新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、ピアノ教室に移動して通わなくても、遠隔でレッスンできるよう準備を整えておく必要性が、にわかに注目され始めています。
ピティナでは、2月26日以降、全国の会員2000名(無作為に抽出)にアンケートをお願いし、340件の回答を得ました。今回の事態に対して、レッスンの別時期への振替だけでなく、オンラインをうまく活用し、レッスンとしてカウントすることが定着するよう、情報提供を行いたいと考えています。
- 2020年4月以降もオンラインレッスンに関するレポート・記事を特集しております(「Stay at Home, Keep on Music」)。ぜひご覧ください。
- 3月6日より、ピティナ教室紹介にて「オンラインレッスン可能」ということをマイページ経由で表示できるようになります。ぜひご利用ください。
- ピティナでは、引き続きオンラインレッスンについてのアンケートを受け付けております。
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インターネットによるビデオ通話サービスなどを用いて、先生と生徒が同じ場所で会わずに遠隔でレッスンすることです。
先生、生徒の両方に、スマホ、タブレット、PC、WEBカメラなどのいずれか1台ずつが必要です。そのほか、インターネット通信環境、通話サービスのアプリ(多くは無料で利用できます)に加え、機材を支える三脚や台などの器具があると便利なこともあるようです。
オンラインレッスンを使ったことがある会員が4割、という回答については、回答を寄せて下さった方は使っている比重が高いことによるので、実際にはもう少し低いのではと推測できます。
1 | 今回の新型コロナウィルス感染症の拡大の対策として(85票) |
2 | 遠方(引っ越し、帰省、国内、海外、離島、遠方だがどうしても受けたい先生、出張中/往復の時間と交通費の節約)(51票) |
3 | コンクールや発表会、受験前など週1回では足りない時の補講(追加レッスン、仕上がり確認、不安解消)(39票) |
4 | 指導者または生徒、家族が風邪、インフルエンザ、学級閉鎖、体調不良で対面できない、送迎ができない時のため(28票) |
5 | 指導者または生徒のスケジュールの都合でレッスンができない時のため(振替えの枠がない時/振替の手間がない)(25票) |
6 | 時間の有効活用(生徒、指導者ともに多忙の中、1枠でも多くレッスンするため、生徒と保護者の負担軽減、夜間など空いている時間を使える)(21票) |
7 | どんな状況でもレッスンを続けることが大切だから/継続していたことを途切れさせないため/モチベーションの維持(13票) |
8 | 練習中の生徒の疑問にすぐに答えてあげたい、家の練習のサポート(12票) |
9 | 災害、台風、荒天の際、生徒の安全を確保するため(10票) |
10 | 成人男性のレッスン、外出が難しい生徒のレッスンなど、受け入れられる幅が広がるから(7票) |
11 | 時代の流れ、生徒の様々なニーズに対応、不測の事態への備え(6票) |
12 | 高齢者の移動の負担を減らす(4票) |
今回の感染拡大に大きな関心と危機感が寄せられていることが分かります。また、遠方、海外に対しての利用に加え、生徒さんのさまざまな事情に応じて、積極的にオンラインを使おうという動きがこれまでも既にあったことがわかります。
圧倒的に多かったのは、LINEです。保護者・ご家庭の利用率が高いことからの帰結でしょうか。まだ今回の記事では、これらの具体的な比較には踏み込めませんが、会員のインタビューを参考にしてください。
以下の(A)と(B)の2つに大きく分かれました。
リアルタイムで双方向レッスン
(LINEビデオ、FaceTime、Skype、zoomなど)(62票)
生徒が録画した動画や音声を送信して、アドバイスを返す
(LINEやメールへの添付、Youtube限定公開、ボイスメモ)(101票)
現時点では、動画・音声をあらかじめ撮っておくという利用法のほうが多いようです。 具体的な活用方法について下記の通りご紹介いたします。
- リアルタイムと録画送信とを場合により使い分けている
- 通常のレッスンの枠にリアルタイムレッスン(対面できない時)
- 録画を送っておいてもらい、空いた時間に返信
- 録画動画を事前に送信し、それをもとにリアルタイムレッスンを行う(ビデオ通話、音声通話)
- 子どもだけでレッスンに来る保護者へ、動画を送信(練習のポイントなど)
- 演奏動画(通し演奏)を送信(コンクール前など)
- 気になる部分、質問がある部分の動画を送信
