北本市立東小学校へは、ピアノの高木早苗さんと、サクソフォーンの國末貞仁さんがクラスコンサートへ出かけた。楽しいお話とともに、高木さんを囲む子供たちの元気な声と、サクソフォーンのあたたかい音色が響き渡った。
●音楽で世界旅行をしよう!
今日のテーマは「世界旅行をしよう!」ちょうど、世界各国のあいさつを勉強した4年生の作った各国のにこやかなお面が飾られていた。高木さんは、プログラムの裏面に描かれた世界地図を見せながら、イギリス~ポーランド~フランス~アメリカ~ブラジル!といろいろな国の作曲家の音楽を演奏で紹介。
まず始めは"イギリス"よりエルガーの『愛の挨拶』のデュオで、音楽の"こんにちは"を届ける。ゆったりとしたピアノとあたたかいサクソフォーンの音色との会話のようなかけあいに、雨の音楽室が、ふわーっと明るく、あたたかくなるようだった。
次はピアノのまわりに集まり、ピアノについてクイズ。「この楽器、ピアノって言うよね。何で"ピアノ"って言うのでしょう?1番:アルフレッド・ピアーノさんという人が作った。2番:小さい音"ピアノ"から大きい音"フォルテ"まで、という意味の"ピアノフォルテ"という言葉が、短くなって"ピアノ"だけになった。3番:"ピアノ"という町で発明された。」と問いかけると、元気よく手を挙げて答える。
2曲目は、ショパンの『革命』。「みんな、ショパンって知ってる?」「知ってる!聞いたらわかる。」「そうね。たとえばこういう曲とか知ってるかな...」と、1フレーズを弾いてみると、「知ってる!胃のお薬の曲!」「そうそう!これはショパンのプレリュードという曲です。それからこの曲も使われているよね。」と、いくつかのショパンの名曲を少しずつ奏でてみると、テレビっ子の子供たちは「ショパンって、有名な曲たくさんつくったんだね!」と。
「この教室にもショパンさんいるんだけど、どこかな...?」と促すと、みんな音楽室を探し「あーっ!いた!あそこの真ん中にいる人!」と飾ってあった肖像画を指す。『革命』を弾き終えると拍手の中で「みんな、この曲を聞いて、どんな気持ちがした?ショパンさんは、どんな気持ちで作ったのだと思う?」「おこってる」「はげしい」「つらい」「こわい」。次はがらっと雰囲気を変えて、フランスのドビュッシーの『月の光』を演奏。「今度はやさしい音がした」。
●リードがふるえる様子、見てて!
続いては、國末さんがサクソフォーンの紹介。「これがサクソフォーンという楽器です。みんな"サックス、サックス"と言うけれど、実は"アドルフ・サックスさん"という人が作った楽器なんです。"フォーン"というのは、音という意味で、サックスさんの作った楽器だから、サックス・フォーンと名づけられました。あなたはなんていう名前?」「かわむらです。」「そうか。そうしたら、あなたがこの楽器を発明していたら、この楽器は"カワムラフォーン"と呼ばれていたかもしれませんね。」というと、みんな爆笑。
「さて、このサクソフォーンは、見た目金ぴかですが、何でできていると思う?」「金!」「これ全部金!!それは、すごーく高いなぁ。まわりは金メッキなんだけれど、中は真鍮という金属でできています。弦楽器にヴァイオリンやチェロがあるように、サクソフォーンにも、いろいろな大きさや種類があって、大きいものだと、こうやって持って吹けないので、台に置いてふくものもあります。」「それもサックスなんだ!」とびっくり。
「ではここで問題。管楽器には、"金管楽器"と"木管楽器"とがありますが、サクソフォーンはどちらでしょう!?」「金管!...いや、それだと簡単すぎるから、木管?」「正解は、木管楽器でした。なぜかと言うと、この部分・・・」と、マウスピースを分解すると、「おー、分解できるんだ!」とどよめく。「これは"リード"と言って、いつも一生懸命ここに息を吹きつけてふるわせて音を出しています。でも今日は特別に、逆から息を吸ってみます。そうすると、このリードがふるえる様子が見えるから、よく見てみてね。」と、みんなの席の前に行って、「スゥーッ」と息を吸ってみる。「あっ動いた!見えた!」「えーっ、もう1回!」「じゃあ、こんどはそっちに行くから。」というと、みんな席から立ち上がってのぞきこむ。
次の曲は、『Sax-O-Phun』という曲。「フン・フン・フン・フン...と笑っているような所がたくさんできてくるので聴いていてくださいね!」と言って演奏を始めると、笑っている様子のところで子どもたちが気づいて笑みがこぼれる。國末さんは子どもたちの様子を見ながら毎回違う"笑い方"をしてみなを楽しませた。吹き終わると、「あー、笑いすぎておなかがいたくなった!みんなも大笑いするとおなかがいたくなるでしょ?サックスも、吹くときにおなかを使うからね。」と。
続いては、ミヨーのスカラムーシュより『ブラジルの女。』サンバのリズムをみなに教えて、リズムを取りながら格好よく演奏。間近で聴くサクソフォーンの音の響きが音楽室に充満するのを感じながら、みな真剣に聴き入っていた。
●もっと見せて!
