<ピティナ50周年を振り返る>2000年代~子供の教育編

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2016/08/12
ピティナ50年を振り返る
子供の教育編
◆ 子供の教育編
若手ピアニストの発掘

2003年に、初のレッスンオーディション方式を採用した福田靖子賞オーディションが始まる。17歳以下の高校生を対象に、海外に羽ばたく優れた才能を発掘する機会を提供。発掘された才能を中長期的に育てていくために、海外教授マスタークラスも定期的に開催している。また2005年に始まったJr.G級マスタークラスでは、グループレッスン方式を採用。1泊2日の集中合宿を通して、同世代の音楽仲間を作り、ともに学び合う機会を提供している。

実力者との共演が、若手ピアニストの潜在力を引き出す

実力や経験豊かなアーティストと組むことによって、潜在力が引き出されていく。関本昌平さんと2000年浜松国際コンクール優勝者アレクサンダー・ガブリリュクの即席国際デュオは、その後、関本さん自身の国際的な活躍へつながる一歩となった(237号p3-5p52-53) 。またピティナっ子2名が、2003年エリザベート国際コンクール優勝者エッカードシュタインとジョイントリサイタルに出演(245号リプレイ) 。同門下生同士で、お互いに切磋琢磨をしあって伸びていくケースもある(ソアレス先生門下3名、258号p38-39)。

「音楽を作る息遣いは室内楽をやりながら自然に身についたと思います。またトリオの体験で弦を知ることによって、音を伸ばしていくことを知りました。それは鍵盤楽器であるピアノでは体感しにくいことなので、肥やしになったと思います。齋藤秀雄先生の素晴らしかったところは、それを訳のわかっていない子供の頃からたくさんやらせたということだと思います」 どんな音楽と、どんな音楽家と出会うのか。それぞれの出会いを大切にしたい。(237号p56-57 二宮先生インタビュー「音楽と出会う好機をつかまえよう」

ジュニア国際コンクール、全盛期の兆し

国際コンクールもジュニア世代から。Jr.ジーナ・バックアゥワー国際コンクール入賞(218号p4)はじめ、欧米各地のジュニアコンクールに挑むピティナっ子が増える。ジュニアコンクールを聴く効用 (221号p22-23、特集「国際コンクールに学ぶ指導の最先端」より)、ジュニア世代の指導法を探る(227号p9-p25) など、グローバル世代のジュニア音楽教育についての研究も。

国内外コンクールでの活躍、その後の音楽人生

2003年グランプリ&福田靖子賞ダブル受賞の関本昌平さんが、2005年ショパン国際コンクールで第4位入賞を果たした(254号p92-94)。また同世代の田村響さんもロン=ティボー国際コンクールで優勝するなど、幼少期からピティナを受けてきた世代が国際舞台で活躍始める(269号p3-4)。国際コンクール増加に伴い、コンクール研究家グスタフ・アーリンク氏も会報に登場。「コンクール研究の目的はピアニストの地位向上とキャリア構築支援です。音楽家としてのキャリアを築くには大変な労苦を伴いますが、その理由の一つには、研究所やガイドラインがないことが挙げられます。そこで独自にリサーチを始めることにしたのです」 (221号p42-43)。
自立した音楽家とは(282号p37-41)。

コンクール後の人生も大事。コンペ最多金賞受賞者の泉ゆりのさんが、再出発について語っている(225号p56-57)。

耳を鍛えることをより意識

音楽をするには、生の音楽をたくさん聴いて耳を鍛えることが大事。ピティナでは会報特集「耳を育てる」(272号特集1)やオンライン連載「演奏会評・昨日のピアノ」などを行った。「演奏に内包されている音楽の情報をまるごと受け取るには、ライブが有利ですね」(諌山隆美先生、230号p80-81)。またコンサートツアーを企画する先生も。「ピアノ協奏曲を先に聴かせて、これができるようになるまではやってもいいかなという「未来像」を見せ、その後にリサイタルを聴かせます」(壁谷文男先生、245号p62)。今はないが、一律1000円で一流演奏会が聞ける学生対象アクセスパスの提案も(267号p28-33)。

個性を伸ばす教育

生徒全員に画一的な指導ではなく、一人一人に合わせたきめ細かい指導をー レッスン内容もオンデマンド型になっていく時代に。そのためには、各自の個性や能力、状況を的確に知ることが大事である。そこで「生徒に合わせた教材選び」(275号特集1)が模索された。さらに個性を伸ばすにはどうしたらよいか?(240号特集1p9-p23)という意識も高まり、対話式レッスンなど、生徒一人一人との向き合い方について考える機会も増えた。

途中でピアノをやめてしまう風潮に対して

かつて、中学校に入って勉強や部活に忙しくなったり、曲が難しくなり伸び悩んでピアノをやめるという生徒が多かった。継続するにはどうすればいいのか?それでも、ピアノを継続する中高生が少なからずいたり(262号p9-27)、勉強・ピアノ・部活を両立するピティナっ子が現れたり(及川まりやさん、240号p36-37)、グランミューズ部門に参加する大学生が徐々に増えたりと、ピアノを継続することの意義や楽しさは徐々に伝わってきた。小学生~中学生世代を対象に、この時期の乗り越え方を考えた特集もある(「C・D級の壁を破れ!」241号p12-26)。

本格派のアマチュアも

ステップの普及や生涯学習の振興に伴い、ピアノを継続すること、勉強と音楽、仕事と音楽を両立する考え方が、次第に定着していった。 会報特集「今求められるグランミューズ指導」 (266号p11-27)では、本物志向で高みを目指す20~40代にはクラシックが人気、音楽を通じて仲間を作り、社会との接点を広げたい50代以上にはポピュラーが人気、と調査結果を報告している。グランミューズ優勝を経て特級グランプリに輝いた金子一朗さんの存在や、世界トップアマチュアとの共演も刺激に(258号p52-53)。

未来の聴衆を育てるために

「未来の聴衆を育てる」という言葉が出現したのは2000年代。音楽業界を存続発展させるためには、弾く&聴く未来世代を育てることが急務であると課題共有された。音楽環境作り(259号p82-85)、保育士と連携しながらの幼児教育、家庭での音楽環境、絵本制作、お話つきコンサートなど、様々な企画が行われている。また2002年より、ピティナ特級において、入場料の半額が受賞者に贈られる「聴衆賞」が導入された。

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