公開録音コンサートで学ぶ!~先生、生徒さんへおススメの聴きどころ~

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2019/01/17
公開録音コンサートで学ぶ!~先生、生徒さんへおススメの聴きどころ~

昨年、通算200回を超えた「公開録音コンサート」シリーズは今年の春も多くの公演が予定されています。「ピアノ曲事典で聴けない曲」を収録するのが目的ですので、回を重ねるごとに、珍しい曲がプログラムに載ります。知られていない曲はつまらない曲でしょうか?いえいえ。ピアノ音楽の世界はそんなに薄っぺらいものではありません。そして、最近の公開録音コンサートは、趣向を凝らしたテーマとプログラムが続いていますから、いらして頂けたなら、多くの新しい学びがあることは間違いありません。公開録音はアットホームな会場で行われており、気軽にいらして頂けるシリーズでもあります。今回はコンサートご来場へ「あと一歩」踏み出して頂けるようなご紹介と、既に数多く公開されているYouTube動画からの「学び方」をご提案してみたいと思います。

未開の音楽史/エチュード大観
ショパン、シューマン、リストがなぜ、ピアノ音楽の中心と考えられるのか。それは楽器自体の「青春時代」と彼ら自身のそれが一致したことで生じた、歴史的必然でした。この「ハード」と「ソフト」を両立させたのは、個人を超えた、時代の意思と働きです。
そしてこの「必然力」は彼ら以外にも、極めて魅力的な多くの同世代人に共有されていたのです。こうした作曲家たちを知ることで、当時の空気感、その中の彼らの立ち位置、時代様式とオリジナリティの違いが初めて見えてきます。ショパンだけを見ていても、ショパンの何たるかは分かりません。同時代が生み出した音楽がどれ程のものか、それらを体験する一期一会の機会です。(2019.1.16 金澤攝)
金澤攝(pf.)
未開の音楽史~続・1817年生まれの才人たち~
  • vol.4 レオン・クロイツェル
  • 2019年1月23日(水)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • 公演終了
  • vol.5 アントワン・ド・コンツキ
  • 2019年2月6日(水)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
  • vol.6 ルフェビュル=ヴェリー
  • 2019年2月18日(月)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
ピアノ・エチュード大観─ パリ、1830~'40年のエチュード出版史 Vol.1
A.P.F.ボエリー「30のエチュード」Op.6
  • 2019年3月23日(土)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
夫婦の肖像~C・シューマン生誕200年~
音楽史上の女性の音楽家といえば真っ先に思い浮かべるのはクララ・シューマンではないでしょうか。今年はその生誕から200年の記念年です。作曲家としての再評価も進んでいる今、自立した女性音楽家の先駆けであり、優れたピアノ指導者でもあったクララの音楽に触れてみませんか。
長尾洋史(Pf.)、吉岡麻貴子(Vn.)、江口心一 (Vc.)
  • 2019年2月14日(木)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
連弾編曲作品にみる名曲の魅力~2人のピアニストのためのブルクミュラー~
数々の変奏曲、パラフレーズを始め、名曲は昔から様々な作曲家による「編曲」でも私たちを楽しませてくれています。この日はtaburina-hirarinaのアレンジで、誰もが知っている名曲やピアノ学習者には欠かせないブルクミュラーの練習曲を、キャッチーでスリリングな連弾でお届けします。
taburina-hirarina(田淵紗恵子、金平夏花)
  • 2019年3月8日(金)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
ペルソナ ─ 乾春男の肖像
1929年生まれの乾春男は東京芸術大学の学生だった1949年、僅か20歳で自死した作曲家です。今回出演されるピアニストの樋口紀美子先生と、そのお兄様である音楽学者の隆一先生にとっては叔父にあたる方だそうです。1990年代に、やはり樋口先生によって乾作品の演奏会が行われました。そのプログラムには数十年の時を経てなお、同年代の、今や高名となった作曲家たちからの、早過ぎる死を惜しむ心からの声が寄せられ、涙を誘うものでした。若き作曲家が何を思い、何を音楽に込めたのか。貴重な再演の機会です。
樋口紀美子(pf.)、樋口隆一(解説)
  • 2019年3月15日(金)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
日本人作品の夕べ Vol.4
「日本人作品の夕べ」と題しての演奏会も4度目となりましたが、魅力的と思える曲は、尽きるどころか増える一方です。
1900年代前半、日本に西洋音楽が本格的に導入されてから、先人たちが必死で西洋音楽を学び取り、自分の音楽へ消化していった軌跡は感慨深いものがあります。作曲者が意識的であれ無意識的であれ、自国の文化と融合した「日本の曲」は、魂の部分で共感する点を多く感じます。
普段は子どもたちの指導に携わっています。私自身が「日本の曲」を演奏することのみならず、子どもたちにレパートリーとして触れて欲しいという気持ちも強く、子供のための作品も多く弾いています。 音楽を愛好する方はもちろんですが、指導者の方にいらしていただけたら、そして生徒さんも連れてきてくださるとしたら、本当に嬉しいことです。
杉浦菜々子(pf.) 、末次真美(cl.)
  • 2019年3月22日(金)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
『がちクラ!』レクチャーコンサートシリーズ ~作曲家との対話~"20世紀の音楽 in ニューヨーク"ヨーロッパからの影響と新たなジャンルの始まり
1900年代初頭、様々な人種・文化が混ざり合ったニューヨークで、音楽がどの様に発展していったのか─ 音楽を取り巻く環境や、ヨーロッパ諸国との相違点についてお話いたします。また普段日本では演奏される機会の少ない、アメリカ人の作品の数々もお楽しみください。
エミィ轟シュワルツ(pf.)、久保 順(fl.)
  • 2019年3月26日(火)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
「知りたい!みんなの『譜読み』」Special~華麗なるフレンチ・フルートの世界
現在ピティナホームページにて「知りたい!みんなの『譜読み』」を連載中のピアニスト/音楽ライターの長井進之介が、譜読みにおける「呼吸」の感じ方、読み取り方、他の楽器の音色との調和の大切さを実演とトークを通してお届けいたします。ピアノ演奏におけるアンサンブルの大切さについて改めて考えていただける場になれば幸いです。フランスの作曲家の作品を中心とした華やかなプログラムを、艶やかな音色と豊かな表現力でクラシックはもちろん、様々な分野で活躍の幅を広げるフルーティスト、林愛実さんと共にお届けいたします!(長井進之介)
長井進之介(pf.)、林愛実(fl.)
  • 2019年4月26日(金)
  • 入場料:後払い方式
  • 会場: 東音ホール
  • ご予約
  • 後払い方式は、終演後に感動の度合いに応じてお好きな金額を決めていただく方法です。心からの無理のない金額でよいのですが、毎回の平均金額は2,000円ほどです。あくまでご参考までとお考えくださいませ。
YouTube動画から学ぶ!

