音楽に、一生涯通して向き合っていきたい。ピアノを演奏する多くの人が、心に持っている願いではないでしょうか。けれど、社会人として仕事や家庭とピアノを両立するのは、とても大変なこと。
ピティナでは、多様化するライフスタイルのなかでピアノを追究している方々を「グランミューズ」と銘打って、応援しています。
社会人として、グランミューズとして、ピアノを続けていくにはどうすればいいのか。そのヒントを、コンペティション参加者の方へのインタビューやアンケートを通して探しました。
新企画「グランミューズ・サロン」の第1回お申し込みも開始します!
⇒定員により受付終了いたしました(2019/10/18 17:50)
他のひとは、どんなふうに練習しているのだろう?気になるけれど、なかなか直接は聞きづらい・・・そんな日々の練習や曲作りについてのお話を、2019年度ピティナ・ピアノコンペティション・グランミューズ部門全国大会に出場されたピティナ会員の皆様に教えていただきました。
主な練習場所はどちらですか?
主に自宅です。実は自宅にある楽器は電子ピアノなので、家の近くの楽器屋さんでグランドピアノのレンタルサービスも時々利用しています。
練習時間はどのようにして捻出されてますか?
会社員として働いており、平日の夜には、30分から1時間くらいの練習時間を取っています。「お風呂のスイッチをいれて、沸くまで」というのがルーティン。30分もすれば沸いてしまうのですが(笑)、ルールを決めることで、毎日ピアノに触れられるよう心掛けています。
決まって練習するエチュードはなく、その時に取り組んでいる曲にマッチした練習曲を考えています。たとえば今年のコンペティションで演奏した「ハンガリー狂詩曲 第13番」はイ短調とイ長調のパッセージが出てくる曲なので、同じ調性のモーツァルトの曲を弾いたりしました。いま取り組んでいる英雄ポロネーズには「筋力」が必要そうだと思い、ハノンを弾いてみています。
どのように曲作りしていますか?
コンクールが終わったら、早速曲を決めはじめて、11月頃には曲目を確定しています。 実は私は今は先生についていないんです。先生がいない中でどう曲を作っていこうか考え、YouTubeなどで様々な資料を調べるようになりました。ハンガリー狂詩曲のために実際リストが見ていたとされるロマの音楽や舞踊の動画を検索して、ダンスの足運びなどをみながら、「リストはどのように作曲に活かしたのだろう」と想像を膨らませました。
弾き合い会には参加されていますか?
お友達のピアノの先生の発表会におじゃましています。コンクール前には弾き合い会にも結構参加していますね。月に2回くらいでしょうか。浜松から名古屋にかけては、弾き合い会が盛んな地域だと思います。先生につかずにピアノを続けているひとには、良い地域かもしれません。 弾き合い会の参加者は、大人になってピアノを始められた方からコンペティションに参加される人まで、さまざま。大人同士ですから、激しく批判し合うということはないのですが、逆にコメントが欲しいなと思ったときには、自分から「どうだったでしょう・・・」とやり取りさせていただくことも。それと、会社にたまたま、ずばずば意見を言ってくれる知人がいて、ありがたいです。
モチベーションについて
音楽大学を卒業してから10年経って、考え方が変わってきました。音楽大学には、「難しい曲をいかに完璧に弾くか」を追求してしまうスポーツのような空気がありました。いまは、ショパンは何を想い、考えて、そのような楽譜を書いたか。そうした一つ一つから、音楽そのものに触れたいと思っています。
そのために情報を調べるだけ調べて音楽に活かし、聴いて下さる方に「面白いな」と思っていただける演奏を目指しています。そうして作った音楽を、専門的な先生方に見ていただける場として、コンペティションにも意欲的に参加しています。 グランミューズ部門は、ソロ部門と違って「音楽を専門をしていく」という使命感から自由ですね。「真剣すぎる演奏」を少し意識的にやめてみる、そしてコンクールのステージ上であっても音楽を愉しみ、喜ぶことが、実はとても大切なんじゃないかと感じています。
主な練習場所はどちらですか?
自宅にはグランドピアノがあるのですが、転勤族なのでなかなか自宅に戻れません。転勤先にハイブリッドピアノを入れて練習しています。たまにネットで探したスタジオで練習していますが、いまの転勤先での定まったスタジオはまだ見つかっていません。
練習時間はどのようにして捻出されてますか?
毎日ピアノに触るよう、平日出勤前15分と、寝る前に少しです。仕事のあいま、知らない間に手が動いていることもあります(笑)。指のイメージトレーニングですね。休みの日も、1~2時間時間を取るのがやっとです。ルーティンの練習曲というのは特になく、目指す曲を中心に据えて数曲を一生懸命弾いています。
どのような曲作りのスケジュールですか?
