第28-30回:高松市立花園小学校・鬼無小学校・古高松小学校 2006年4月25日・26日・27日

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2006/04/27

学校クラスコンサート初の地方開催は香川県高松市の小学校3校。『教育音楽』の雑誌で知った音楽の先生の声かけで、2人の母校を含めた3校で実現した。訪問したのは高松市出身のデュオ専門のピアニスト、デュエットゥの2人。ピティナ・ピアノコンペティション創始第2回からデュオ特級まで、ソロ、デュオと出場し続けてきたピティナっ子の2人だ。

ビデオを見てみよう(WMV5分40秒)

故郷の小学校で、故郷の言葉で

デュエットゥの木内佳苗さんと大嶋有加里さんは、2人とも高松市出身。自分たちはこの故郷の高松がなければ育たなかった、と断言する2人は、お互いの母校も含めた故郷の小さな後輩たちへ、伝えたいことはたくさんある。今日は自分たちの専門のピアノ連弾を通して、それをみんなに感じ取ってもらえたら、と学校へ向かった。

みんなの前に現れた2人は、まずオッフェンバック『天国と地獄』の連弾でみんなの心をつかむ。「知っとる知っとる!運動会の曲や!」という声に、演奏する2人の顔もほころぶ。楽しいテンポのよい曲に、かけっこの真似をして腕を動かす子も。「そうそう、みんなよく知っとるよね。この曲も実はクラシック。かたくならないで、楽しかったら笑って。気持ちいいな~と思ったら眠ってもいいんよ。リラックスして聴いてね。」と故郷の言葉を交えて話しかける。

おもちゃのピアノと本物のピアノの競演!

何やら赤い布におおわれた机が登場した。「何だと思う?」とぱっと布を取ると、2つの赤いおもちゃのピアノが登場。「わーっ、かわいい!」。まずは音を聴いてみようと、おもちゃのピアノ2台で向かい合い、『チョップスティックス』を演奏。 「かわいい音!」「ちゃんと弾けるんだ~」「弾いてみたい!」という声。「みんなも弾いてみる?」と、おもちゃのピアノをみんなの席へと持っていくと、うれしそうに次々と弾いてみる。「ポン、ポン...」と思わず校長先生も手をのばす。

「もっと派手に!」の声がかかり「わかりました。それではご要望にお答えして、これから"超絶技巧"といって、このおもちゃピアノをとーっても速く弾いてみます。みんなも手拍子で応援して、のせてね!」と、まずは2人で本物のピアノの方へと向かう。曲は『エンターテイナー』。おなじみのメロディが聞こえてくると「これも知っとるー。」と嬉しそうにもう手をたたいている。よく聴くメロディが、途中から超絶技巧に展開!みんなの手拍子にのって、木内さんが今度はおもちゃのピアノへ。かわいらしいピアノから、すごい速さの音が聞こえてきてびっくり!大嶋さんは本物のピアノの方で、もっと速く!と木内さんをあおり、みんな大喜び。


3人でピアノ~先生も弾けた!~

生徒たちは喜んで大はしゃぎ。実は先生本人にも内緒。

次はいつもデュオ、つまり2人組で活動しているデュエットゥが「今日ここで新しい3人目のメンバーを発表します!」と宣言。「3人目のメンバーは...○○先生です!」と担任の先生や校長先生を突然指名。「きゃ~っ!」と「え~!聞いてませんよ?ピアノ弾けませんよ?」という先生も、生徒たちからの熱烈な拍手に、照れながらピアノへ向かう。「先生弾けるの!~」と生徒が見守る中練習をし、さて本番。『げんこつ山のたぬき』の曲にあわせて両手の2本の指で和音を重ねる。弾きながら生徒の方へ笑顔をサービスする先生も。だんだんとテンポが速くなり、先生もそれにあわせ最後まで弾ききると、先生ががんばる姿に生徒からあたたかい盛大な拍手が贈られた。

「スーッ」って息吸ったのが聞こえた!

さて、今度は本格的な連弾の作品を聴いてもらう。みんなにピアノの近くへ寄ってもらって、ブラームスの『ハンガリアン舞曲』を演奏。激しいところと小さいところが交互に来るのにあわせて 足を速く動かしたりゆっくり動かしたりして体感している子も。 近くで聴いていた子は、 弾き終わった2人に、 「スーッって、大きく6回息吸ったよ!」と得意そうに話してくれた。



