【実施レポ】もっと知りたい!ピアノ教本~歴史と特徴~(山本美芽先生)

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2017/07/06
もっと知りたい!ピアノ教本~歴史と特徴~
文・仙石 桂

日程:2017年6月23日(金)
会場:カワイミュージックショップ仙台

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2017年6月23日(金)カワイミュージックショップ仙台にて、山本美芽先生のピアノ教本セミナーが開催されました。  昭和の時代から使われたきた海外の教本の話や、平成に入り生まれた多くの国産ピアノ教本の紹介、それらの教本の特性の細かい説明もあり、大変興味深い内容でした。   まず、昭和から平成にかけて、ピアノを習う子供たちの練習環境の変化についての話題から、講座は始まりました。共働きの家庭が増え、子どもの自宅練習にお母さんがついてあげることが難しくなった現代は、子どもが自分自身の力で曲をこなしていけるような、ゆっくりとした進度の教本が多く出版されているとのことでした。5線を使わないプレリーディング、3の指からの導入など、レッスン導入の仕方も本によって特徴があることが改めて理解できました。

歴史的な話では、アメリカのバスティン、ペースの全調メソッドから時代をさかのぼると、ハンガリーのバルトーク「ミクロコスモス」との共通点が見つかる話が、大変興味深かったです。現代の教本は「四期」をまんべんなく学習することを念頭に作られているものが多いそうですが、バルトークの「ミクロコスモス」は1930年代に生まれた教本だが四期のスタイルを意識して書かれ、さらに対位法や教会旋法が多く使われているので、ピアノ講師なら一度は目を通しておくべき教材との事でした。

 また、低年齢の子ども向けには「ゴーゴーピアノ1」「プチ・わかーるピアノA」などが紹介されました。日本でピアノのレッスンを始める時期は、バイエルやトンプソンが作られた1900年代半ばより低年齢化しています。これらの近年になって発売された国産教本では、学習内容はより細分化され、リトミックの要素が多く含まれています。低年齢の生徒さんが取り組みやすいような工夫が、様々なところから感じられました。

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ピアノ導入期の教材は多くの種類があり、幼児期の子ども達の個性を生かしながらレッスンを展開しようと考えると、教本選びは慎重にならざるを得ません。先生から紹介のあった、進度の速い教本、ゆっくりの教本、スパイラル学習を取り入れてる教本など、教本の特性をよく理解した上で、個々の生徒に合った教本選びをしたいと思いました。山本先生がおっしゃった「教本を教える」ではなく「教本で教える」という言葉は、いつも心に留めておきたいと思います。

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山本美芽

や まもと・みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。 ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。 「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続け、 多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。中村菊子、呉暁、樹原涼子などピアノ教本の著者・訳者からは厚い信頼を得ている。2006年―2010年の間、 夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」 (春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、 自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。ピアノを多喜靖美氏に師事。 室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、 参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。
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ピティナ仙台中央支部、仙台バスティン研究会  仙石 桂

宮城県仙台市出身。幼少よりヤマハ音楽教室に通う。宮城学院女子大学音楽科をピアノ専攻で卒業。上越教育大学大学院にて幼児教育専攻を修了。在学中よりピアノ講師を始める。中学校講師、専門学校講師を務めた後、現在は自宅でレッスンを行う傍ら、短大保育科で講師を務める。近年はピアノの先生のためのコーチング講座に通い、その理念をレッスンに取り入れている。カワイ音楽研究会、仙台バスティン研究会、全日本ピアノ指導者協会(PTNA)指導会員、全国大学音楽教育学会会員。


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