最後にはみんな各々の楽器の所へ散らばって、「茶色の小びん」を一緒に合奏。リコーダー、ピアニカ、木琴、鉄琴、キーボード、タンバリンなどたくさんの楽器を一生懸命に演奏してくれた。國末さんは少しずつアレンジを加えながら共演。そして、東小学校の校歌をはずむように元気に歌ってしめくくった。「アンコール!」の声には『浜辺の歌』や『チャールダーシュ』などを演奏して応えた。
名残惜しい生徒たちは、授業が終わっても二人を囲んで、「サックス見せて!どうやって押すの?」「これが楽譜かー」と興味津々。ピアノのまわりにもまた集まってきて、今度は鍵盤を押した時のダンパーの様子を、1つ1つ別の角度から見てみる。「ほら、ここ、今上がってまた下がったでしょ?」と、ていねいに教えてくれる高木さん。興味のつきない1時間が終わった。
演奏者
東京都出身。5歳よりピアノを始め、東京都立芸術高等学校音楽科を経て、東京芸術大学器楽科卒業。卒業後渡独し、ミュンヘン国立音楽大学大学院マイスタークラス修了。これまでに鷹取淑子、小林仁、クラウス・シルデ、ミヒャエル・シェーファーの各氏に師事。1990年第44回全日本学生音楽コンクール東京大会高校の部奨励賞受賞。1991年ピティナ・ピアノコンペティションG級審査員特別賞受賞。'92年霧島国際音楽祭奨励賞受賞。2000年第2回21世紀ピアノコンール第1位入賞。ミュンヘン、千葉県、長野県、東京・王子ホールにてソロリサイタル開催。現在、東京都立芸術高等学校非常勤講師、「ピアノ・トリニテ」メンバー。
香川県立高松高等学校、東京芸術大学を経て、同大学院修士課程修了。1996年第13回香川ジュニア音楽コンクールにおいて管弦打楽器部門総合第1位、併せて香川県知事賞受賞。同コンクール受賞者記念演奏会「'96高松テルサ音楽祭」においてグランプリ獲得。第4回若手奏者のためのコンペティション第1位。 第22回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門第3位。 これまでにサクソフォーンを西宇徹、須川展也、石田智子、二宮和弘、冨岡和男の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。國末貞仁公式ブログ:http://saxkunisue.blog17.fc2.com/
プログラム 「クラシック音楽で世界旅行しよう!」
<イギリス>エルガー:愛の挨拶(サクソフォーン)
<ポーランド>ショパン:革命のエチュード(ピアノ)
<フランス>ドビュッシー:月の光(ピアノ)
<アメリカ>R.ヴィードフ:"Sax-O-Phun"(サクソフォーン)
<ブラジル>ミヨー:スカラムーシュより「ブラジルの女」(サクソフォーン)
ウィンナー:茶色のこびん(合奏)
東小学校校歌 (合唱)
<日本>成田為三:浜辺の歌
<ハンガリー>モンティ:チャールダーシュ