文・山本美芽(音楽ライター)
日程:2019年2月7日(木)
会場:日暮里サニーホール コンサートサロン
素晴らしい指導者として知られる永瀬まゆみ先生のお嬢様として、その指導法を受け継いだ永瀬礼佳先生。そのセミナーの3回目です。今回は導入期の指導についてどのようにとらえたらいいのかある程度概論的なお話でした。
これはまゆみ先生のお考えだったそうですが、導入期の柱は5つ、楽典・リズム・テクニック・読譜・音感。おそらく多くの教室では、これらについて教本で扱う曲のなかで、四分音符が出てきたね、ドレミで読んでみよう、リズムを打って、のばすときに数えて、という具合にこれらを総合的に合わせたものとして学んでいます。
しかしまゆみ先生の指導法は、曲に出てくる前に「さきどり」で別メニューを考えて、個々に指導していくというものです。なかでも、導入の段階で楽典を入れるというのは画期的なアイデア。むずかしすぎるのではと思ってしまいますが、小難しい用語を子どもでもわかるような身近なものに置き換えてしまえば音程や調性など概念そのものはどんどん理解が可能であり、前倒しで教えると読譜が早くなり、いいことづくめといえるのです。
今回は、楽典、リズム、テクニック、読譜、音感、それぞれの指導方法についてお話がありました。一例をあげると、旗を使った和音のききわけ。音符を動物の鳴き声に置き換える。線と間の覚え方など。これらひとつひとつの「科目」についてのカリキュラムであり指導法についてお話がありましたが、それぞれ非常に完成度の高いものでした。たとえば和音の指導は、一音会の旗を使った絶対音感指導などを永瀬まゆみ先生がまず徹底的に勉強してからそれを自分なりに消化してアレンジされています。
やはり指導法は徹底的に勉強し、生徒を観察したうえで、自分で作り上げるもの。そして「○○が終わらないと○○を教えられない」という考えではなく、吸収力のある時期にどんどん必要なものを入れていく。先入観にとらわらず、どんどん先取り。この考え方は、これから現場で求められる非常に重要なものになっていくことでしょう。
なお、ムジカノーヴァ3月号より、永瀬礼佳先生の「あやか先生の楽典ドリル」が連載開始です。こちらもあわせてご覧ください。
東京音楽大学卒。 2歳より、母である故・永瀬まゆみの手ほどきのもとピアノを始める。 桐朋学園大学音楽部付属子供のための音楽教室在籍中に数々のピアノコンクールで入賞。 高校より声楽を始め、「世界コーラスオリンピック2000」金賞(オーストリア)をはじめ、NHK全国学校音楽コンクール、全日本合唱コンクールなどの国内コンクールの全国大会においても数々の賞を受賞。 ヤマハ音楽教室システム講師を経て、現在永瀬音楽教室主宰。さいたま音の葉研究会代表。 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)正会員、同・さいたま音の葉ステーション代表、同・課題曲選定委員会(Aグループ)。 ピティナピアノコンペティション指導者賞8回受賞、2013年特別指導者賞受賞。 永瀬まゆみの指導を元に、現代の子供にマッチするよう更に進化させた独自の指導法が、月刊ミュージシャンやムジカノーヴァ等の音楽雑誌に多数掲載される。2019年3月よりムジカノーヴァにて「入会2年で音大入試問題が解けるようになる!あやか先生の楽典ドリル」を連載開始。 永瀬まゆみの著書やピアノの導入期におけるセミナー講師を務め、独自の指導法が大変話題となり、日本全国でセミナーを展開中。 ピティナステップアドバイザー、ピティナピアノコンペティション審査員。
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や まもと・みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。
ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。
「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続け、
多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。中村菊子、呉暁、樹原涼子などピアノ教本の著者・訳者からは厚い信頼を得ている。2006年―2010年の間、
夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」
(春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、
自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。ピアノを多喜靖美氏に師事。
室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、
参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。オフィシャルサイト http://mimeyama.jimdo.com/
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