- 演奏動画+楽譜を送信(どこにいても確認できる)
- ビデオ通話でお互いの顔を見てコミュニケーション(同行できない本番前/安心感)
- お手本動画、練習サンプルの送信(家での練習サポート)
- ドリルや基礎的な課題のチェック、譜読みの確認
- LINEやメールなどの文面で
- 指導者も動画を撮影して返す
- 電話(動画を見ながら通話)
- 書き込み楽譜の送信
- ビデオ通話
- 対面レッスンとオンラインレッスンを組み合わせている
- 自己都合の欠席は振替えの代わりに動画を送信すればアドバイスする
- 保護者が携帯で撮影
- 目的に応じて、手や全身、顔を写す
- 設置型自撮り棒を使用
- スピーカーを使用
オンラインレッスンの長所
1 | 時間の有効活用(46票)
夜遅く/時間が不規則な人などレッスン可能な時間帯の幅が広がる、レッスンに空きが出ず振替なくて済む、動画送信だとお互いの時間を合わせる必要がない、往復や待ち時間などがなく時間節約 |
2 | 場所を選ばない(44票)
遠隔地のレッスン、引っ越しでも継続、帰省や出張でも休まなくて済む、全国展開可能、同じ先生の指導を続けて受けられる |
3 | 自宅での練習サポート(29票)
何度も再生して確認できる、録画するために生徒が練習する、家での練習の仕方をアドバイスできる、家での練習のモチベーションアップ、レッスン日以外にピアノと向き合う機会を増やせる、不安な点を1週間持ち越さない |
4 | 長期でレッスンができない時に休会、退会せずにレッスンを継続できる(24票)
レッスン中止による収入減防止、ピアノ離れ防止、モチベーションの継続(コロナ、災害、妊娠出産、術後...) |
5 | 感染症対策(直接接触を避ける)(17票)
コロナ、インフル、風邪などの時にお互いに/他の生徒に気兼ねせずレッスンできる |
6 | 生徒、保護者の負担の軽減(13票)
送迎、交通費、移動時間の負担を減らすことができる |
6 | 生徒の練習環境が理解できる(13票)
送生徒の家のピアノや椅子の高さ、足台、調律などの練習の様子が分かり、アドバイスしやすくなる |
8 | 多様なライフスタイルに対応、様々な事情に対応可能(12票)
事情により通えない人、親の送迎が難しい人、多忙な人にも対応しやすい |
9 | コミュニケーションがとれる(6票)
レッスン以外でもつながっている安心感、お休みの間のコミュニケーション、何もしないよりはずっといい |
10 | 生徒の安全確保(5票)
夜遅いレッスン、荒天や災害時、体調不良で無理しない、送迎が無理な時 |
オンラインレッスンの短所
1 | 生の音でないので、音色の判断、音楽的指導が難しい(89票)
音色、響き、強弱、タッチ、細かいニュアンスなど。指導できる範囲に限界がある。耳が育たない |
2 | タイムラグがある(32票)
一緒に演奏、歌う、リズム打ちなどができない |
3 | 実際に手や身体に触れて指導できない(29票)
指の形、姿勢、脱力、身体の使い方、ペダルなど |
4 | コミュニケーションが取りづらい(26票)
伝わりにくい、細かいことが言えない、口を挟んでも聞こえない、質問しづらい、相手の理解度が分からない、表情や様子、気持ち、反応が分からない、文字で伝わる限界 |
5 | 端末や通信環境に左右されて安定しない (16票)
音質、クリアに聞こえるか、音飛び、フリーズなど。生徒により条件が異なる |
6 | レッスン室のピアノが弾けない (10票)
家にピアノがない、電子ピアノ、アップライトなど。グランドピアノに触れる機会がなくなる。 |
7 | 息づかいが伝わらない (9票)
呼吸、空気感、拍子感、熱意、、 |
8 | 画面で見られる範囲が限られる (8票)
顔、手元、全身、楽譜のいずれかになってしまう。画面の切り替えに手間がかかる。画面が小さくて見づらい |
9 | 指導者の時間が無制限になり負担 (6票)
時間と場所を選ばないといつでも追いかけられる |
9 | 機械の操作や設置が難しい (6票)
機材の選定、セッティング、操作、慣れていない、生徒側への説明が難しい、ハードルが高い |
10 | 保護者の協力を求めなければならない(5票)
自宅を撮影、通信環境、機材の設定、撮影、送信の手間 |
11 | 自宅だと生徒の緊張感、集中力が保てない(3票)
自宅を撮影、通信環境、機材の設定、撮影、送信の手間 |
11 | レッスン代をもらいにくい(3票)
動画への返信に対してレッスン料の設定が難しい |
12 | 生徒の楽譜への書き込みができない(2票) |
16 | 動画送信ではミスしやすい所が分からない(1票)
一番よい演奏を送ってくるので何度もミスする箇所が分からない |
16 | データ容量が大きい(1票) |
