2018年2月12日(月)みずほ楽器スタジオPurezzaにて久元祐子先生による「作曲家別演奏法《ショパン》―ショパンのピアノ奏法」が開催されました。
ピアノに携わるレスナーさんや生徒さんにとってぜったいに欠かすことのできないショパンの音楽。国内外で活躍されているピアニスト久元先生からどんなお話や演奏が聞けるのか待ちに待った瞬間です。
ご著書『ショパンとプレイエル・ピアノ』(学研パブリッシング)を中心に、ショパンが弾いたピアノやその時代背景、バロック時代からの音楽の変遷とピアノの奏法がぎゅっとまとめられ、一瞬たりも聞き逃せないとても充実した2時間となりました。
プレイエル社、エラール社それぞれのピアノの構造と特徴はモダン・ピアノとの対比によりその魅力がさらにはっきりと伝えられました。当時ショパンに聴こえていた音はどんな音だったのか、会場のみなさんは頭の中で想像していらっしゃったのではないでしょうか。
また収録されている各楽曲をもとにペダリングやタッチなどの奏法、アゴーギクや音価、リズムについても紐解いていかれました。これまでぼんやりとしていたショパンの音楽像が、先生の解説によってその輪郭が生き生きと見えてきたようでした。
ショパン自身によるペダル記号をどのように捉えるか、当時のピアノの響きを想定してモダン・ピアノではダンパーペダルをオンかオフではなく、薄く踏んだハーフペダルや、細かい踏みかえを駆使して、ショパンの音楽を損なわないように見ていく必要があると仰っていました。またシフトペダルを上手く組み合わせて使っていくことで得られる、よりショパンらしいショパンの美学に沿った演奏効果を、実際の演奏を交えて紹介されると会場はまた一気に惹き込まれました。
今回のセミナーのなかで強く言われていたことは「ため息」のフレージング(>)はぜったいに逆(<)になってはいけないということでした。楽譜を細かなところまで読むこと、そして楽譜を見てそのまま演奏するのではなく、楽譜に書かれていることの背景をもっと深く読み込み、自分の演奏として聴衆に伝えること、これが大切なことだと伝えられました。
最後に、ショパンが弟子などのために書いた装飾も含めたポーランド・ナショナル・エディションに基づいた《ノクターン第2番》が演奏され、参加者はセミナー内で学んだことを反芻しながら会場は至福の空気に満たされていました。