インターネットラジオOTTAVAの「ピティナ・ピアノスクウェア」のプレゼンターの林田直樹さんと、 「海外の音楽教育ライブリポート」をはじめ150以上の海外音楽教育の記事を執筆している菅野恵理子さんのお二人にインタビューいたしました。音楽業界の中でのピティナ、欧米との違い、世界で日本人が活躍するために必要なこと、などジャーナリストの視点でご紹介いたします。
一年間前より、OTTAVAでピティナのことをご紹介させていただいています。
ピティナくらい大きな組織となると、官僚的なイメージを持つ場合が多いですが、ピティナほど「官僚的でない」団体はないのではないでしょうか。専務理事の福田さんは人のアイデアを生かすのがうまいと思います。プロデューサーが決めたことを実行するのではなく人のアイデアを生かして動いている団体ですね。判断の早さと実行力にもびっくりしました。
音楽業界は伝統を重んじるあまり、経験・ブランド・経営主義というのが優先される傾向がありますが、若いアイデアも積極的に取り入れていくのがピティナのスタイルですね。
伊賀あゆみさんの北原小学校クラスコンサートに訪問
例えばCrossGivingは、寄付額にピティナが同額を上乗せするマッチング方式ですが、会員の方々の「これがやりたい」という意思を倍増させて、後押しする、というのはまさにピティナを象徴する活動ではないでしょうか。
個人でできることは限られていますが、そこに「ネットワーク」が加わることによって活動の可能性は大きく広がります。
ネットワークとしてのピティナをみなさんがもっと活用することによって音楽の世界がさらに発展すると信じています。
クラスコンサートの様子をOTTAVAで紹介
音楽と人々との結びつきを、言葉の力によって強化する仕事だと捉えています。そして音楽、文学、演劇、歴史、あるいは現代の社会状況など、いろんな分野を結びつけ、そこに新しい意味を見つけ出し、共に考えるきっかけを作れたらなおよいですね。
一番よくないのは、音楽と聴き手との間に、評論家やジャーナリストが立ちはだかること。ジャーナリストは偉くなくていいです。音楽が人々の心の中に強くあることが大切です。
私たちは言葉の海の中で生きています。言葉の力は思う以上に大きく、使い方によっては音楽家を活かしも殺しもします。私は自分の言葉を「活かす」方向に使いたいですね。音楽ジャーナリストは「言葉を使って音楽を支える人種」とも言えるかもしれません。
林田さんステップアドバイザーに(7/26代々木上原)
アドバイザーとしてステップに参加させていただいた際に、ピアノを学習する熱意や愛情を間近に感じることができました。
ピティナでは室内楽をすでに取り入れられていますが、例えばオペラや歌曲などから「歌」を理解するのも、とても学習に役立つのではないかと考えています。特に19世紀のロマン派のピアノ曲のレガートやカンタービレは、歌の息遣いを知っているか知らないかで大きな違いが出るかもしれません。音楽を学習する人として、ピアノソロだけに偏りすぎずに、声楽やオペラにぜひ親しんでほしいですね。そこには、作曲家が劇や詩に対して自分の音楽をどう用いていたかが、より具体的に示されているからです。情報がたくさんあふれていて、どれを選んだらわからない方は、ぜひ私のネットラジオ番組やメルマガやFacebookもご参考にしていただけますとうれしいです。
- OTTAVAamorosoforweekend(ピティナ・ピアノスクエア、日曜の放送開始3時間後より放送中)
⇒過去の放送内容一覧はこちら - 林田直樹のカフェフィガロ
- Linden日記(facebookページ)
- 林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」(有料ブログ)
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リーズ優勝者のコッリ氏へのインタビュー
作曲家の資料から楽曲背景を知る
1年のうちに半分以上は海外で取材しています。これまでに西欧・東欧・アメリカ・アジアでの音楽教育や音楽祭などを取材しました。音楽の仕事に関わる中で潜在能力の高い人を沢山見まして、それをさらに発揮するためにはどうすればよいのか、海外での教育方法にヒントがあるかもしれない、と思ったのがジャーナリストの仕事を始めるきっかけでした。
音楽だけでなく、学校の教育にも共通して言えることですが、「まず問題意識を持たせて、それをどう読み解けばよいかを学ばせる」ということかもしれません。
例えばヨーロッパの高校の歴史の教科書で言えば、各ページに概論があって、その横には様々な資料があり、その下には山ほど質問が設けられています。単に暗記するのではなく、質問から意見を形成し、理解を深めるというのが基本的な学習方法です。
音楽や絵画の鑑賞教育に関しては、聴くものも見るものも子供も大人も同じ。ただ着目ポイントが違い、子どもなりに理解できるような問いかけをしていきます。
音楽では「アナリーゼ」がありますが、先生の楽曲分析が「答え」であるということではありません。楽譜や作曲者の背景から、自分なりに楽曲をどう捉えるか。自問自答を経て、自分で「真実」を見つける、というスタイルが欧米では根付いています。それが強く伝わってきたのは2010年のショパン国際コンクールやエリザベト王妃国際コンクール等でした。国際コンクールを多数回っていると、複数参加しているコンテスタントに出会います。その都度成長している方とあまり変わらない方がいますが、その違いは「自分なりの真実」を見つけられたかどうかだと思います。
「質問をすること」は大切ですね。「ここは何故そうなっているのかな?」という小さな問いかけが、楽曲の理解を深める道標になってくれると思います。その質問に先生が答えて下さるかもしれないし、今は情報・資料・音源・楽譜がオープンリソース化されているので、自分である程度調べることもできます。学ぶ環境は世界中であまり差がなくなっていると感じますので、あとは自分でいかに好奇心をもって探究していけるかだと思います。さらに、様々なリレーション(関係性)を考えることも大事ですね。音と音、フレーズとフレーズ、曲と曲の関係、他の作曲家、同時代の芸術思潮との関係性など、複合的に音楽を捉えることで、楽曲の文脈を深く読み解くことができると思います。また1曲1曲の音楽の創り方だけでなく、選曲や配列を工夫したプログラムも最近よく見られますが、そこから新たな発見を促されることも少なくありません。日本の皆さんも自分の持ち味と才能を生かし、ぜひ国内外で力を発揮して頂きたいなと思います。
全世界的にみてもピティナは稀に見る多彩なヒューマンリソースの集まった組織だと思います。会員の先生方もとても研究熱心ですし、現場のアイディアがこれほど多く素早く生かされている団体はないのではと思います。海外事情を伝えるのと同時に、日本のことを海外に伝えたいと考えています。
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