【実施レポ】シンポジウム「ピアノ教本、使いこなそう」第2回(山本美芽先生)

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2016/12/12
シンポジウム「ピアノ教本、使いこなそう」第2回
文・遠矢 真弓

日程:2016年12月2日(金)
会場:カワイ横浜

司会:山本 美芽先生
パネリスト:三輪 昌代先生、古内 奈津子先生

楽器店の楽譜コーナーに足を運ぶと、大きな面積を占めているのがピアノ教本コーナー。どの教本も工夫が凝らされ、それぞれの良さを持っているだけに、数多い中から一人の生徒さんに適したものを選ぶのは難しいですね。
良さそうに感じて買ってはみたものの、なんとなく現場に導入しそびれたり、最初は合うと思った教本が、難しくなってきて生徒が辛そうになったり、自分がどんなレッスンをしたいのか、迷いが生じてしまったり。

このシンポジウムのテーマは「ピアノ教本」ですが、主役は教本やメソッドではありません。主役は生徒です。
"今、この生徒はこのような状態だ。どの教本を、どう用いれば、無理なく定着させられるだろうか?"ピアノ指導者にとって最も重要な問いに、自分なりのヒントを持ち帰ることができました。

山本先生から提唱された方法は「標準コースを決めて、応用する」。核となるカリキュラムを決め、教本を適する箇所にはめ込んでいきます。
生徒一人分の表を作成し、横軸は年齢・ピアノ歴・進度。縦軸は指導内容。ここにも教本を記入します。 まずは教室のモデルケースになる「標準コース」を作成し、それを生徒のタイプや状態によって応用。個別に作成します。

古内先生から紹介された実例は、まず標準の「Aコース・Bコース」。入会年齢によって、標準が2コース組まれていました。「この教本は、○番まで進んだら二分音符が出てきます。そこで○○を導入します」など、教本を起用する狙いがきめ細やか。得られる効果もわかりやすかったです。
応用は、Bコースからの作成バージョン。「理解が早いタイプ」「ゆっくり定着するタイプ」という実例でした。
ゆっくりタイプでは「らせん学習」の実践が受講者の共感を呼びました。1巻から直接2巻に進まずに別の教本を入れ、少し戻りながら繰り返させ、定着を図る例など、頷きながら聴き入る姿が多く見られました。

三輪先生から紹介された実例は、標準の「ドイツメソッド・フランスメソッド・アメリカメソッド」。国別に3コースです。長年親しんできたバイエルやメトードローズなどの優れた面・注意すべき点が解説された後、"歌いながら弾く"指導法が動画と共に紹介されました。圧巻だったのは、ポリフォニー音楽のひとつの声部を両手ユニゾンで弾き、もうひとつの声部を歌う、というトレーニング。高度な弾き歌いに、受講者から感嘆の声が上がりました。
応用は、「非常に理解力や音感、運動神経に恵まれたタイプ」のための、ミクロコスモスを取り入れたカリキュラム。天才向け標準コースとも言えるかもしれません。
質問タイムでは、導入期に教本を使わず指導する方法も解説されました。ただし「こつこつやるタイプには、教本が必要です」と補足も。

先生方お二人共に強調していたのが「生徒をよく観察し、見極めていく」大切さ。 そして、どんな教本を取り入れる場合でも、事前に保護者様と連絡を取り合い、配慮ある説明をしておき、いきなり行わない。「うまくいくかどうかは、コミュニケーション次第です」と締め括られました。

カリキュラム作成は、慣れるまで難しいかもしれません。そんなとき、教本について相談し合い、情報交換できる仲間をたくさん得られるのも、このシンポジウムの特徴です。更に、全世界のあらゆる教本を話題にできるのですから、第3回以降も続けて開催して頂き、多くの実例を蓄積していけたら、ピアノ指導者にとって何よりも心強い指針となるでしょう。

レポート:遠矢 真弓


★次回のセミナーのご案内★
次回、カワイ横浜の教本シンポジウムは、4月21日(金)の予定です。

★山本美芽先生 最新セミナースケジュール は こちら

山本美芽

やまもと・みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。 ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。 「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続け、 多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。中村菊子、呉暁、樹原涼子などピアノ教本の著者・訳者からは厚い信頼を得ている。2006年―2010年の間、 夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」 (春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、 自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。ピアノを多喜靖美氏に師事。 室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、 参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。オフィシャルサイト http://mimeyama.jimdo.com/
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