200回を超える公開録音で収録された演奏音源は2000以上にのぼります。すべての動画から何らかの学びを引き出すことができるはずですが、ここではいくつかのYouTube動画を少しだけピックアップしてご紹介します。

ブルグミュラー《25の練習曲》より「スティリエンヌ」(演奏:赤松林太郎)

公開録音コンサート・通算200回記念で収録されたブルグミュラーの演奏です。すべての音楽には様々なアプローチがあって然るべきですが、現時点における一つの決定版といっても良いように思います。テーマも演奏も、赤松先生の気迫が伝わる素晴らしいコンサートでした。

グレゴアール《3つの伝説》より「祈り」(演奏:金澤攝)

「知られていないものはよくないもの」というのは思い込みに過ぎないと金澤さんは言います。たとえばこのグレゴアールの「祈り」は金澤さんが演奏するまで100年以上、弾かれることが無かったかもしれませんが、その音楽からは美しい風景が見えてこないでしょうか。

バッハ《フランス組曲 第1番》(演奏:武久源造)

クラヴィコードによる演奏です。か細い音とも評されることがあるクラヴィコードですが、武久さんの演奏は音楽をする喜びに溢れています。ピアノ演奏にも活かせるヒントを、ぜひ引き出して頂きたいと思います。こちらはプロによる編集で、動画としての品質も良好です。

最新の音楽研究や演奏と指導の現場では、時に「良い」とされるものが異なるかもしれません。それ自体は当然のことですが、自分の属する分野の流儀だけを押し付け合うのではなく、少しずつでもお互いのことを知っていくことが、音楽文化をより豊かなものにするのではないでしょうか。そのような交流を促すことは公開録音コンサートおよびピアノ曲事典、そしてピティナの使命でもあると考えています。(公開録音コンサート担当/ピティナ・ピアノ曲事典編集長)


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