2005年度の西東京市最後のクラスコンサートとなったのは、西東京市立栄小学校。演奏者は、西川潤子さんと、サクソフォーンの國末貞仁さん。めったに触れることのできない楽器の"肌触り"を感じて、子どもたちも新たな発見をしたようだ。
●弦がふるえてる!
「鍵盤を押すと、押した所のダンパーがあがって、この弦をたたいているの、わかる?」と西川さんがたくさん張ってある弦を見せて言うと、生徒が思わず手を弦へ伸ばす。びぃーん、となって、音が止まる。 「ほら、今さわったらどうだった?」「ふるえてた。」「ふるえていたのが、さわったら音が止まっちゃったでしょう?弦がふるえるから音が出てるんです。だから、本当は弦はさわっちゃいけないの。でも今日は特別に少しだけさわってみてもいいので、ふるえを感じてみてね。」というと、近くの子は手をのばして「本当だ!」と西川さんの出した音の振動を感じる。
「本当はさわっちゃいけない、と言いましたが、実は現代曲の中には、楽譜の中に"弦をさわりなさい"と書いてある曲もあるんです。」「えーっ?どうやって弾くの?」「普通にこうやってすわっていて、ピアノを弾いていますよね。そして突然こうやって立ち上がって、中の弦をはじいて音を出す、というのをやったことがあります。お客さんは知らなくて、私が突然立ち上がったからびっくりしちゃったことがありました。」最初の幻想即興曲では、ピアノにみな身体をくっつけながらその音の響きを感じた。
ピアノの2曲目はサン=サーンスの『白鳥』。「みんな近所で鳥はよく見る?私は家の近くでカルガモが歩いているのを見たこともあります。」「えー、この近くで!?」「これから弾く曲は『白鳥』という曲ですが、みんな白鳥は見たことがあるかな?白鳥って、水の上ではとっても優雅に泳いでいるんだけど、実は水の下ではどうなっているか想像したことある?」「足を動かして泳いでる。」「そう、水の下では、一生懸命に足をばたばたと動かしているんですよね。これから弾く曲も、メロディは美しい流れのようだけれど、その"ばたばた"と動くように、私の左手とか足とかが結構速く動いているんです。そんなところも見てくださいね。」と、演奏。「ほんとうに白鳥みたい!」と感心して見入っていた。
●それ、なあに?
サクソフォーンが登場すると、ぴかぴかの楽器にみんな興味津々。「重いの?」「持ってみる?」と、みんなの座席を回ってみな少しずつサクソフォーンをさわってみる。「このラッパみたいなところ、あたたかい!」「耳をあててみたら、巻貝みたいに海の音がしたよ!」「うわっ、ボタンがいっぱい!」と、みなそれぞれに発見をする。
「サクソフォーンはね、見た目はこんなに違うけれど、基本的な指づかいとかは、みんなの持っているリコーダーと同じで、実は似ている楽器なんだよ。」といって音を出してみる。「でも違うところがこのマウスピースで、さらに分解できてこういうものがついています。何でしょう?」「紙?」「木?」「竹!」「これは"葦"という植物からできている"リード"と言います。」と、みんなの前でリードのふるえる様子を見せると、どっと下からのぞきこむ。
「まだ何かあるよ?」とある生徒が気づく。「え?どれ?」と國末さんが逆に尋ねると、「口の中にピンクのが残ってる。」「あぁ!これね、これは実は油取り紙を折りたたんで口の中に入れているんです。」「なんで?」「こうやってマウスピースをすべらないようにずっとくわえてると口が痛くなるので、挟んでいるんですよ。」「へぇー」間近で見ると、色々なことに気づくようだ。
サクソフォーンの紹介に続いて、演奏を披露。最初は『千と千尋の神隠し』のテーマ曲「いつも何度でも」。「映画見たことある!この曲好き!」と子どもたちからも大人気。静かな曲だが、ゆったりとした音楽に心地よく身をゆだねて聴いていた。2曲目は雰囲気を変えてモンティの『チャールダーシュ』。「最初は大人っぽいゆっくりとした音色です。でも、途中で急にとても速く吹くところが出てきますので、楽しみに聴いていてくださいね。」と言うと、「まだかな、まだかな?」と、みんなドキドキしながら聴き、後半のとっても速い所に突入すると、「はやーい!すごーい!」とびっくり。吹ききると、盛んな拍手で盛り上がった。
●2人も混じって合奏...!?
最後には、みんなと合奏の共演!1曲目はリコーダーで『オーラ・リー』を合奏。そして2曲目には、みんな、リコーダー、木琴、キーボード、ドラム、グロッケン...とたくさんの楽器へ散らばって教室中で『茶色の小びん』の大合奏。そして指揮者も登場。見学にいらしていた保護者の方へ向かっておじぎをし、クラスのみんなと西川さん、國末さんへ向かって指揮をふる。
一度演奏し終わると、「チェンジしていい!?」との声が。「チェンジ?」と思って見ていると、みんな楽器を変えてもう一度『茶色の小びん』を弾きたいということだった。「いいよ。」と言うと、「やったー!次はこれ!」と、みな大急ぎで別の楽器へ向かう。「みんな用意はできた?」と指揮者が見渡すと、西川さんもチェンジして、ピアノの担当の子にピアノを弾いてもらい、西川さんは隣の子に教えてもらいながら、グロッケンに挑戦していた!
