2019年10月4日(金)にカワイ表参道コンサートサロンパウゼにて田崎 悦子先生をお招きし、「ピアニスト 田崎悦子の大人のためのピアノ・ワークショップJoy of Music 40+ vol.14 第1回(全2回)」を開催いたしました。
世界的ピアニスト田崎悦子さんのレッスンでみるみると変わりゆく音楽に驚かされる、14回目を迎えた大人のためのピアノ・ワークショップJoy of Music 40+。10月4日の今日も3名の受講生を迎え、「田崎マジック」に魅せられたたくさんの聴講生がパウゼに集いました。
まずはショパン作曲《幻想曲Op.49》を演奏された吉田路子さんのレッスン。なぜその曲を選んだか、という問いから始まり、フレーズ、ハーモニー、リズムをキーワードに曲の世界を探っていきます。曲の冒頭marcia(行進)は出だしの重要な部分であり、単純な音形であるゆえの、表現の難しさがあります。どこへ歩いて行くのか、目標地点を考えるというアドバイスを受け、吉田さんの演奏が芯の通ったものへと変わりました。道筋を考えるということはクレッシェンドやアッチェレランドにも通じるもので、音楽を辿ると同時に逆算して作っていくことを、アドバイスくださいました。また、曲の魅力自身で問い、その魅力を最大限に引き出す演奏の工夫をすることは、作曲家の声を聞く演奏の醍醐味のように感じられました。
次にリスト作曲《巡礼の年 第三年S.163》〈エステ荘の噴水〉を井上真理さんが演奏されました。曲を通して輝きを放つトレモロ、その中で浮かび上がる旋律、バランスがとても難しい曲です。先生はポイントとして、すべてを弾こうと思わず特に大切な音を意識して選びながら演奏することを挙げられました。そのことが体を固めない楽な演奏につながり、アドバイスを受けた井上さんの音は柔らかくなって、温度が変わったかのようでした。ハーモニーが変わる時に虹のように色を変えて、という先生のアドバイスが、きらびやかな音の世界に多彩な色を加えた演奏を引き出しました。
最後に受講されたのは、ブラームス作曲《8つの小品Op.76》より第1,2番のカプリッチョを演奏の乾佳世子さん。リストと同世代に作品を残したブラームスは古典主義的な音楽が特徴的で、すべての音を深い音の粒で弾くことがポイントです、とお話しされた田崎先生。音を一つ一つ弾かずに、一つのフレーズの形をなぞる感覚で全体を紡いでいきます。第2番はスタッカートが絶えず用いられ、ユーモアのある曲です。いつも真面目なブラームスの遊び(心)を想像すると愛おしさを感じる、という先生のことばからは、ピアニストとしての曲への向き合い方が感じられます。技術的な面では肩に力が入らないように、音型を弾く際に手が内に入らないように、楕円を描くように外に手をやることなどをアドバイスされました。
「受講生と先生だけの空間」を作らないレッスンを目指して始められたという田崎先生のレッスンは、会場全体への問いかけで聴講生も巻き込み、楽しくあっという間に時間が過ぎていきました。次回の第2回は18日です。2週間の練習を経て、3名の受講生の魅力的な演奏がどのように磨かれるのか、次回のレッスンも楽しみです。
カワイ音楽振興会ホームページより転載