3.インタビュー
尾崎有飛ピアノリサイタルが、いよいよ12月3日(水)にせまりました。コンサートを1ヵ月後に控え、そしてこのコンサートの後「十代」をまもなく終え20歳をむかえる尾崎さんに、選曲や今の思いを伺いました。
─ 今回は、十代の演奏家シリーズにご出演いただき、ありがとうございます。まず、今回の十代のコンサートでは、どんなことを考えてプログラミングされましたか?
なるべくいろいろな雰囲気の曲をお聴きいただけるよう、今までよりも作曲家と曲の両面から考え選曲したことと、 ソナタでも古典のソナタをリサイタルプログラムに初めて取り入れてみました。
─ 尾崎さんのプログラムといえば、メトネルの作品が入っていることが多いですね。今回も「嵐のソナタ」を入れていらっしゃいますが、彼の作品への思い入れ・魅力を教えてください。
メトネルの両親の先祖がドイツ人だったためか、メトネルの作品にもドイツや、メルヘンの雰囲気があって、それがどこか懐かしく感じられ、親しみやすい部分があるところに魅力を感じます。
─ 最近はショパンの作品にも多く取り組んでいますね。今回もバラード第3番を入れていらっしゃいますが、ショパンについては?
リサイタルでは、これまでショパンをあまりプログラムの中に入れていませんでしたが、昨年ドイツでのリサイタルの際、主催の方からショパンもぜひ演
奏してほしいとの依頼があって何曲か弾いたところ、聴衆の皆さんがとても楽しんでくださり、やはりショパンは皆に愛されているのだな と感じました。それ
で、最近は演奏会のプログラムに取り入れるようにしています。
バラードから第3番を選んだのは、前からバラードならこれを弾きたいと思っていたからです。
─ ちなみに、今、もっとも共感しやすい作曲家は誰でしょう?
リストの作品は今まで多く弾いてきたので、一番馴染みやすいです。人間的にもとても魅力を感じる作曲家です。
─ 今回も、ハンガリー狂詩曲やグノーの「ファウスト」のワルツが聴けますね。楽しみです。さて、普段、ピアノ練習以外の時間は何をしていらっしゃいますか?
ドイツに来てから今年の6月まではドイツ語の試験のためにドイツ語学校にも通っていました。一人暮らしは初めてだったので、自分で何でもやらなくてはいけないことが最初とても大変で、買い物に行ったり掃除や食事を作るだけで1日が終わるという感じでした。
同級生にあたる人たちが皆僕より年上なので、食事を作ってもらったりしたことも時々あり、大学でも一緒に食事をしたり、こちらでの生活についていろいろ教えていただいたりしながら、今は大分慣れて楽しくしています。
─ ドイツ留学ではどんなことが特に勉強になっていますか?日本との勉強との違いなど、感じることがあればお聞かせください。
実際に作曲家たちが生まれそこで曲を書いた国に生活してみて、街の空気や四季の移り変わり、演奏会の雰囲気などを肌で感じることで自然に得るものが多い気がします。僕だけでなく、オーストリアでもロシアでもどこにでも、留学している人はみな同じだと思います。
勉強や練習の仕方自体は、日本にいるときとそう変わりませんが、外国語でレッスンを受けるということで、先生のおっしゃりたいことを正確に理解しようと、日本語でのレッスン時よりさらに神経を研ぎ澄ませる必要があります。
─ さて、今回は「十代の演奏家」ということで、まもなく20歳になる尾崎君にとっては、十代最後の重要な演奏な機会になるのではないかと思います。十代の10年、特に印象に残っている演奏会、思い出はありますか?
10代になって最初に記憶に残っているのは、12歳の時、第24回ピティナ・ピアノ・コンペティションでE級金賞をいただいたことです。高校生、中学生に混ざって小学6年で参加したE級で金賞を頂けたことは、本当に嬉しかったです。
それから、15歳の時東京で開いた初めてのリサイタルもとても印象に残っています。
そのほか、プロフィールにあるような国内外での演奏会やコンクールの1つ1つのすべてが今の僕の力になり、それぞれの機会にたくさんの方々と知り合うことができ、応援して頂いていることが嬉しいです。
─ 十代の10年は早かったでしょうか?それとも長かったでしょうか?
生まれた時から5年位の記憶は、はっきりとは残ってはいないので十代前の10年との比較はできませんが、いろいろ思い出してみると長かった気がしま す。特に、E級金賞を頂いてからは、外国を含むあちこちで演奏をする機会が多くなり、常に目の前に次の目標や予定が3?4個見える状態で頑張ってこれたこ とはとても有り難いことだと思っています。
─ 20代を迎えるにあたり次の10年どんなことをしたいですか?
音楽以外の事というのは今あまり思い浮かびませんが、今はヨーロッパ各地へ演奏会の為出かけてもあまりゆっくりあちこちを見てくる時間が無いので、そのうち音楽家たちのゆかりの地みたいな所とかヨーロッパ各地を見てきたいです。音楽では、そのうちに以前少し習ったことがある指揮にもとても興味があるので是非勉強したいです。
特に10年ごとを意識してはいないですが、成長するにつれてピアノの音は変わっていくと思うので、それぞれの年代において僕らしい演奏ができるようになりたいです。
─ 最後に、今回、このコンサートにご来場下さる方へのメッセージをお願いします。
7歳の時、今もお世話になっている江口文子先生と出会いピアニストになることを心に決めてから、僕が目標としているのは聴いて下さった方の心にいつまでも響き続けるような僕だけの音色で演奏することができるピアニストになることです。
日本でもヨーロッパでも演奏の機会があるたびに、僕の音を「独特の美しい響き」と喜んで下さる方が多くなっていることは何より嬉しく有り難いことだと思っています。今後更にたくさんの経験、研鑽を積み常に僕の新しい音を皆さんにお聴き頂けるよう努力します。
今回のプログラムは、夏以降新しく僕のレパートリーに加えた曲がほとんどです。そういう意味でもいつも以上に新鮮な気持ちをもって演奏しますが、初披露する今回の曲の演奏が僕の成長
と共にどう変化していくのか、ずっと皆さんが僕のそばで聴いていて下さったら・・と願っています。
12月、お忙しい時期に僕のためにいらして下さる皆さんへの感謝の気持ちをこめて演奏します。
そして、僕を長い年月育てて下さっている江口先生、いつも僕を支え応援して下さる方々、心から有難うございます。