【実施レポ】ぴあのノカラダカラダ in オキナワ(竹本絵己先生)

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2018/03/06
ぴあのノカラダカラダ in オキナワ
竹本絵己
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2017年10月2日(月)沖縄メディアアートセンタースタジオにて竹本絵己先生をお招きし、「ぴあのノカラダカラダ in オキナワ」という題で講座が開催されました。

竹本先生は前日の那覇秋季ステップでのアドバイザーもお務めになられました。その中での参加者を対象としたワンポイントレッスンも実施していただき、とても分かりやすく楽しいレッスンに受講者の緊張もほぐれ、会場からは笑いが起きたり大きく頷いてお聞きいただいたりと、皆様すっかり竹本先生のレッスンに惹き込まれていらっしゃるようでした。

その翌日の講座とありまして、「ぴあのノカラダカラダ」とはどんな内容なのだろうととても楽しみに参加させていただきました。 会場に着きますと、竹本先生は前日のお疲れも感じさせず溌剌とした笑顔で迎え入れてくださいました。
受付にて今回の講座の内容をおまとめいただいた資料を拝見しまして大変充実した内容に少し圧倒されておりましたところ、「さぁっ、まいりますよ!今日は盛り沢山の内容ですので少し早口になりますが皆様頑張ってついてきてくださいね!」と竹本先生が仰り「ぴあのノカラダカラダ in オキナワ」が始まりました。

竹本先生は筋肉の自由が利かなくなってしまうジストニアという病を右手に発症された経験がお有りで、初めにそのお話しをお聞かせくださいました。この病気は、いまだに病態の解明が進んでおらず根本的な治療法も見つかっていないというのが現状のようです。
そんな病との果てしないと思われた闘病生活ですが、完治までに40年という年月を要した方がいらっしゃる一方で竹本先生は8ヶ月で治されたとのお話しには驚きの声が上がっていました。日常生活に支障が出る病だと耳にしたことがありましたので、大変なご苦労をなさりながら治療やリハビリに励まれ、こちらが想像し得ない程の凄まじい努力をされたのだろうと思います。
そのような経験をなさった竹本先生はその後、ピアノを弾くための身体(カラダ)についてお調べになり、様々な研究をされたそうです。

I-「ぴあのノカラダカラダ」には4つの変換がありました。

1-ピアノの「身体」からだ
2-ピアノの身体「空(カラ)」だ
3-ピアノの「殻」だからだ
4-ピアノ「野から 田から」だ

演奏のために「身体」のことを知り、演奏へ集中するために身体や心を空っぽにし、休日には身体や心を休めるために自然に触れて体を動かすお時間を設ける、といったことを大切にお考えになられているとの事でした。

II-「ヒトのカラダのマッピング」

続いては「ヒトのカラダのマッピング」と題し9項目の骨のお話しをしてくださいました。なんと、竹本先生は「骨フェチ」だそうで幼い頃から骨にとても興味をお持ちだったとの事です。私は「骨フェチ」という方に生まれて初めてお目にかかりました。 たくさんの骨の画像とともに竹本先生ならではのお話しを交えながら、どのように演奏に反映させるのかということを教えていただきました。

『骨が無ければ人間の体は保てない』とのお話しはとても興味深く聞かせていただきました。骨が大切なものだとはもちろん知っていますが「体が保てない」ということはこれまでに考えたことがなく、人体にとって骨がいかに大切であるかを改めて考えさせられました。

そして、中でも衝撃的なお話しは「刺されたら即死」するような部位ほど骨密度の高い骨に守られているそうです。肺や心臓を守る「肋骨」や「頭がい骨」「骨盤」などが挙げられるそうです。
『全身の骨を様々な筋肉が覆って人体を形成している』ということにも触れられ、『脊椎&骨盤はどんな造りになっている』のかでは横から見た背骨の画像が表示されました。背骨を横から見るとSの字を描いており、それによって「歩く」や「走る」という動きを可能にしているそうです。

