文・押見 雅子
日程:2016年6月24日
会場:カワイ厚木ショップ
音楽をする上で大事なことは無数にあるわけですが、数ある教本をどのように使って生かしていけるのかを考えるセミナーです。音楽ライターというお仕事で多くの取材をされている山本美芽先生なればこその広い視野でそれぞれの教本のポイントを絞って考察されていきます。
今回は、ブルグミューラー25の練習曲レベルの教材ということで、ロシア系作品が取り上げられました。
初めにピアノ奏法の系統図を眺め、明治時代に輸入された日本のピアノ教育を取り入れながらも、私たちの世代で更新していくことの大切さを認識しました。
そこには脱力・近代奏法を学ぶ必要があり、そのためにはロシアの教材を使うと良いのではないかという仮説を立てられてセミナーが進んでいきます。
そこで受講者でロシアの小品をどんどん弾いていきました。カバレフスキー・チャイコフスキー・マイカバル・ハチャトリアン・ショスタコーヴィチ...実に魅力ある音楽的小品ばかりでした。
セミナー前に美芽先生はSNSを利用して課題を示してくださるので、予習することができます。予習することでセミナー後の復習が一層楽しく、セミナーで得た知識と音楽が結びついて波紋のごとく広がっていくのが美芽先生のセミナーの魅力なのです。
実際に弾いたり聴いたりしてみると、音楽の情報が溢れ親しんでいる今の子供たちには、意外にもロシアの歌という先入観を持たずに感性に問いかけることで楽しんで弾いてくれるのではないかと感じました。
レガート奏法を学ぶのにこれほど優れた教材もなく、レガート奏以外のテクニック課題も多々取り込まれて生き生きとしたロシア小品は音楽の宝箱のようです。ただ読譜は難しい面もあるので音楽とは切り離して学ぶ必要はありそうです。
最後に音楽の指導上の指針となる2冊の本をご紹介下さいました。
二コラーエフの「ピアノ演奏基礎教本」とゲンリッヒ・ネイガウスの「ピアノ演奏芸術」です。
残念ながらどちらも絶版とのこと。
ロシア作品から音楽を学び取るには、まず「聴く→歌う」という回路を作り音を出す前にイメージを持つこと、それから「見る→聴く→弾く」という方法で豊かな表現方法を身に着けるようにと書かれていました。
ピアノレッスンで最も大切なことは、子供の音楽的感性を目覚めさせ育てること、今回のロシア作品から学んだ美芽先生のセミナーポイントはそこにあるようです。 まずは子供たちの日々の暮らしの小さな出来事に目を向けるよう、丁寧にレッスンしていきたいと思います。
次回はバルトークの「ミクロコスモス」と三善晃の「Miyoshiピアノ・メソード」を取り上げてくださいます。
美芽先生とご一緒に弾き合いしてくださるピアノの先生方とお会いできるのも楽しみなのです。
★次回の厚木教本セミナーの日程★
10/14(金)10:00-12:00 ピアノ教本、かしこく選ぼう 第3回
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やまもと みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続け、多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。中村菊子、呉暁、樹原涼子などピアノ教本の著者・訳者からは厚い信頼を得ている。2006年―2010年の間、夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」(春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、
自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。ピアノを多喜靖美氏に師事。室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。オフィシャルサイト http://www.mimeyama.com
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おしみ まさこ@ピアノ講師。武蔵野音楽大学音楽学部ピアノ科卒。武蔵野音楽大学付属音楽教室講師、ヤマハ音楽教室PSTA講師を経て、横浜で「おしみピアノ教室」を主宰。指導歴25年。PTNA全日本ピアノ指導者協会指導会員。横浜むさしの会会員カワイ音楽教育研究会会員。現在、白石准氏にピアノとアンサンブルを師事。豊富な指導経験と継続的な研鑽、7年間のスペイン在住経験を持つ。ソルフェージュをしながら楽譜を読み解き、美しい音を奏でる指導、個人に合わせたコミュニ ケーションレッスンを行っている。おしみピアノ教室 HPはこちら