地域のワ音 Vol.1:井上朗子先生-地域音楽活動家インタビュー

地域のワ音- 地域音楽活動家インタビュー -
Vol.1 井上 朗子先生(正会員)
大阪府岸和田市でピアノ教室を主宰。岸和田ちきりステーション代表、ブルグミュラーコンクール岸和田地区事務局代表として、ステップやコンクールの運営をする傍ら、2014年から市内小学校での学校クラスコンサートを定期的に開催している。

長年地域に学校クラスコンサートを広めてくださり、ありがとうございます。まず、最初に学校クラスコンサートを開催しようと思ったきっかけを教えていただけますか?

2013年に、香川県で西川潤子先生・谷口賢記先生が出演した学校クラスコンサートを見学しました。すごく素敵で、やりたいなと思ったんですが、これは「地元」という括りの中でやるのが良いなと思ったんですね。
それで、小さい頃から教えていた生徒で現在ピアニスト・指導もしている紀之定郁恵さんに、母校の岸和田市立光明小学校でのクラスコンサート出演の機会がないかなと考えました。そうしたら偶然当時の生徒のお父様の恩師が、光明小の校長先生だとわかったんです。

すごい偶然ですね!

はい。それで、学校クラスコンサートのことをそのお父様に相談したら、校長先生に仲介してくださって。趣旨をお伝えしたら、とても共感してくださいました。これが2014年の第一校目のきっかけです。

その後は、年に数校で開催してくださっていますね。次の学校とは、どのようにつながりを作れたのですか?

やはり学校でコンサートとなると、通常体育館や講堂にたくさん集まって聴くスタイルなので、1クラス単位で間近で、というスタイルに、光明小学校の校長先生がとても感動してくださったんです。それで、他校の校長先生にご紹介くださいました。あとは、生徒の保護者のつながりもありましたね。

学校に開催していただくには、開催資金の負担についても相談しなければいけないですが、どのように交渉されてきたのですか?

必要な資金は、通常2人で出演するので、1万円×2名で1校2万円ですね。最初はステーションの資金で負担していたのですが、継続性を考えると学校にもご負担いただけるようになるのがベストで…2回目以降は学校に資金折半の交渉していたんですが、そうしたら開催してくださる学校が減ってしまったんです。なんとか続けたくて、懇意にしている宝石屋さんや飲食業の方にご協賛をお願いしたこともありました。

学校にご負担いただけるようになるのは、大変ですよね…しかしご協賛獲得まで奔走されたのですね!

でもなかなかこうした資金調達で継続するのは骨が折れる!と思って(笑)。どうしようかと思ったときに、ピティナからブルグミュラーコンクール事務局設立の話をいただきました。ステップより自己資金を作りやすい事業形態だったので、これだ!と。2018年度から、ブルコン事務局の資金で私のスタッフ手当となる分を積み立てて、クラスコンサート開催に充てています。

素晴らしいエネルギーですね。ご自身は完全なボランティアで、地域の子どもたちに学校クラスコンサートを届けたいと思うそのエネルギーは、どこから来ているのでしょうか?

やっぱり、子どもたちが喜んでくれている姿ですね。学校は平等な教育の現場なので、音楽が好きな子も好きじゃない子もみんな音楽に触れられます。クラスコンサートなら、サッカー少年が音楽を思い切り楽しんでいる姿も見られるんですよね。それを見ると、「やってよかった!」と思えます。

実は、先生が開催してくださったクラスコンサートには、のべ2000名以上の児童が参加してくれているんです。

そんなになりますか!それは嬉しいです。 あとは、ピアノの出演者が私の生徒なこともあって、教室の生徒たちの中でいい影響があるのも、嬉しいですね。

どのような基準で出演者を起用しているのですか?

教室の生徒でも、「市内であまりいない人材」を起用するようにしています。紀之定さんは、私の教室で初めてコンペの全国決勝大会に進出した方で、大阪教育大学大学院を卒業されている優秀な方です。森本美希さんは、コンペでD・E・F級決勝入賞入選、5年間のフランス留学中に国内外のコンクール入賞。早田有里さんは、コンペ金賞受賞、そして岸和田にほとんどいない桐朋学園大学進学者・卒業者であり、こちらも国内外のコンクールで入賞されています。身近な人が様々な実績を積んで、小学校のコンサートに出演している姿は、子どもたちにも刺激的なようです。次世代の奏者が生まれて、循環するといいなと思っています。

左から紀之定郁恵さん、森本美希さん、早田有里さん

クラスコンサートの後継の奏者育成まで考えられていて、頼もしいです。
コロナ禍では、学校クラスコンサートを開催されるのも大変だったと思いますが、最後に今後の地域での活動の見通しを教えていただけますか?

コロナ禍でも3校が開催してくださり、2021年度も5校で開催の見込みがあります。ただ、なかなか例年のような、ピアノの周りに集まって楽器の中を覗いて…といったことができないので、ディスタンスを取りながらもクラスコンサートの良さを伝えられる開催を、まずは目指したいです。
長期的には、資金調達の面でも今後より広く市や教育委員会にご協力いただけるように、模索しています。今は教室・ステップ・ブルグミュラーコンクールと運営がそれぞれ忙しいですが、時間ができたら、いつかは岸和田市内全校の子どもたちに届けてあげたいです。

岸和田市の子どもたちに、たくさんこの機会が巡っていくように、サポートさせていただきます。ありがとうございました!

ご寄付はこちら