2017年6月5日(月)、日響楽器池下店ホールにて石黒加須美先生をお招きし、 「ロマン派表現の基礎はブルグミュラーにあり!「ブルグミュラー25の練習曲」指導法」という題で、上半期ピアノ指導法シリーズセミナーの第4回が開催されました。
「導入期の音楽教育法」や「親学」などでは、すでに第一人者として定評のある石黒先生ですが、この日は、ピアニストである、長女の石黒美有さんとの共著、「ブルグミュラー25の練習曲 ロマン派の作品の指導法(別冊解説書付き)」をもとに、解説をしていただきました。
講座の前半は音楽の基礎知識を中心に、後半はそれぞれの曲のポイントを、美有先生のピアノ演奏と共に進められました。
曲集として使われることの多いブルグミュラーですが、本来は練習曲で、ピアノに必要なテクニックや表現方法が凝縮されています。ブルグミュラー(1806年生)の生きた時代は(ショパン、シューマンは1810年生)まさにロマン派で、一般市民も音楽を楽しむようになり、愛や恋のように呼吸や心の揺れをブルグミュラーも大切に表現しました。
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基礎知識より
1 テトラコードとは4つの音、スケールを形作るもの。音程は、全音全音半音になっていて、2つつなげたものが長音階。後半のテトラから2つつなげてできるのが属調(♯系は輝き、元気)。前半のテトラから下へ2つつなげてできるのが下属調(♭系は柔らかい、ほっとする)。
2 平行調は同じ調号で弾くので、同じ人が楽しんだり悲しんだりする。同主調は調号が違うので、違う人が悲しむ、というようにとらえるとよい。
3 ?(主和音)はお母さん。家。?(属和音)はお父さん。外へでる。緊張感。家に帰る。?(下属和音)はこども。彩り。お父さんより早く家に帰る。
4 借用和音(ドッペルドミナントや準固有和音など)
その和音だけで香らせる。感情の揺れを表現する。ブルグミュラーはたくさん使っている。
5 ビート ターナリ―ビート(付点四分音符ビート)は馬の歩行。8分の6拍子など。(9狩りや23かえりみち)バイナリービート(四分音符ビート)は2足歩行.。4分の4拍子など。
6 タッチ 指のどこを使うか、鍵盤にどのようにタッチするか、その方向やスピードによって、音色がものすごく変わる。
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各曲の説明より ごく一部を紹介します。
1 素直な心
cresc.dim.と松葉記号のクレッシェンド、デクレッシェンドの違い
cresc.dim.はそのとおり音の大きさを変える。それに対し松葉記号は歌ってほしいところに書いてある。
2 アラベスク
冒頭の和音のテンポを安定させるために、補足リズムを使う。うら拍に先生または生徒の右手で叩く音を入れる。次第に音無しでも意識できるようになる。
休符の役割 8分音符のところに音を入れてみて、違いを体感させる。
3 タランテラ
以前から毒グモ(タランチュラ)に刺された人が狂ったように踊るおどりと
言われてきたが、タンバリンや鈴を持って輪になって踊るおどり。子守歌になっているタランテラもあるそう。
どの曲も指導者は五線譜にスケールと和音をスラスラ書いて説明できるように。指導者がまず、理論や分析からその曲の明確なイメージを持つように。
長年の指導経験とコンクールの審査員、ステップのアドバイザーをされてきた石黒先生ならではの、指導への情熱がひしひしと感じられ、小学生にもわかるようにと工夫されたお話は、スーッと心に入ってくるようで、美有先生のピアノがまた素敵で、楽しい講座となりました。シリーズとしてじっくり時間をかけた講座をぜひ、と思いました。