先生と相談しながら、主に発表会やコンクールを目標にしながら半年で数曲を仕上げています。
弾き合い会には参加されていますか?
弾き合い会には誘われて、たまに参加することがありました。弾き合い会は、積極的にやっている方と、そうでない方がいますよね。東京に戻れば知っている集まりはあるのですが、転勤先の地方ではなかなか難しいです。地方での情報交換や交流の場は、まだまだ不足しているように思います。
モチベーションについて
じつは姪がピティナっ子で、コンクールで頑張っているんです。そこから刺激を受けて、自分も2年半前にレッスンを再開しました。そういう良いきっかけをこれからも大切にしたいです。 そしてピアノを再開してみると、コンぺティションへの参加がモチベーションの維持につながることに気がついて、場慣れの意味もあって去年からどんどん受けるようになりました。時間がなくても諦めず、少しでもピアノを触って感覚を落とさないように、と思っています。
主な練習場所はどちらですか?
主に自宅です。静音ピアノを使っていて、コンクール前にはスタジオも使用します。
練習時間はどのようにして捻出されてますか?
平日の夜、寸暇を惜しんで。暗譜を克服するために電車のなかや職場の昼休みに譜面を読むことも。ルーティンとして、バッハの平均律とショパンのエチュードをさらうことがあります。
どのような曲作りのスケジュールですか?
曲によって様々です。半年前くらいまでに暗譜していることもあれば、一週間で仕上げていくことあります。
どれくらいの頻度でレッスンにいっていますか?
実はほとんどレッスンにいっておらず、ほぼ独学です。
弾き合い会には参加されていますか?
クローズドなピアノの仲間たちとの試演会に参加しています。一度に5~6人くらい参加する会で、3人弾くごとにディスカッションという流れです。信頼関係のある仲間だから言えるような、本音のディスカッションです。ステップも含めれば、ひと月に一度くらい人前で演奏する機会を作るようにしています。
主な練習場所はどちらですか?
自宅です。ハイブリットピアノを使用しています。県外での本番の際には、スタジオを借りるようにしています。
練習時間はどのようにして捻出されてますか?
午前中、家事が終わったあとですね。今年は一日20~30分取れれば良い方だったかもしれません。ツェルニーの30番とショパンエチュードを時々。本番前にはその曲の練習に集中しています。
どのような曲作りのスケジュールですか?
じっくり1曲を1年くらいで仕上げています。夏のコンペティションが終わったら、次の曲を少しずつ譜読みしていき、12月にある先生の発表会までに1回仕上げています。その後少しずつ微調整していくようなイメージです。
弾き合い会には参加されていますか?
ステップ中心です。あがり症の克服のために、年に2~3回参加しています。
2019年度のコンペティションで実施した「参加者アンケート」には、グランミューズ部門参加者より22件の回答がありました。アンケートの中身は十人十色。その中から、数多く寄せられた回答や、印象的な回答をご紹介いたします。
- 音への集中・丁寧な練習
- 9件
- 練習時間の捻出と効率的な練習
- 5件
集中力を高めて、メロディーラインや和音の響き、音色を高めていく意識についての回答が最も多く寄せられました。また練習時間の捻出についての回答も5件。「今日の目標を決めて、効率のよい練習をしています。明日の課題も決めて終わります。弾いていないときも歌ったりイメージ作りをしています。」といった具体的な回答もありました。
- ほかの人の演奏を聴く
- 20件
- 作品の勉強をする
- 11件
- 作曲家について勉強する
- 10件
「ほかの人の演奏を聴く」が最も多い回答となりました。また自由回答欄より「ヨガ・ピラティスをする」「友人や家族に聴いてもらう機会を作る」などのご回答をいただきました。
- 自分で決めた
- 16件
- 先生の推薦で決めた
- 6件
自分で決めた方が先生の推薦で決めた方を上回りました。「初めて聞いたときに、メロディーの美しさに惹かれ、弾いてみたいと強く思ったから。」「自分がこの曲を弾くといつも全身に力がみなぎってくる大好きな曲だから」など、自由曲での参加が可能なグランミューズ部門らしい曲への思い入れが伝わってくる回答が寄せられています。昨年のコンクールで他の方が演奏されているのを聴いて、曲を決めた方も複数人おられました。
- 大人に対しても真剣に指導をしてくれるところ
- 6件
多様な回答が寄せられた質問項目です。なかでも複数の回答があったのは、大人に対しても真剣な指導をしてくれる、という点。「大人に対しても真剣勝負のレッスンです。」「ようやく先生と対話をしながら取り組めるようになったように思います。大人にも容赦ないです」。その他、「仕事との両立した継続のためのレッスンを意識してくださる」「明るく親しみやすい人柄で、発表会後の打ち上げでは初対面のひととも打ち解けられる雰囲気を作ってくださる」といった回答が寄せられました。
