【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2015 第6回 中村明一先生

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2015/10/21
 
  • 第6回
  • 2015年10月14日(水)
  • 中村明一先生
  • 「倍音と音楽」

秋も深まる10月、第6回の音楽力upワークショップは日本古来の呼吸法「密息」、「循環呼吸」そして「倍音」を自在に操る中村明一先生のレクチャーでした。
倍音についてのレクチャーと聞いて「周波数、平均律」などを思い浮かべていましたが、お話はそれとは違った方向に進みたくさんのことを考えさせられました。

倍音とは音が鳴ったときに共鳴したり付随して出てくる音のこと。楽器、人の話し声、風や雨、雷、騒音・・・自然界のすべての音に含まれています。その倍音は整数の波長を持つ整数次倍音と不規則な波長の非整数次倍音に分けられます。前者は弦や管楽器で典型的に見られ、弦楽器の弦を擦ったギーッという音や、雨、滝の音など自然の音は後者の非整数次倍音に括られます。レクチャーではこの2つの倍音を音楽、言語、日本と西洋での違いなどの面から色々なことを教えていただきました。

日本人は主に右脳で西洋音楽の整数次倍音を処理し、左脳では言語と共に川のせせらぎや虫の音などの非整数次倍音を処理しています。つまり日本人が虫の声や風の情緒を感じるのは自然界の音にも言葉のようなものを聞いていると考えられるのです。一方西洋人にとって自然界の音(非整数次倍音)は単にノイズという捉え方で、そこに音楽性や言葉のようなものを見出すことはなく、右脳でその処理をするそうです。

また日本語は母音主体の整数次倍音の言語であり、私たち日本人が言葉に重要性や親密性を持たせたい時、無意識に非整数次倍音(雑音)を混ぜて強調するのに対し、西洋では単純に声量を上げる事で同じ効果を持たせるそうです。日本人のピアノ演奏のfの表現方法が西洋人と違うという興味深いお話もありました。

言語学的にみると、澄んでいる声質(整数次倍音)の代表例は黒柳徹子やタモリ。少しかすれた親しみのある声質(非整数次倍音)はビートたけしや明石家さんま。歌では前者が美空ひばりやエディット・ピアフ、後者は森進一や都はるみなど。前者はカリスマ性があると同時にきつい人だと思われがちな声質、後者は響きがソフトでたとえ人の悪口を言ったとしても意地悪に響かないというのはとても興味深かったです。実際の声がイメージできたとき、会場の先生方から2つの倍音の違いに納得の声があがっていました。

このように私達日本人は非整数次倍音に対して鋭い感覚を持っており、外国から入ってきた尺八や三味線などの楽器に非整数次倍音を加える改良をしたのも大きな特徴です。実際にコンピューターで音を解析しながら中村先生の演奏される尺八の音を聞きましたが、波形にくっきりと非整数次倍音の形が現れていました。また楽譜を比べてみても、西洋音楽が時間的音高的な要素に音量やニュアンスを表す楽語が加えられた「再現しやすい図」であるのに対して、邦楽の楽譜には時間的なことはそれほど重要視されておらず西洋音楽で例えるのであれば「音色」こそがもっとも重要な要素で「記号化しにくいもの」であることがわかります。

中村先生のレクチャーを通して、日本音楽と西洋音楽のそれぞれの響きの特徴、言語学から考えた日本人と西洋人の音の感じ方や脳内での音の処理の違いが浮き彫りにされ大変興味深かったです。レクチャーの後の先生方の会話から「ピアノという西洋音楽を教える私達はそれぞれの特徴や文化を理解し、両方を大切に次の世代に伝えていきたい」という声が聞こえてきました。

受講者インタビュー
伊豆味 香先生(指導者会員)

音楽力upワークショップには今年度後半の今日から参加させていただきます。
仕事のリトミック指導や演奏活動では、保護者にはCDやデジタル音よりも生の音が豊かなのは倍音の存在があるからだとお伝えしております。以前中村明一先生の本を読み今日のセミナーをとても楽しみにしておりました。セミナーでは倍音の中にも種類があり、それぞれが日本音楽と西洋音楽では違いがあることを知って倍音への認識が深まりました。子供達に日本人ならではの耳を育てていくことを大切にしながら西洋音楽を教えることを通して、広い世界の音楽として伝えていきたいと思います。

安倍 美穂先生(正会員)

とてもおもしろかったです。倍音を削ってきた西洋音楽に対して、日本音楽は非整数次倍音を大切にし、日本人がそれに敏感な民族であることを知り、誇りを感じました。
音楽は仕事をしながらも癒やされる素晴らしいものだと感じてます。だから忙しくても意外と元気なのだと常々思っていました。高周波というものが耳からも皮膚からも(!)伝わって人の心と身体にとてもいいというお話もあったので、日々ピアノから出る美しい音の波に浸かっているということがさらに元気効果に繋がるのだということが分かり、とてもうれしい気持ちになりました。


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