2019年5月16日(木)に倉敷市芸文館 第1練習室にて川崎 紫明先生をお招きし、「川崎紫明音符ビッツ 1本指からのピアノセミナー」を開催いたしました。
「音符ビッツ」は以前から存じ上げておりましたが、初めて講座に参加し、創始者である川崎紫明先生から直々に理念を伺うことができました。「音符ビッツ」は、鈴木メソッドやドーマン博士の脳科学に基づき、川崎先生が音楽教育や発達心理学の視点から開発されたソルフェージュ教材です。
4歳の視覚臨界期を逃さず、視覚と聴覚の統合と手と目を結ぶ運動野の発達を促し、集中力を養います。読譜能力と音楽の耳をバランスよく育てると共に、音楽に限らず物事に没頭する楽しみを味わうことができるよう導いていきます。
「音符ビッツ」は、1枚に3音が並んだカードを用いて、音符を上行、下行、山や谷のラインで読み取る訓練をします。100枚を超えるカードを目にもとまらぬ速さでめくりながら、「ドレミ」「ミレド」「ミレミ」「ファソファ」と音名を答えていく幼い子ども達の様子がビデオで紹介されました。大好きな遊びに没頭しているときのような集中力でした。
後発の「リズムビッツ」は、楽しく軽快な音源に合わせて、各々の音符の音価に合った動物の鳴き声を当てはめて読んでいきます。
昨年、出版されたピアノの導入教材「音符ビッツ ピアノ1」は、音符ビッツの1番から18番に対応しており、2指の一本指からスタートします。2指は一番感覚の敏感な指ですから、集中力を高めることや美しいフォームを作るのに適しており、2指を中心に骨の山を育て、腕、手、指の脱力と手首の安定を獲得していきます。
レッスン前には、音の方向を表した「なぞるビッツ」というカードで、上行や下行、山や谷の折れ線の書かれた矢印を2指でなぞっていきます。集中力が高まったところで、まねき猫のポーズで、手のフォームを整え、2指の一本指で鍵盤を弾いていきます。鍵盤には「アリーちゃん鍵盤」という厚紙でできた立体的な音名の表示板を設置し、音符と対応する鍵盤が把握しやすいよう工夫されています。手のフォームが出来上がったら、2回目は5本の指で弾いていきます。
他のシリーズの教本と並行して利用したり、復習に使ったりすることも可能とのことです。どの教材にも発達心理学や脳科学に基づいた工夫がたくさん詰まっており、大変説得力のある内容でした。
また、アプローチの方法で、「説明ではなく、見せて模倣させる」「指導者が集中すれば、子どもも集中する」などの言葉も印象に残りました。スローな語りの中に珠玉の言葉が多く散りばめられていました。川崎先生の能力開発やピアノ指導への情熱や探求心、日々の生徒さんとの向き合い方が垣間見える講座でした。
講座後、このピアノ教本にじっくり目を通してみますと、1巻は、ト音譜表のみで右手しか使わないものの1冊目でポジションの移動や高音のド(2点ハ)、8分音符や3連符も習得できる構成となっています。早い段階でポジションの移動をして指と音を固定しないこと、スタートから1年くらいで3連符の連打を弾くことなど、難しいことも大きな楽譜で無理なく力を付けていける教材だと感じました。指の分化が進んでいない幼い生徒さんや不器用な生徒さんにも音列や鍵盤の高低をスモールステップで着実に理解して頂けることでしょう。未刊の2巻はどのような学習内容がどのような順序で進んでいくのか楽しみです。