ここでは、竹本先生が以前に頚椎ヘルニアにより左手の握力が一時ゼロにまでなられたと仰っていました。今では17kg程度まで回復されたとの事でしたがジストニアに続き本当に大変な体験を重ねられ、その度に想像し得ないような努力をなさって今のお身体を手に入れられたのだと心から尊敬致しました。
「両手の骨」の画像を見ますと、手首や手のひらの骨はとても面白い形状のものが集まっていました。そして、その周囲を「広背筋」「骨間筋」「小指外転筋」などの筋肉が覆っており、"手が広がらない"という方は骨間筋のところが板のようになっているのだそうです。
フィンガートレーニングの先生に通い始めた頃は竹本先生の手も板のようで手の甲に谷が無かったそうですが、ぐりぐりと刺激を与えるマッサージ(と言いましょうか)の結果、板のようではなくなり谷が出てきたそうです(でも、すごく痛いそうです)。 骨や筋肉だけでなく、血管についても教えていただきました。

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手の甲には静脈、手のひらには動脈があり動脈には酸素がたくさん含まれているそうです。会場の皆さんで手のひらに熱を集める合掌のポーズをしました。両手のひらを合わせて熱を集め、そのあとゆっくり離すと手と手の間に温かい空気の層ができます。
その空気を逃さないように指先をくっつけてアーチをつくり、ゆっくり鍵盤にのせると自然に丸いフォームができるとの事で竹本先生が実際に示してくださいましたが、とても綺麗な丸いフォームになっていました。早速その日のレッスンで試された先生方も多かったのではないでしょうか。

ほかには、脚の構造を知ることで足のどこでペダルを踏めばいいか考えることができるとの事でした。 「肩甲骨から指先まですべて手なのですよ!」という先生のお言葉を理解するためにお隣の席の方と肩甲骨の動きを確認し合いました。
それから、「ピアノを弾くとき腕はねじれています」と竹本先生が仰ると皆さん頭に「?」が浮かんでいる様子でしたが、延長コードをお使いになり2つの筋肉のねじれる様子を示していただくと確かにねじれていることがわかりました。実際にお見せいただき、私たちの「?」は解消されスッキリ致しました。

身体のことを少しずつ理解してきたところで『バーナム・ピアノテクニックーミニブック』の指導法について、たくさんのコツやアイディアお話しくださいました。

先のお話しを踏まえて骨や関節の使い方が重要なのはもちろんのことですが、先生は「emi語」というオリジナルの表現を用いてそれぞれの課題に出てくる動きを子供たちに伝わりやすくしていらっしゃいました。
「たまごちゃん」「くるん」「つるさん」「ぽんペタ」「重みのお引越し」など、ほかにもまだまだお有りでしたがどれも手の動きをイメージしやすく演奏の際に反映しやすいと思いました。何と言っても可愛らしい表現だということが生徒さんも大人でも楽しくなる気がしました。
手の圧のかけ方や重みの移動には、流行の「スクイーズ」を利用していらっしゃるとの事で、この日は食パンのスクイーズを見せていただきました。

また、先生のレッスンではマイフィンガーボードとマイ食パン(のスクイーズ)を生徒さんたちが持参し、お使いになっているそうです。
フィンガーボードの使い方として重要な点は、

1-一人一人に合う形を探る
2-常に新しい使い方を模索する
3-いつもそばに置いておくこと だと仰っていました。

たくさんのお話しをしていただき、講座の終盤に差し掛かったところで「さて!それでは今から皆様に問題を解いていただきます!」とのお声掛けと同時に1枚のプリントが配られました。そこには29個の問題がありました。
突然のことに一瞬どよめきが起きましたが、用語の綴りや意味、調性についてなどの質問を学生時代に戻ったように皆さん黙々と解いていらっしゃいました。 楽譜に記載された楽語には省略表記されているものも多くありますが、そういったものも省略せずにしっかり原語で書けることや、用語の語源を知るといった知識も指導をしていく上で非常に大切なことだと感じました。

盛り沢山の講座の最後はブルクミュラーの25の練習曲より2曲の楽曲分析と指導のポイントなどを解説してくださいました。
竹本先生がご自身でアナリーゼなさった2曲の楽譜を資料としてお配りくださり、先生の演奏を交えながら『アラベスク』ではメロディーに隠された作曲技法など、『貴婦人の乗馬』では半音階を滑らかに弾くための指導方法などについて教えていただきました。

「ぴあのノカラダカラダ」というタイトルを目にした際には演奏する上での身体の使い方のための講座だと思っておりましたが、それだけではなく骨や筋肉や血管まで細かく身体の仕組みを教えていただき、身近なテキストの中での指・手・腕、姿勢などの身体の使い方、そして楽曲分析やテクニックを上げるためのアプローチに至るまで、たくさんの貴重なお話しを本当にありがとうございました。

Rep:沖縄支部 平良菜摘
 

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