ご自分で料理を作った際、「美味しい！幸せ！」という反応が返ってくるのと、「香辛料で臭みを取った豚肉が長時間ワインで煮込んであるので美味しいです」等と冷静に言われるのでは、どちらが嬉しいでしょうか。

苦労や努力の跡を理解してもらったという点では後者もありかもしれませんが、多くの方にとっては、あれこれ分析されるより前者のようにストレートに喜ぶ反応が嬉しいのではないでしょうか。

同様に、作曲家は「36小節目と72小節目で転調し、その間に変拍子の部分がある、変化に富んだ良い曲だ 」などと聴衆に分析されるのは、本意ではないと思います。

しかし、作曲家に代わって聴衆に音楽を届ける使命を負った演奏家は、一度楽曲を丸裸にして理解し、その上で、聴衆に向けては曲の種明かしをさせないくらい自然な演奏をするのが理想ではないかと思います。