16 | 経験が少ないので自信がない(1票) |
実際にオンラインレッスンを使われている方、5名にインタビューしました。ここでは主に、「動画・音声送信型」ではなく「リアルタイム双方向型」をとりあげています。皆さんが異口同音におっしゃるのは、「先生と生徒の信頼関係が前提」ということでした。
オンラインレッスンは、自分にとっても生徒にとっても、生活の中の時間を効率よく使えるのが強みです。今回のような感染症、災害もあるかもしれないし、そもそもライフサイクルの中で、互いに育児、介護、といった問題は避けられませんので。
譜読みくらいの段階であれば、十分レッスンが可能だと思います。私の場合は、生徒にスマホやPCを鍵盤の高い方の、斜め後ろに立てかけてもらい、手の動きだけなく体の動きまで映るようにしてアドバイスできるようにしてます。ピアノの上や、鍵盤の横に置くと振動が伝わって揺れたり倒れたりするので、テーブルや譜面台を用いてセッティングしてもらいます。楽譜はあらかじめスキャンして受け取ります。
当然のことながら、ある程度音楽的な内容をレッスンする段階では、同じ空間にいることが大事なので、うまく併用するのが大事ですね。
出張レッスンがメインだった時があるので、オンラインの効率の良さには助けられました。家にいながら、あるいは出先であっても、時には、自分の手元にピアノがなくても、アドバイスするのは十分可能です。私はステップのアドバイザーで金曜日が移動日だったりしますが、滞在するホテルからレッスンしたこともあります。また、時間になったら通話を切ればよいので、通常のレッスンより臨機応変に対応できるのが便利ですね。
ただし、譜読みの間違いとか、生徒の弾いている音の質が、なめらかであるかどうか、くらいまでは分かるんですが、細かい音色はもちろん分かりませんし、何といっても、目の前で実際に先生が演奏しながら動きやコツを伝えるということは難しいです。先生がピアノで出した音が、自分の音とは違うんだということが理解できるくらいまでには、基礎や信頼関係ができてからオンラインをあくまで補助的に使うのがよいと思います。
機材については、いろいろ試しましたが、スマホに落ち着きました。生徒は鍵盤の右手側から、私は左手側に立てかけて、画面を上下に2分割させてレッスンします。スマホは、横にしたほうが置いたときに安定します。
レッスンの満足度は高かったです。カメラで見られるという高揚感でしょうか、子供にとっては新鮮でワクワクするようです(笑)。うまく弾きたいと思うのか、張り切ってるのがわかるし、ミスすると「もう1回」とやり直していました。普段は人の話を聞くのが苦手な子であっても、ビデオ通話なのでしっかり真剣に聞き取ろうとするのが、意外な副産物でした。指導者にとっては、生徒の自宅での練習環境を垣間見れるというのも、とても意味のあることではないでしょうか。
オンラインレッスンと比較すると、指導者である自分が、普段は生徒の身体に触って説明していることに気づかされます。オンラインだと触れないで教えるので、自分のレッスンにおける説明力、言語力をあげることになります。
また、自分が普段、楽譜に対してぱっと即座に行う書き込みを、生徒が理解し自身で楽譜に書き込ませないといけないので、時間はかかりますが、生徒の理解力はあがることになると思います。
レッスン料は、通常レッスンと同額をいただいています。オンラインレッスンだから伸びない、仕方ない、という妥協はせずに、取り組んでいます。
何か所からでも映像をつなげて、他のアプリにはない、さまざまな機能を持つZOOMを利用しています(無料版では、一対一は時間無制限、3名以上になると40分以内の制限あり)。昨日(3月3日)は、3人の生徒とつながって、オンラインレッスンを行いました。
これまで、複数の家庭が参加するコミュニケーションの場は特にありませんでしたが、コロナウィルスのことをきっかけに、このような場が持てて大変意義を感じています。昨日もみんな笑顔でしたよ。
オンラインの長所としては、曲の1か所にフォーカスしたり、手の動きを拡大したり、細部にこだわった中身の濃いレッスンができるような気がします。
もちろん、生のレッスンが基本なのですが、こうした危機を乗り越えて、教室がひとつになり前進できるよう、今、できることをやっていきたいと思います。慎重に、でも速やかに対応しなくてはいけない。まさにピアノの先生が試される時期だと思います。
ピティナ会員がオンラインレッスンについて知りたいこと、悩んでいることをまとめました。ピティナでは引き続き実態調査、および、さまざまな利用事例、可能性について、解説・紹介していきます。
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①どんなサービスがあるのか?サービスの比較。各サービスの特徴や使い方。
