4.レポート
最初の挨拶に出た播本枝未子フェスティバル委員長(当協会理事)からも、これだけの楽器を一堂に集めた企画は今後そう簡単に実現しない、との補足説明が なされた。紹介を受けて登場した武久先生、アシスタントの山川節子先生とともに、数ある楽器の間を縦横無尽に移動し、歴史的なエピソードをユーモアたっぷ りに紹介しながら、次々と流麗な演奏を披露してくれた。
またチェンバロの蓋を開け閉めする事によって音量の調節をする、という現代ではちょっと見られない奏法や、アクションモデル(チェンバロとクリスト フォーリのピアノ)を使っての打鍵の違い、同じバッハのインヴェンションを全ての楽器で弾き比べる、などという楽しいプレゼンに興味をそそられた観客も多 かったようだ。特に後半に入ってからはバッハのインヴェンション、またモーツァルトのピアノソナタ(シュタインのピアノ、ヴァルターのピアノ)と現代のピ アノ指導者・学習者におなじみの曲をモダン・ピアノ以外の楽器の演奏で聴く、というまたとない体験により、多くの事を感じ取って頂けたと思う。 最後は先生のシャコンヌの演奏を堪能した後、久保田チェンバロ代表の久保田彰さんをはじめ、若手のスタッフもすべて舞台上にお呼びしてその労をねぎらい、3時間の講座は幕を閉じた。 【当日の使用楽器】 ・イタリアン ヴァージナル:16世紀ヴェネツィアのモデル ・イタリアン チェンバロ:一段鍵盤17世紀のモデル ・フレミッシュ(フランドル地方の様式)二段鍵盤チェンバロ:18世紀のモデル ・ジルバーマン型クラヴィコード:18世紀モデル ・ジャーマン二段鍵盤チェンバロ:18世紀モデル ・クリストーフォリ考案の最初のピアノ:18世紀初頭フィレンツェ ・ジルバーマンによるドイツ初のピアノ:18世紀中頃フライベルク
・ヴァルターアクションのピアノ:18世紀末ウィーン ・近代のピアノ スタインウェイ社:20世紀アメリカ(参考) <ロビー展示> ・フレミッシュヴァージナル(フランドル地方の様式による小型チェンバロ) ・ルッカースによる二段鍵盤チェンバロ(復元楽器) |