相澤聖子先生は、長年グランミューズの方を数多く指導されているエキスパート。「元祖グランミューズ向けステップ」としても知られる青山地区ステップの代表もされています。
社会人のためのピアノ・レッスンを追究してきた先生に、指導者目線から見えるグランミューズのありかたについて、お話を伺いました。レッスンに通っている方も、そうでない方も、ぜひご覧ください。
社会人の方は限られた時間の中で、いかに練習時間やレッスン時間を捻出するかをそれぞれのライフスタイルの中で真剣に考えていらっしゃいます。
昔はステージで演奏会を開くのは音大卒の方ばかりでしたが、現在ではその縛りはありません。どなたでも演奏会を開くことができますし、コンクールにもどんどん参加できます。
少し前まで、大人の方を教える先生はあまりいらっしゃらず、「今からいくら練習しても上達はしない」と先生に言われたという方もいらっしゃいました。
でもそのようなことはありません。確かにテクニック面では限界があるかもしれませんが、それはプロでも同じことです。音楽を表現するためのタッチはいくらでも磨くことができます。
珠玉の音を奏でられた時の喜びを感じられるような練習を積んでいただきたいと思っています。
聴いてくださる方々の心に届くようなピアノが弾けたら素敵ですね。
演奏する上で、練習法や身体の使い方を間違えて腱鞘炎等になってしまう方も結構いらっしゃいます。正しい奏法で演奏活動されることは、健康にも良く若さを保つ秘訣にもなります。
演奏の技術、表現等を伸ばしていらっしゃる方は、オーソドックスな勉強をしています。ぜひ、効率的な練習法、自然な奏法で練習を重ねてください。
ピティナ・ピアノコンペティションのグランミューズ部門には、年齢や音楽学習歴に応じた各種のカテゴリーが設けられていて、ピアノの勉強を生涯続けようとする大人の方々にとって目標づくりの上で、ピアノを生活の一部として取り入れやすい環境を作ってくれています。またステップのグランミューズ・ステージでは、同じ志を持つ仲間と出会えるので、お互いの士気を高め合えるのも良い点ですね。
グランミューズのいっそうの発展を目指して、ピティナでもいろいろ企画が進んでいるとのことで、期待しています。
桐朋女子中・高等学校講師。桐朋学園大卒。ピティナ・コンクール運営委員会委員。青山ステーション代表。ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会審査員。日本クラシック音楽コンクール全国大会審査員。ベーテンピアノコンクール全国大会審査員。
社会人としての生活と、ピアノ演奏を両立させるヒントについて、インタビューやアンケートを通して、探してきた本企画。ですが、まだまだグランミューズの方がどのようにピアノライフを過ごしているのか、ピティナでは情報を求めています。今後の企画や運営の改善のため、下記のアンケートにご協力いただけますと幸いです。
アンケートフォームはこちら来年より、グランミューズ向けの新企画「グランミューズ・サロン」が始動します。第1回のお申込みもスタート!
ちょっとした弾き合いの場で楽しく人前でのリハーサルをしてみたい、ピアニストの感想を聞いたり交流をしたい、そんな方のためにコンサートホールとは違った身近な距離で、温かい時間を共有できる大人のサロン、はじめます。
木米真理恵/ピアニスト。8 年半の留学を終えて完全帰国しました。東京音大付属ピ演卒、ポーランド国立ショパン音大修士、同研究科修了及びイモラ音楽院(伊)卒。2017 年度より昭和音大及び同附属音楽教室講師。
概要 | 愛好家、アマチュアが集うピアノの弾き合い会。批評や審査の場ではなく、互いに質問しあって楽しく語らう。ピアニストは演奏について助言したり、自身も演奏。参加者は、高校生以上~年齢制限なし。 |
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後援 | ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会) |
スケジュール | 2020年1月26日(日)午後 |
詳細 | こちらをご覧ください |
今年はHakujuホールでの開催になります。2019年度に活躍されたグランミューズの皆様の珠玉の演奏を聴きに、お運びください。
日程 | 2020年2月15日(土) |
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会場 | Hakuju Hall(東京・代々木) |
出演 | グランミューズ部門上位入賞者 |
チケット | 11月10日頃申込開始予定 |