日程:2016年3月11日
会場:カワイ厚木ショップ
数々のコンペ入賞者、プロのピアニストを門下から輩出し、素晴らしい指導者として知られる多喜靖美先生が、カワイ厚木ショップで課題曲セミナーを行いました。いわゆる課題曲説明会とはちょっと違ったユニークな切り口が特徴です。
まず、コンクールでの採点で起こりうる事例として、突出した存在感のある参加者よりも、平均点の高い参加者のほうが高評価を受ける結果になった例について紹介がありました。こうした採点の難しさについて触れつつも、ピティナは誰が何点をつけたのか公表されている点が公平で、信頼性が高いという説明がありました。
また、「4期」という言葉を最近では当たり前のように使っていますが、その分けかたの定義について議論の余地があるという問題提起があり、多喜先生は4期をどこの境目で区別しているのかについてもお話がありました。
コンペティション課題曲は、音楽の基礎である「リズム感」「フレーズ感」「和声感」を身につけさせ、時代様式に沿った演奏にしていくための教材としても最適です。具体的な指導方法として、アンサンブルをとりいれる手法が紹介されました。
ピアノの右手と左手はスコアになっていますから、右手をプリモ、左手をセコンドのようにしてアンサンブルはすぐにできます。では、右手を二人、左手を二人、合計4人の4手でやってみたらどうなるでしょうか。
課題曲アナリーゼ楽譜Vol.1には、先生のアレンジされたピアノソロの課題曲のギロック「カプリチェット」、平吉毅州「タンポポが飛んだ」について楽譜 をアンサンブルに編曲したスコアが載っています。今回は、これらを実際に、会場にあるシゲルカワイのグランドピアノ「SK3」でアンサンブル。生徒役の受講者が課題曲を弾き、それに多喜先生が低音域、高音域と2種類の連弾パートをつけたり、4人4手アンサンブル、最後には受講者が持参した鍵盤ハーモニカで4パートに分かれて合奏しました。
私もA1級ロマンスタイルの課題曲、メラルティンの「うた」を先生と連弾することになり、初見状態でしたので、必死に拍を数えながら弾きはじめました。そこで先生のパートが入ってくると急に流れがよくなり、自然に進んでいけました。逆に、「タンポポがとんだ」をみんなで鍵盤ハーモニカで合わせると、裏拍が多いパートもあって、普通に弾くよりもずっと難しく感じました。でも、4つのパートがパズルがはまるようにピタッと合うと、非常に面白いのです。気がつくと音楽の骨格やフレーズ感などが、知らず知らずのうちに把握できていました。こんなふうに即席 でアレンジしながら先生と生徒でアンサンブルしながらレッスンできたら、音楽的に上達できそうです。
コンペで生徒が予選通過できるまで導くことも教師にとっては大切です。それと同時に、このように課題曲をみんなで勉強することが、継続して学ぶ貴重な場にもなっていると感じました。