次は、2人で連弾をしているはずなのに、まるで1人で弾いているみたいな曲と、まるで10人で弾いているような曲を1曲ずつ。まずはラヴェルの『マ・メール・ロア』より「眠りの森の美女のパヴァーヌ」。これはみんなに席へ戻ってもらい、目を閉じて聴いてもらう。さっきまでの迫力とうって変わって1本の糸を紡ぐような、なめらかで静かな曲に、生徒たちは静かに目を閉じて耳をすませていた。
10人分の迫力のある曲は、ピアソラの『リベルタンゴ』。この曲はデュエットゥが連弾用に編曲をしたのだが、その際アルゼンチン・タンゴのリズムを際立たせ、激しい情熱を表現するために、色々なピアノ奏法の技法を使っている。 「1つは、ピアノを打楽器としてたたきます。2つ目はグリッサンドといって、手をこうやって鍵盤の上をすべらせて、流れるような音を出します。3つ目はこうやって、腕の部分を使ってピアノを押します。そんなことしていたずらしちゃだめ!と言われそうですが、これも"クラスター奏法"とちゃんと名前のついた方法なんです。」と1つずつやってみせる。 そしてみんなに見えるようにと、またまわりを囲んでもらって情熱的な『リベルタンゴ』を演奏。2人の気迫と動き、音楽の激しさに圧倒されつつ見守る。


産直サンバを歌っておどって!

最後にはみんなが楽しみにしていた『産直サンバ』!香川県の特産物を盛り込んだ、産直=産地直送市場のテーマ曲だ。実はこの曲はデュエットゥが作・編曲していた。朝の会などで振り付けまで練習をしていた子どもたちは、歌詞も完璧!早くおどりたくてしかたない。試しにCDで音源をかけてみると、むずむずと動き出し、口ずさむ。

「では、みんな立って歌って踊りましょう!」と、今度は木内さんが生のピアノ伴奏で、大嶋さんがみんなの中に加わった。曲が始まるとみんな元気に右に左にゆれ、くるくると回って笑顔満面で踊りだした。終わると「もっと速く!」「最速で!」とのリクエスト。「わかった。じゃあ、このクラスの特別バージョンね!」とそれぞれのクラスで速さやアレンジを加えて伴奏すると、みんな大喜びで生き生きとした表情で歌った。

小学校の時の友だちが今でも一番仲良し

ひとしきり楽しんだ生徒たちは、さらに質問もたくさん投げかけた。「ピアノの寿命ってどのくらい?」「おもちゃのピアノってどうやって練習するの?」など。「一番好きな曲は?」>「一番最初に作曲した曲は?」など問いに実際に目の前で弾いてみせたり、「どうして香川県の野菜の曲を作ったの?」という問いには、「香川県が大好き。おいしいものもたくさんあるし、緑もたくさんある。大好きな香川の夕日をイメージして作った曲もあります。」と、『夕日につつまれし時』という自作の曲も弾いてみせた。

さらに、「今ここで作曲できますか?」というリクエストに、木内さんは「じゃあ、鬼無小学校5年2組の歌。」と言って、直前にみんなで歌った産直サンバの楽しい雰囲気が盛り込まれた曲を即興で作ってプレゼント。お礼にみんなも、母校の校歌やお礼の歌を歌ってくれた。

「いつからピアノを始めたんですか?」という質問に木内さんは「私が5歳の時にたまたま聴きに行ったピアノの発表会でゆかりちゃんが弾いていて、私はそれに憧れて、ピアノを始めたの。だから、みんなと同じようにここの学校に通っていた頃からの、ずっと長いつきあいなんだよ。」と話す。

大嶋さんも「私は小学校1年生の時からずっとピアニストになりたかったの。でも大学生の時に手の薬指をいためて、お医者さんに"もうピアノは弾けません"と言われて、とてもショックで毎日毎日泣いていたの。そうしたら一番近くにいたかなえちゃんが、"一緒に弾いてゆっくり治していこうよ。"と声をかけてくれたの。」?「そうか、だけん...」と子どもも声をはさむ。「そう!だけん、それから今みたいに一緒にデュオを組んだんよ。」と言うと、「そうか?、夢がかなってよかったなぁ。」と子どももしみじみ。「だから、みんなも色んな夢あると思うけれど、絶対にあきらめないで。私も一度あきらめかけた夢が、友達のおかげでまたがんばることができた。みんなも困ったこと、悩んでいることがあったら1人で悩まないで、隣にいるお友達に声に出して相談してみて。きっと助けてくれるから。」と語った。


=生徒さんからの感想=

ぼくたちの学校にプロのピアノを弾く人が来てくれました。まず、2人でピアノをひいてくれました。すごく指が速くてついていけませんでした。その後もいろんな速い曲や、ゆるやかな曲を弾いてくれました。産直サンバも歌ってとてもおもしろかったです。1人は鬼無小学校を卒業したと聞いてビックリしました。(鬼無小5年)

私はどうやったら上手にピアノがひけるのか悩んでいたけれど、お姉さんたちが楽しそうにひいていたので、楽しくひいたら上手にひけることがわかりました。(花園小4年)

近くで見ていると、二人ともしんけんで、とてもがんばっていました。(花園小4年)

さいしょはピアノの音でおもちゃのピアノの音がきこえないと思っていましたが、音の大きさは同じくらいで、音の高さはおもちゃの方が高かったです。ぼくがみたことのないわざをつかったりしたので、びっくりしました。(花園小4年)

