9月9日、カワイ横浜にて岡部玲子先生をお招きし、「ショパン最新エディション情報」講座が開催されました。
ショパンの時代の演奏形態はどのような感じだったでしょうか?の問いかけに始まり
貴族の集うサロンでピアノの椅子にゆったりもたれかかりながら演奏するショパンの
姿を描写した絵を見せてくださり「こんな雰囲気でお聴きくださいと岡部先生がOp.9-2のノクターンをお弾きになりました。
あれあれ?紛れもなく有名なノクターンOp.9-2ですが随所に聴きなれない装飾が施されています。とても新鮮な響きです。演奏を終えられ、「これはショパン自身がのちに書き加えたヴァリアントです」と仰いました。
ショパンは自分が書き上げた作品を様々な理由で書き換えたり、書き加えたりしたために校訂の底本となる初版が一つではないことがショパン作品の楽譜作りの難しさであること、ショパン学会で校訂の方向性が決まったのもつい10数年前と、その研究も世界的になかなか一本化できない現状をお話くださいました。
エディションの違いをどのように演奏に生かすのか、先生が色々な作品を弾いて事例を提示してくださいました。どれが正解か?ということではなく、演奏者や指導者が自身の経験値や考え方で選択していく余地があることを大変分かりやすく示してくださいました。それぞれの楽譜の'音'や'弾き方'の違いも時代の流れのなかで少しずつ'主流'が変化していくというお話にはとても納得しました。'最新情報'ということで、まざにショパンのエディション研究はまだまだ現在進行形であり、多くの研究者が少しでもショパンの作曲の意図に近づこうと、研究を続けていることを知り、今後どんなショパン作品の楽譜がお目見えするのかとても楽しみです。
これまでの膨大な研究の成果を、短い時間で分かりやすく集約して教えてくださいました。台風のなか、たくさんの資料を持ってお出かけくださった先生に心より感謝申し上げます。このセミナーを受講したことで先生のご著書である「ショパンの楽譜、どの版を選べばいいの?」の内容をより深く理解することができました。
受講された先生方からも「とても楽しく、ためになるお話を聞けてよかった」「これまでパデレフスキ版を一番のテキストのように使ってきたけれど、もっと他の版にも目を向けてショパンの作品をもっと学んでみようと思いました」などたくさんのご感想をお寄せいただきました。
もっと具体的に知りたいことも沢山あり、ぜひ続編をお願いしたいと思います。ありがとうございました。