「先生に教わった曲は見事に弾けるけども、楽譜だけを渡してもどう弾いたら良いのかわからない子がいる。コンクールで優秀な成績をおさめても、音楽家として自立しているかどうかは別。」そんな話をよく聞きます。「自立」というのは結構あいまいな言葉ですが、音楽家にとっての自立とはなんでしょう。いかに上手に演奏できても、先生に言われるがままにしか演奏できないようでは、自立した音楽家とは呼びにくいのではないでしょうか。
ピティナでは来年、『「音楽総合力UP」ワークショップ』として、音楽の基礎力とは何か、基礎力を鍛えるにはどうすれば良いのかを考え直すワークショップを行ないます。講師の先生方に、お話をうかがいました。 | 武田真理先生インタビュー | 佐々木邦雄先生インタビュー | ─ 先生の考える「音楽の基礎力」についてお聞かせください。
「音楽の基礎力」とは楽譜を読み込む力です。それは音符を追うだけでなく、音符の向こう側にあるものまで見通す力です。ピティナのコンペをはじめ、多数のコンクールの演奏を聴く機会がありますが、「とてもよく弾けているけれども、きちんと楽譜を読んでいない」演奏に出会うことが少なくありません。音楽の一番の基礎力は楽譜をいかに読めるかという読譜の力だと思っています。 ─ 先生は、第2回の「音楽史」を担当してくださいますね。お話の概要についてお聞かせください。
ピアノの製作技術の発達と演奏技術や作品の変化は、密接に関係しあいながら音楽史が刻まれてきました。2時間でお話できることは限られてしまいますが、その変遷についてお話したいと思っています。 ─ ワークショップの受講者は、どのような方を対象に考えていらっしゃいますか?
もちろん、できることならピアノを演奏する全ての方々に受けていただきたいですが、時間的な制約からも、今回はピアノ指導の先生方を主な対象に考えています。さらに、10回の講座をトータルで聞いてもらえる方というのが一番大きな条件なのかもしれません。単発の講座は、世の中にたくさんあります。そうではなくて、これはトータルで聞いてもらうことによって、音楽の基礎力を総合的に見直すことができるのではないかと思っています。私たち講師陣は、それぞれの持ち時間に自分たちの好きなことをお話するというのではありません。全体としてまとまったひとつの内容となるように、お互い意思疎通をし、連携しあってそれぞれの講座の内容を決めていく予定です。 ピティナ・メディア委員の佐々木邦雄先生は、来年ピティナが主催する「音楽総合力UPワークショップ」のチーフとして、全体のガイド的な役割を担われます。ソルフェージュやアナリーゼといった「基礎」の技術が、指導に必要となる局面について、佐々木先生にお伺いしました。
─ 先生がお考えの「自立した音楽家」とは?
一言で言うと「自分で考えられる人」ですね。何か1つを与えられたら、そこから自分なりの回答を導き出せる人。例えば、ある楽譜を与えられたら自分なりに、自信を持って弾くことができる人です。 ─ 来年行なわれるワークショップについてお聞かせください。
日本では、音楽というのは一人ないし、ごく少ない人数の師匠から習うもので、あとは独力で勉強していくしかないというようなケースが多いのですが、来年行なうワークショップでは、アナリーゼや即興理論を深く習得された複数の先生方から、生きた情報を受け取ることができます。その中から、自分なりに必要なものを消化して、栄養として欲しいですね。ピアノ指導にも音楽の基礎力が必要です。ピアノを弾くといっても、その根底には音楽があるわけです。音楽をピアノで表現するわけですよね。この機会に音楽を「総合的に」とらえなおしてはいかがでしょうか! (取材・構成:實方康介・永田夏樹)
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