一番よかったのが「リベルタンゴ」です。手でピアノのふたのところでたいこみたいにたたいたり、「どん」ってしたり、ちゃらりらとひいたのがすごいなあと思いました。(花園小4年)

ピアノを練習して、みんなの前でひくと、とても楽しいことがわかりました。(古高松小4年)

息づかいなどで演奏中にコミュニケーションがとれていることも分かりました(古高松小4年)

一台のピアノで2人で弾いているので、「よく気が合うなぁ。」と思いました。私もピアノをやっているけどなかなか友達と気が合わなくてこまってしまったけど、この2人のように仲良くしていきたいです。驚いたのは2人とも手が大きかったことです。私も手を大きくしてもっといろいろな曲が弾けたらいいなぁと思います。(鬼無小5年)

私は、連弾ってすごいんだ!!と思いました。それは、連弾でひけば、何十人でひいているようにも聞こえれば、二人なのに一人でひいているようにも聞こえたからです。音楽ってふしぎだなと思いました。(古高松小4年)

もう一つビックリしたのは、デュエットゥのお二人ともう一人後藤先生の3人でひいているところでした。後藤先生は、ピアノがひけないと思っていたけれど、かなえさんとゆかりさんと一緒にひいていて、とてもすごいなと思いました。(花園小4年)

私が心に残った曲は、1組と4組の曲です。すごく少ない時間だったけど、1組と4組の曲を考えたので、とってもすごいなぁと思いました。とてもいい曲だと思いました。その曲をはやくおぼえたいです。(古高松小4年)

ゆかりさんとかなえさんと一緒に歌った産直サンバ。ゆかりさんとかなえさんと歌うために何回も歌いました。その成果が出たのか、二人と歌う時に本当にのりのりでした。

薬指が動かなくなってもあきらめず、いっしょうけんめいリハビリをがんばって続けていました。私もデュエットゥの2人のように、あきらめずがんばりたいです。

私は合唱団を6年生までやり続けて、がんばって音楽の道に負けずに進みたいと思います。

おもちゃのピアノでひいた音がすごくはやかったので、家にあるおもちゃのピアノでてきとうにやったら、すごくへんな音が出ました。(古高松小4年)

2人で はげましあい、ここまで練習して上手になっていって、今その練習した成果がでたんだと思いました。(古高松小4年)

4年1組のみんなは、ぜったいかなえさんとゆかりさんのことを応援しています(花園小4年)

かなえさんとゆかりさんの友情がすてきで、わたしたちもこんどから、なやんでいたら、友だちに話したりしてはげまし合えると思いました(花園小4年)。

演奏者

♪ デュエットゥ(ピアノデュオDuetwoかなえ&ゆかり)
木内佳苗・大嶋有加里によるピアノデュオ。東京音楽大学卒業後、英国王立音楽院でピアノデュオ演奏家資格ディプロマを取得。1998年、第4回国際ピアノデュオコンクール特別賞毎日新聞社賞受賞、同年、第3回Music&Earth 国際器楽コンクール第1位受賞。2001年にデビューCD「いいことがありそう!」を、2002年に「ボレロ!!」をキングレコードよりリリース。日本テレビ「ズームイン!Super」へ度々出演しているほか、西日本放送のラジオ番組「波乗りラジオ/パリパリチューン」へのレギュラー出演、執筆、作曲・編曲活動も行う。2005年に初の楽譜集「デュエットゥ 踊る連弾・歌う連弾」が音楽之友社より出版された。オレンジノート所属アーティト。デュエットゥのホームページ

プログラム

○オッフェンバック(平尾 妙子編):天国と地獄 (連弾)
○メキシコ民謡:チョップスティック (おもちゃピアノ2台)
○ジョプリン(デュエットゥ編):エンターテイナー(おもちゃピアノ+ピアノ)
○ブラームス:ハンガリアン舞曲第5番(連弾) 
○ラヴェル:マ・メール・ロアより「眠りの森の美女のパヴァーヌ」(連弾)
○ピアソラ(デュエットゥ編):リベルタンゴ (連弾) 
○木内佳苗(デュエットゥ編):産直サンバ (合唱共演)

協力:香川県高松市立花園小学校、香川県高松市立鬼無小学校、香川県高松市立古高松小学校/後援:高松市教育委員会/協賛:NTTドコモ四国/主催・問合:ピティナ学校クラスコンサート係
報道:KSB瀬戸内海放送、2006年4月25日「ひるズ」「スーパーJチャンネル」にて放送、四国新聞
、2006年4月27日「高松出身女性ピアノデュオ 息ピッタリ連弾披露 花園小」、毎日新聞、006年4月29日「高松出身ピアノデュオDuetwo小学校で演奏~連弾楽し・心弾む」、NHK高松放送局、2006年4月27日放送、鬼無小のクラスだよりに載りました

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