遊び心満載の2人の演奏家には、終わってからも「何か吹いて!」「ジブリの他の曲弾いて!」とまわりを囲んでせがんでいた。
●感想より~ぼくもがんばって日本代表になるから、二人もがんばってください
◆ 最初のショパンの曲では、すごく早くて聞き取れませんでした。でもだんだん、すごくいい曲だとわかりました。すごく印象に残りました。その後もずっと頭からはなれませんでした。
◆ 茶色の小びんの合奏は、いつもより迫力がありました。ぼくもピアノを習っています。もっと上手になりたいです。いつか幻想即興曲がひけるようになりたいです。
◆ しつもんで「それ重いですか??」ときいたとき「持って見る?」て聞かれて、ドキドキしていた気持ちと、おとしたらどうしようという気持ちでいっぱいでした。
◆ ピアノの線みたいなのをさわると、音がちがうとか、そこをさわらせてくれたりしてありがとうございました。
◆ ぼくもがんばって日本代表になるから、二人もがんばってください。
◆ ぼくは、モンティという曲に目をつけました。
◆ 私はピアノが大好きです。西川さんに負けないくらいのピアニストになりたいです!!
◆ サックスがもとの名前がサクソフォーンだとは、知りませんでした。息をすう時すごくすっているのが、音でわかりました。
◆ 今日一緒に合奏した時に、ふだんふいていた茶色のこびんが、何だかとてもきれいな音に聞こえました。それに、合奏している時すごく楽しかったです。また一緒に合奏してください。
●感想より~真剣に演奏していてかっこいいと思った
◆ サクソフォーンは、あんなにぶんかいできるなんて思いもしませんでした。あと、とてもすてきだったのが、千と千尋の神隠しです。私もその曲が大好きで、聞くことが楽しみでした。
◆ 生でプロの人がピアノをひいているのを見るのは初めてで、すごく感激しました。特に「白鳥」の時の手は、本当の白鳥の羽みたいですごかったです。
◆ ショパンの幻想即興曲があそこまですごいとは思いませんでした。すごい迫力があって「ここに注目してごらん」といっていた木のところを見てみたら、ポンポンと速く木が上がっていたので、すごかったし、おもしろかったです。
◆ サクソフォーンでひくのはむずかしいのに、軽々とひいて、あげくのはてには、チャールダーシュで後半はすごく早かったので、びっくりしました。こんなにいっぱいうまくひけるんだ~と思いました。私は今まで、こんなにすごいんだ~と思ったのは初めてでした。
◆ 話している様子とちがって、ひく時は、すごいしんけんにひいていて、見ててかっこいいと思いました。
◆ 4番目の曲の時、途中から早くなります、と言った時私は、どうやるのかなと、わくわくしていました。そしたら途中から早くなっていて、私は、ビックリしました。
◆ 一緒にオーラリーをやりました。そのあと、ぼくたちが練習していた茶色の小びんをやりました。西川さんはピアノだったのに、グロッケンもやっていました。
◆ ぼくが一番きれいだなーと思ったのは、千と千尋の神隠しのテーマ曲でした。西川さんがピアノをひいていたのを最初に見ながら聞きました。すごいなめらかにひいていました。ぼくもあんなふうにひけたらなーと思いました。今度は國末さんがふいていたサクソフォーンを見ながら聞いていました。こっちもすごくきれいな音が出ていました。
演奏者
西東京市在住。桐朋女子高等学校音楽科を首席で卒業後、桐朋学園大学音楽学部卒業。1998年ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞受賞など、国内外の多数のコンクールで優勝。モスクワのチャイコフスキー記念モスクワ音楽院大ホールにて、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番を演奏。併せてCD録音を行いアメリカで発売。国内のみならずオーストリア(ザルツブルグ)・ウルグアイ・フィリピン・イタリア・アメリカ・香港・シンガポールなど世界各国でソロ・室内楽・オーケストラとの共演で活躍し高い評価を得ている。 「西川潤子のピアノ日記」
香川県立高松高等学校、東京芸術大学を経て、同大学院修士課程修了。1996年第13回香川ジュニア音楽コンクールにおいて管弦打楽器部門総合第1位、併せて香川県知事賞受賞。同コンクール受賞者記念演奏会「'96高松テルサ音楽祭」においてグランプリ獲得。第4回若手奏者のためのコンペティション第1位。 第22回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門第3位。 これまでにサクソフォーンを西宇徹、須川展也、石田智子、二宮和弘、冨岡和男の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。國末貞仁公式ブログ:http://saxkunisue.blog17.fc2.com/
プログラム
ショパン「幻想即興曲(ピアノ)
久石譲「いつも何度でも」(サクソフォーン)
サン=サーンス/ゴドフスキー「白鳥」(ピアノ)
モンティ「チャールダーシュ」(サクソフォーン)
プールトン「オーラ・リー」(リコーダー合奏)
ウィンナー「茶色の小ひん」(合奏)
エフエム西東京「西川潤子のようこそクラシック!」で3/26にクラスコンサートの様子を放送。
「西川潤子のピアノ日記」には西川さんのコメントが!