く」も「奏でる」もどちらも大切と思っています。セミナーを聴いて終わりではなく、自分で音に出すところまでが学びと思っていて、自分自身もレッスンに通ったりステップのステージに連弾や室内楽で参加したり。音に出せてはじめてセミナーで聞いたことが学びになると思います。
コンクールやステップなど1年間の開催予定表と『あなたの目標のステージはなんですか?』と記した用紙を年の初めのレッスンで生徒に渡して、生徒一人一人に参加したいステージと一年の抱負を書いてもらうということを毎年続けています。例えば「7月のステップで応用1、12月バッハコンクール」というふうに具体的に記入してもらい、その用紙を教本の最初のページに貼ります。
ステージはピアノ上達の特効薬。うまく活用すれば技術的にも上達できるし、気持ちを高めモチベーションの維持にもつながります。ステージに向かうまでの様々な過程や葛藤はあらゆる面で生徒を成長させてくれます。また、ステージ参加を通じてこちらが思っていた以上に生徒の力が伸びることもあります。これが精いっぱい...と思っていてもさらにそこからステージが育ててくれることがあります。発表会のプログラムに生徒それぞれのステージ回数も記載しています。ステージ経験がピアノの上達度に結びついていることが他の生徒にも伝わり刺激になっています。
ピアノ学習において、「もっと高い点を取りたい」「もっと難しい曲が弾けるようになりたい」など、つい上を目指してしまいがちになりますが、ステージでは、できる事の種類が増える、といった横方向への「成長の拡がり」に気づくことができます。
5歳の子どもでも、70代の大人の方でも、ステージで弾いている姿を見ると、「今、この人にしか出来ないことだなぁ。すごいなぁ。」と、ただただ尊敬し、謙虚な気持ちになります。
レッスンでは、改善点を中心に見てしまいますが、ステージでは、本人の隠された能力、良いところを見つけることができる点も、ステージならではの魅力だと思います。
とは言え、ステージを目標とすることが難しい現在の状況ですので、動画撮影で、スケール検定への準備を行っています。動画を撮影するということから、ステージとはまた違った緊張感があり、学べることも多く、新しい発見もあります。
生徒それぞれの一年間のレッスン計画を立てると、大体「この生徒は一年でこのくらいまで進みそう」ということが見えてくるので、その見込みの曲を自分で弾いて予習しています。自分で弾いてみると、自分に足りないところが見えてくるので、それを補うように、eラーニングなどを利用して学んでいます。
1回のステージ経験の効果は大きく、本番の次のレッスンで生徒が大きく成長していると実感しています。ステージには演奏者以外誰も居ないので、「自分で何とかする」という行動力や判断力が付き、自立に繋がると思います。大人になれば必然的にしなければならない「自分で責任を持つ」ということが学べる場でもあります。
現在は、コロナの影響でステージ経験が得づらい状況ですが、例えば、コンペが課題曲チャレンジに変わったとしても、「曲をきちんと仕上げる」という点において、その目的は不変のものです。目的に向かって準備をし、責任を持って、成果を発表するということには、絶えず取り組んでいたいと思っています。
私自身、セミナー受講時の「先生の言葉」や、テレビやネットを見ている際も、「はっとする言葉」を聞いた時にメモして、言葉のストックをするように心がけています。今の瞬間、その言葉ストックの中からひとつ選ぶとすると、最近テレビで見た志村けんさんの言葉で、「成功の鍵は、地味なところにある」ということ。すべては準備が大事、日々の積み重ねこそが大事であり、ピアノ学習にも通じることだと思います。ステージへ向かう準備と本番の経験から、生徒と自分の学びを積み重ねていきたいと思います。