北本市石戸小学校のクラスコンサートには、埼玉県知事の上田きよし氏、北本市長石津賢治氏も見学に来られた。子どもたちと一緒に、音楽の先生や校長先生、見学の保護者もみんなで参加して楽しむコンサートとなった。
●"耳"と"目"と"身体"で感じる音楽の授業
「今日は、教科書はありません。でも今日は、普段できない、音楽の勉強です。とっても素敵な二人の演奏家の方が、こんな近くで演奏してくださるために来てくださいました。先生もとても楽しみにしています。ホールで聴くことはできても、こんな間近で聴くことはできません。ぜひ今日は、"耳"と"目"で音楽を感じて、楽しみましょう」という音楽の先生の紹介とともに、 石戸小学校のクラスコンサートはスタートした。
ピアノの佐藤展子さんの周りを囲んだ子供たちは、初めてピアノの中をまじまじと見る。 「誰か鍵盤を押してみて。」と言うと、「押したい!」と誰かが「ポーン」と音を出してみる。「あっ、動いてる!」
「何でこんなに大きな音が出るかというと...
みんな、下にもぐってみたことある?」という声に、みんなピアノの下をのぞきこむ。
「板のようなものが見える?」
「これかなー」「こっち?」「コンコン...」
「そう、それそれ!それを触っていてね!」と言いつつ、「ジャーン!」。
「おぉーっ」「響いた!」と、ピアノの音の震えを自らの手で感じる。
●"絶対にこれがいい"はない
「小犬のワルツ」「月の光」「インマークライナー」「白鳥」とピアノとクラリネットでのコンサートを進めていく中で、質問コーナーでは、たくさんの質問が。「小さい頃の夢は何でしたか?」「一番好きな曲は?」「何で演奏家になろうと思ったのですか?」など、様々な質問が飛ぶ。
「どのくらいでそんなに上手になれるのですか?」という質問に、「みんなが今の演奏を上手と思ってくれたとしたら、それは、今日までかかりました。大きいコンサートホールで弾く時も、今日のようにみんなの前で弾く時も同じように、少しでもよい音楽が届けられるよう一生懸命練習しています。」と佐藤さん。春澤さんも、「時間の長さは、いくらかかってもいいと思います。楽しんで、いっぱい練習したら、それだけうまくなると思います。」と答える。
「ピアノやクラリネットをやっている時に、一番苦労したことは?」という問いには、二人とも、「音楽には、"絶対にこれがいい"というものはないので、一曲を仕上げるのには、こうしたらいいかな、ああしたらいいかな、といつもあれこれ苦労しています。」という答え。
みんなにとって勇気や希望がわいてくるとともに、どんなにうまくなっても、毎回毎回、さらによいものを目指してがんばっている演奏家の姿が垣間見られた。
昼食の時間には、午前中のクラスと一緒に教室で給食。時間切れで聞けなかった質問やおしゃべりに花が咲いた。 |
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●県知事も一緒に『ふるさと』を
午後のクラスには、上田きよし埼玉県知事や石津北本市長がご見学。みんなの得意な「オーラリー」のリコーダーを、ピアノとクラリネットをリコーダーで共演する姿や、次々と出てくるするどい質問に、笑顔をほころばせる。
音楽の仲内先生も、「いつもはできないから、今日は私も楽しんで吹かせていただきます!」と、みんなと一緒にリコーダーを演奏したり、校歌の合唱では、佐藤校長先生も嬉しそうに一緒に混じって参加する姿も見られた。
「では、またみんなと会えますように、という気持ちをこめて、『Good-byまた明日ね』という曲を最後にみんなで歌いましょう。」という佐藤さんの呼びかけに、みな、とても澄んだきれいな声で応えてくれた。みんなが大好きだという曲に、クラリネットの温かい音色も溶け込んで、冬空の澄んだ空気に、素敵な音楽がしみわたった。
お礼の花束の後、音楽の先生の呼びかけで、「今日はたくさんのゲストの方も見えていますので、みなさんで一緒に『ふるさと』を歌いましょう」と、上田埼玉県知事、石津北本市長、滝瀬埼玉県議会議員、小尾北本市教育長を始め、先生や保護者の方もみなでピアノを囲んだ。
子どもたちはこの日のために、『ふるさと』の歌詞を表した手話を覚え、「うさぎ」や「川」を手で表しながら元気に歌った。春澤さんも、みんなの手を見て教えてもらいながら、一緒に手話にも挑戦。
上田県知事からは、「みんながとても一生懸命に聴いて、歌っている様子が印象的だった。」というメッセージをいただいたように、みんなのあたたかく明るい笑顔が光るクラスコンサートになった。
趣きのある校舎 |
演奏者紹介
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。
1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。
1998年彩の国埼玉新進音楽家オーディションに合格。マラソンコンサートに出演。 2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。東京音楽大学シンフォニーオーケストラと共演。英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学、C.ベンソン氏に師事。
2001年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ受賞。
2002年沼尻竜典氏指揮・日本フィルハーモニー交響楽団と共演。越谷、ヤマハ銀座店にてリサイタル開催。 2005年越谷市にてリサイタル開催
国立音楽大学卒業。中学・高校と全日本吹奏楽コンクール、全日本アンサンブルコンテスト全国大会で3年連続金賞等数々受賞。
1989年、ベルギーで開催されたプレ・ユーロ・ジャパンの演奏旅行に参加。1997年、1999年、2000年、パリ・オペラ座のスーパーソリスト、J.F.ヴェルディエ氏のフランス夏期講習会に参加。 2000年、第5回日本クラリネットコンクール入賞。同年、彩の国アーティスト・デビューコンサートに出演。現在、小・中学校でのリサイタルや吹奏楽指導、またソリストとして活動中。
プログラム
○ショパン「小犬のワルツ」(ピアノ)
○ドビュッシー「月の光」(ピアノ)
○シュライナー「インマー・クライナー」(クラリネット)
○サン=サーンス『動物の謝肉祭』より「白鳥」(クラリネット)
○プールトン「オーラリー」(リコーダー)
○北本市立石戸小学校校歌(合唱)
○若松歓「Good-byまた明日ね」(合唱)
アンコール:「ふるさと」(手話つき合唱)