- (必要機材、使いやすさ、音質、画質、通信の安定、リアルタイムに向いているもの、タイムラグ、費用、先生側と生徒側の操作、限界)
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②導入に必要な機材、設備、アプリ、通信環境、費用、設定、準備(指導者側と生徒側の両方に何が必要?)
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③音質や通信環境をよりよくする方法(スピーカー、画面、マイクなど)
- →新型コロナの影響でレッスンができなくなり、今すぐにでもオンラインレッスンに取り掛かりたいが、「何を使えばいいか」「何が必要なのか」「どういうレッスンをすればいいか分からない」という意見が多かった。
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④実際にどのように使っているのか。効果的な活用法。(カメラのアングルや設置方法、持たずに演奏や話ができる置き方やお勧めのスタンドやマイク。動画の写し方、コツ。照明。双方向のコミュニケーションの取り方)
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⑤実際の具体的なレッスン方法を見てみたい。(リアルタイム/動画送信)
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⑥音質や身体面の指導の難しさ、コミュニケーションや通信の問題に対して、どうカバーして指導したらよいか?伝え方、言葉の選び方、モチベーション維持の工夫。
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⑦通常のレッスンとオンラインレッスンの組み込み方。
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⑧メリットとデメリット。起こりがちなトラブル。ピアノレッスンに取り入れる際の注意点。
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⑨オンラインレッスンのレッスン料はどう設定?(対面レッスンと比べて/リアルタイムレッスンの場合/補助的な動画送信へのアドバイスの場合/レッスン料をいただけるレベルの指導ができるのか/どこからレッスン料を発生させるのか)
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⑩レッスン料の支払い方法(遠方でオンラインのみの場合など)
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⑪実際にレッスン経験のある先生のリアルな感想、意見が聞きたい。効果を感じているか?
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⑫生徒さん、保護者の反応や意見を聞きたい。(経験のある人の感想/生徒側の不安や抵抗感/保護者への負担/保護者への理解の求め方)
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①レッスン時間の線引き(レッスン外での動画送信への対応でプライベートな時間がなくなる/どこまで対応するか)
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②補助的に始めたのでレッスン料をとりづらい
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③実際の音質と違う、細かいニュアンスが拾えない、機材に依存する、などの問題から、双方とも満足したレッスンができないのではないか
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④生の響き、表情、空気感、感性、筋肉の動き、脱力、息遣い、コミュニケーション、生徒の気持ちを察知する、などができない。
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⑤生徒の耳が養われない。
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⑥動画をSNSなどで拡散や悪用されないか心配。
ピティナでは、引き続きオンラインレッスンについてのアンケートを受け付けております。
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