日程:2017年5月6日(祝・土)会場:王子ホール 主催:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会/企画:演奏研究委員会/協力:王子ホール
徹底研究シリーズ2017 『クラウディオ・ソアレス 生徒の「個性」を引き出す多角的処方箋』が、5月6日(土)王子ホールにて開催されました。
ブラジル出身のソアレス先生ですが、大阪を拠点とした日本での教育活動は既に30年を超え、門下からは多数の優秀な人材が輩出されるなど、その実績には枚挙にいとまがありません。
名実共に日本を代表するピアノ教育者の一人であるソアレス先生の指導法、教育に対する理念などに直接触れようと各地から沢山の方々が参加、熱気に包まれた一日となりました。
今回は、3つの部それぞれに設けられたテーマについて、映像やモデル生徒による演奏と実際の指導なども絡めながら、充実した講座が展開されました。
第1部 『J.S.バッハ アーティキュレーションの可能性について』
まず入口として、現代においてバッハ作品の演奏における解釈を難しくしている現状について、演奏の伝承の途絶、再びバッハ作品の演奏が盛んになるロマン派以降のバッハ解釈における問題点、20世紀後半におけるバッハ研究所の成果とその影響などの様々な要因に触れながらお話しされ、当時の楽器での演奏技術や演奏家たちが拘った演奏法というものを研究し把握することの重要性を説明されました。
続いて、アーティキュレーションを考えるにあたってまず大事な点として、アゴーギク(緩急の変化)の重要性と、クラヴィコードの持つ表現力について、拍感や強弱感までも表情豊かなアーティキュレーションで表現する F. ヴァレンティによるスカルラッティのソナタ(チェンバロ)の演奏などを交えて述べられ、この当時の演奏者のアゴーギクと響きへのこだわりが、参加者にも分かりやすく説明されました。
さらに、バッハの演奏における和声感覚の重要性、演奏者が和声の仕組みを理解し自分の言葉として身に付けることの大切さを訴えられ、ソアレス先生自身による、フランス組曲第2番ハ短調の実演と解説では、偽終止やドミナント、トニカ、シンコペーション、掛留など様々な音楽的な出来事が、豊かな表情を持ちながら絶妙なアーティキュレーションによってまさしく語るように表現され、会場を魅了しました。
1部の後半の公開レッスンでは、まず渡邉奏さん(小5)、次いで渡辺康太郎君(中2)が演奏。具体的な細かいアーティキュレーションの指示のほか、曲の主要な主題はどこにあるか、テンポの設定の基準(しゃべることの出来る早さ)、曲に対する和声的なアプローチなど、バッハの解釈に対して必要な様々な要素について、生徒に質問し考えさせながら理解を促して行くソアレス先生のレッスンに、生徒さんたちも柔軟な感性で応えていました。
最後に、アーティキュレーションを考えるにあたってのポイントを、ソアレス先生が箇条書きにしてくださいました。
- スタイル:初期のバロックであるか、ロココ様式の時代のものであるかの区別
- キャラクター:宗教音楽、世俗音楽、教育目的の音楽の区別
- 材料であるテーマやモチーフを認識した上で分析する
- 様々な要素(和声、対位法、強拍弱拍などのリズム)を考慮した上でのフレージング
- その時代の美的感覚について考える(音量変化は少なくcresc. dim. はほぼ無いなど)
- その時代に使われていた楽器とその演奏法を考慮し、その上で現代のピアノという楽器を生かす。
また、指導に当たっては、極力原典版を使い、バロックの基本を理解した上で生徒とともにアーティキュレーションを考えること。
撮影:財満和音・末木裕美(正会員/演奏研究委員)
■ 徹底研究レポート 後編(第2部、第3部)は、来週公開予定!
楽譜に書かれている事を、どこまで理解をして演奏しているのか」ソアレス先生のレッスンを通して、僕の音楽に足りない事、これから勉強するべき事が明確になりました。今までは何も考えずに演奏をしていました。しかし、和声を理解し曲の方向性を見極め、追求していく事で聴いている人の心にも伝わる演奏になる事がわかりました。
とても学びの多い1日でした。参加させて頂いた事に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
僕は今まで演奏することだけを考えていましたが、ソアレス先生のレッスンで知識が必要だとわかりました。
知識があると演奏が素晴らしいものになり、相手に伝えるための説得力も生まれてきます。
和声、歴史、作曲者の人生など、僕は知らない事が多いのでこれからたくさん勉強していこうと思います。
そして、一緒に参加した仲間の演奏にも刺激を受けました。これからもがんばっていきます。
ありがとうございました。
今回、ソアレス先生の公開講座を受講させていただき、とても有難い気持ちで、感謝で一杯です。 僕は、この講座を通して「和声を音楽に結びつけること」「自分の演奏を客観的にみて改善していくこと」の大切さを学びました。また、作曲家の時代について分析し、それを現代のピアノにどう活かして表現するかのヒントをいただけたので、これからの勉強に役立てていきたいと思います。
徹底研究シリーズ2017クラウディオ・ソアレス全3部の模様をパソコンやタブレット、スマートフォンで聴講することが出来ます(有料)。是非、ご自宅での学びにお役立てください。
ソアレス先生は講座の中で、アーティキュレーションや和声について沢山お話下さいました。バッハに限らず、普段から楽譜を見て弾いているつもりでいましたが、楽譜を読む上では、音を追うだけではなく、様々な知識を基に楽譜を深く掘り下げていく事が大切である事がよく分かりました。 私は音は読めても、音楽的な知識に乏しいので、 これから少しずつ知識を深めていかなければと思いました。 先生のお話は 今後の課題を与えてくださる大変貴重なものでした。