幼少の頃、親の言いつけに従ってピアノを習い始めた子が、いつしか自分の意思でピアノを弾くようになることがあります。特級、G級、グランミューズ部門に参加するのは、そのような方々ではないでしょうか。

その参加者にとってピアノを弾くことが「楽（らく）」かといえば、決してそうではなく、苦しいことも多いはずです。「好きか？」と問われても、必ずしも肯定しないかもしれません。音楽の奥深さに触れ、それを追求したいという意志によって、続けているのだと思います。

先日、あるピアニストにお目に掛かりました。その方の才能を持ってすれば、もっと楽な職業を選ぶことができたはずです。しかしその方には、コンサートピアニストを選んだからこそ発せられるであろう、人間的な魅力を感じました。

人間は決して合理的な生き物ではありません。夢中になって目指すことが見つかった人は幸せであり、目標へと努力し続ける人には自然と強い魅力が備わります。